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土の王国編
え、私嫌われてる?
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明晰夢にしろ転生にしろ、今の私には悪役令嬢レジーナ・フルハイムとして生きている状態ってこと。聖王国のレジーナといえば傍若無人で計算高く、ヒロインである妹のアリスをこれでもかってほどに虐めるキャラクターだ。
聖王国の物語は簡単に言うと屋敷を抜け出して冒険をしながら様々な男性と出会うストーリー。
物語の始まりはレジーナの婚約者である公爵のアレクサンダーとのパーティ。その朝から。
前日にレジーナからドレスの無茶な仕立て直しを言い渡されていたアリスは出立までに間に合わせることができず、自分が着るはずだった母の形見のドレスをレジーナに奪われる。
そして自分が着るドレスがなくなったアリスは留守番になり、幼い頃から仲の良い執事の男の子と屋敷を飛び出して冒険を始める……。といった感じ。
「てことは、この後の食事中にアリスが来て仕立てが間に合わなかったことを話すイベントがあるのよね……」
私のつぶやきを聞いたメイドは俯いて辛そうな顔をする。辛くて当然。健気で可愛いアリスが虐められているのだから。しかしこの世界のレジーナは私。私はアリスを虐めたりなんかしたくない。この世界の人に迷惑かけたりしたくない。ちゃんと正しく生きたい。
「大丈夫よ。アリスに辛い思いはさせないから」
「ほ、本当ですか?」
メイドはそう言って私に期待の眼差しを向ける。
「うん。安心して」
そう言って私たちはダイニングルームへと向かった。ダイニングルームには4人のメイドと4人の執事が控えている。確かフルハイム家は両親が戦争で死んでおり、まだ17歳になったばかりのレジーナが当主となっている。
「アリスはまだ来てないわよね」
「はい」
身支度をしてくれたメイドは私の椅子を引きながら返事をする。テーブルの上には白いパンと何の肉か分からない肉料理のお皿とサラダとスープ。何の肉かは分からないけどとでも柔らかそうで、肉汁とソースの香りが肺の中いっぱいに広がる。中世ヨーロッパではなく、あくまで中世ヨーロッパ風ファンタジー世界。
食事に手をつけずに待っていると私と色違いのドレスを着たアリスが部屋に入ってきた。私の淡い水色のドレスとは違ってアリスのドレスは薄紅色。胸元には薔薇の家紋。長い金髪が似合う小柄なアリスは申し訳なさそうな顔で視線を落としている。
「申し訳ありませんお姉さま」
部屋に入ってすぐ深々と頭を下げたアリス。隣に立つ若い執事は悔しそうな顔で私を睨む。すごい私嫌われてる。
「仕立て直すようにおっしゃられたドレスですが、間に合わせることができませんでした……」
アリスは涙ながらに訴える。本来のシナリオならアリスのドレスを要求するところだ。しかし……。
「仕方ないわ。私は風邪をひいたってことにして今日はアリスだけで楽しんでらっしゃい」
「え?」
アリスは意味が分からないとでも言いたげな顔で私を見る。
「ただのパーティだしね。そんなことよりほら。早く朝ごはん食べましょ」
美味しそうなお肉を目の前にして私は我慢の限界だった。自分でも分かるほどに頬の肉が緩んでいる。そんな私の顔を見て安心したのか、アリスは嬉しそうに笑ってテーブルについたのだった。
聖王国の物語は簡単に言うと屋敷を抜け出して冒険をしながら様々な男性と出会うストーリー。
物語の始まりはレジーナの婚約者である公爵のアレクサンダーとのパーティ。その朝から。
前日にレジーナからドレスの無茶な仕立て直しを言い渡されていたアリスは出立までに間に合わせることができず、自分が着るはずだった母の形見のドレスをレジーナに奪われる。
そして自分が着るドレスがなくなったアリスは留守番になり、幼い頃から仲の良い執事の男の子と屋敷を飛び出して冒険を始める……。といった感じ。
「てことは、この後の食事中にアリスが来て仕立てが間に合わなかったことを話すイベントがあるのよね……」
私のつぶやきを聞いたメイドは俯いて辛そうな顔をする。辛くて当然。健気で可愛いアリスが虐められているのだから。しかしこの世界のレジーナは私。私はアリスを虐めたりなんかしたくない。この世界の人に迷惑かけたりしたくない。ちゃんと正しく生きたい。
「大丈夫よ。アリスに辛い思いはさせないから」
「ほ、本当ですか?」
メイドはそう言って私に期待の眼差しを向ける。
「うん。安心して」
そう言って私たちはダイニングルームへと向かった。ダイニングルームには4人のメイドと4人の執事が控えている。確かフルハイム家は両親が戦争で死んでおり、まだ17歳になったばかりのレジーナが当主となっている。
「アリスはまだ来てないわよね」
「はい」
身支度をしてくれたメイドは私の椅子を引きながら返事をする。テーブルの上には白いパンと何の肉か分からない肉料理のお皿とサラダとスープ。何の肉かは分からないけどとでも柔らかそうで、肉汁とソースの香りが肺の中いっぱいに広がる。中世ヨーロッパではなく、あくまで中世ヨーロッパ風ファンタジー世界。
食事に手をつけずに待っていると私と色違いのドレスを着たアリスが部屋に入ってきた。私の淡い水色のドレスとは違ってアリスのドレスは薄紅色。胸元には薔薇の家紋。長い金髪が似合う小柄なアリスは申し訳なさそうな顔で視線を落としている。
「申し訳ありませんお姉さま」
部屋に入ってすぐ深々と頭を下げたアリス。隣に立つ若い執事は悔しそうな顔で私を睨む。すごい私嫌われてる。
「仕立て直すようにおっしゃられたドレスですが、間に合わせることができませんでした……」
アリスは涙ながらに訴える。本来のシナリオならアリスのドレスを要求するところだ。しかし……。
「仕方ないわ。私は風邪をひいたってことにして今日はアリスだけで楽しんでらっしゃい」
「え?」
アリスは意味が分からないとでも言いたげな顔で私を見る。
「ただのパーティだしね。そんなことよりほら。早く朝ごはん食べましょ」
美味しそうなお肉を目の前にして私は我慢の限界だった。自分でも分かるほどに頬の肉が緩んでいる。そんな私の顔を見て安心したのか、アリスは嬉しそうに笑ってテーブルについたのだった。
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