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56.盗み聞き
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「それが妻の最後の言葉になった」
俺は美波さんのお父さんの話を黙って聞き続けた。その言葉は本当に懺悔のようだった。奥さんから言われたことが心に刺さっているのだろう。生き返りたくなかったという言葉が――
「聖奈の手術は失敗。それが分かった直後に俺は能力を切り替えた。だから聖奈の病気が治ったタイミングと記憶喪失になったタイミング、そして妻が死んだタイミングが同じだったんだ」
本当に全ての事象に理由があった。全ての出来事に繋がりがあった。
「それで美波さんにも記憶が無いんですね」
「なぜ記憶が失くなってしまうのかまでは分からないけどね。病院と特殊能力管理部の人には対外的に妻の病死と聖奈の手術成功として処理してもらっている。今回は妻のときと違って聖奈に本当のことを伝えていないのは……」
「お母さんが亡くなった責任を感じさせないため……ですか?」
「それもある」
美波さんのお父さんはそう言って少し呼吸を整えた。
「聖奈には生き返ったことを後悔して欲しくなかった。それと……」
さらに絞り出すようにして続きを話す。
「俺が死んだ瞬間に能力が解除される。つまり聖奈は俺と同じときに死んでしまうということだ。そんな残酷なこと……知られたくなかった。また俺の自分勝手なわがままだ」
酸素マスクの下で唇を噛んでいるのが分かる。声は震えていた。美波さんのお父さんは自分のしたことが自分勝手で残酷なことだと言っているが、俺にはそれを責めることも咎めることもできない。なぜならそこに悪意も害意もないから。俺が感じたのはあくまで優しさと慈しみだ。大切な人を傷つけたくないという気持ちだ。悪意がなければ悪いことをしてもいいというわけではないが、俺にはそれが悪いことにも思えない。他にいい選択があったかと言われても思いつかない。悲しいけれど仕方がないとしか言えない。しかし……
「美波さんがお父さんと同じタイミングで亡くなってしまうというのは……」
「病院の人から聞いたと思うけど、俺も本当にもちそうにない。だから聖奈の友達になってくれた真壁君には伝えておきたかった。聖奈は……俺が殺すようなものだから」
「それは……違いますよ……。お父さんの能力がなければ俺と美波さんが再会することはできませんでしたから」
「再会……?」
「はい。今日知ったんですが、俺と美波さんは幼稚園のときに仲が良かったみたいです」
「はは、それは本当に運命を感じるね。やっぱり真壁君には」
美波さんのお父さんが話している途中。病室の入口の方から物音がした。誰かがいる。そう感じて振り返る。するとそこにはワナワナと震える美波さんの姿があった。どこから聞いていた? その様子を見るに核心に迫った話から聞いていたかもしれない。
「美波さん」
俺が呼びかけた瞬間。美波さんは踵を返して走り出した。
「真壁君……聖奈を頼む……」
俺は美波さんのお父さんの話を黙って聞き続けた。その言葉は本当に懺悔のようだった。奥さんから言われたことが心に刺さっているのだろう。生き返りたくなかったという言葉が――
「聖奈の手術は失敗。それが分かった直後に俺は能力を切り替えた。だから聖奈の病気が治ったタイミングと記憶喪失になったタイミング、そして妻が死んだタイミングが同じだったんだ」
本当に全ての事象に理由があった。全ての出来事に繋がりがあった。
「それで美波さんにも記憶が無いんですね」
「なぜ記憶が失くなってしまうのかまでは分からないけどね。病院と特殊能力管理部の人には対外的に妻の病死と聖奈の手術成功として処理してもらっている。今回は妻のときと違って聖奈に本当のことを伝えていないのは……」
「お母さんが亡くなった責任を感じさせないため……ですか?」
「それもある」
美波さんのお父さんはそう言って少し呼吸を整えた。
「聖奈には生き返ったことを後悔して欲しくなかった。それと……」
さらに絞り出すようにして続きを話す。
「俺が死んだ瞬間に能力が解除される。つまり聖奈は俺と同じときに死んでしまうということだ。そんな残酷なこと……知られたくなかった。また俺の自分勝手なわがままだ」
酸素マスクの下で唇を噛んでいるのが分かる。声は震えていた。美波さんのお父さんは自分のしたことが自分勝手で残酷なことだと言っているが、俺にはそれを責めることも咎めることもできない。なぜならそこに悪意も害意もないから。俺が感じたのはあくまで優しさと慈しみだ。大切な人を傷つけたくないという気持ちだ。悪意がなければ悪いことをしてもいいというわけではないが、俺にはそれが悪いことにも思えない。他にいい選択があったかと言われても思いつかない。悲しいけれど仕方がないとしか言えない。しかし……
「美波さんがお父さんと同じタイミングで亡くなってしまうというのは……」
「病院の人から聞いたと思うけど、俺も本当にもちそうにない。だから聖奈の友達になってくれた真壁君には伝えておきたかった。聖奈は……俺が殺すようなものだから」
「それは……違いますよ……。お父さんの能力がなければ俺と美波さんが再会することはできませんでしたから」
「再会……?」
「はい。今日知ったんですが、俺と美波さんは幼稚園のときに仲が良かったみたいです」
「はは、それは本当に運命を感じるね。やっぱり真壁君には」
美波さんのお父さんが話している途中。病室の入口の方から物音がした。誰かがいる。そう感じて振り返る。するとそこにはワナワナと震える美波さんの姿があった。どこから聞いていた? その様子を見るに核心に迫った話から聞いていたかもしれない。
「美波さん」
俺が呼びかけた瞬間。美波さんは踵を返して走り出した。
「真壁君……聖奈を頼む……」
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