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土の王国編
え、私豚になる?
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肉は良い。理由は言葉にできない。言葉にできないほどただひたすらに美味しい。天野乙葉だった頃も自分へのご褒美はケーキなどではなく焼肉だったほど私は肉が好きだ。
「おいし~」
肉料理を味わい尽くした私はそれはもう幸せいっぱいにそう言った。アリスはそんな私を見て柔らかな笑みを浮かべる。
「でもこれ何の肉なの?」
私の質問に答えたのは隣に立つ可愛いメイドだった。
「猪肉でございます」
「え、猪ってこんなに美味しいの?」
「お姉さまったらまるで記憶喪失にでもなったみたいですね」
アリスはそう言って笑う。
「私もうっかり忘れてしまったからメアリー教えてくれるかしら?」
「かしこまりました」
アリスの気遣いで私の世話をしてくれるメイド、メアリーは説明をしてくれた。
「この土の王国は大規模な畑が主産業となっております。さらに魔王国から離れているために魔物も出ません。そのため天敵のいない猪が強く多く、そして畑を荒らすので栄養を蓄えていて美味なのです」
「畑を荒らすし美味しいならたくさん狩って食べられますね」
「お姉さま……」
「あ……」
自分で言っておきながら野蛮な発言だと気がついた。しかしメアリーは気にも留めることなく答えた。
「土の王国の猪は強すぎるのです。強すぎるという理由から高級食材になっているほどに。だから生態系を崩すほど繁殖してしまっています」
「じゃあこの肉は……」
「これはフルハイム領に入り込んだ猪を執事達が仕留めたものです」
そう言われて思い出した。フルハイムの執事とメイドはゲーム内でも屈指の戦闘力を持っているのだったと。ゲーム終盤の戦闘シーンでも活躍していた描写があった。
「なら侵入してきてくれたらまたたくさん食べられますね」
「お姉さま……」
「あ……」
朝食の席はそうしてアリスに呆れられながら和やかに終わった。そんなに食べることばかり考えていると猪ではなく豚になってしまうかもしれない。レジーナの中身が私になったせいか、初めは殺伐とした雰囲気だった執事やメイド達もたまに表情が緩んだりして私も少しだけ居心地が良くなった。
「ところでお姉さま。先程おっしゃられたパーティの件ですが、本当に私だけ楽しませてもらってもよろしいのでしょうか」
「もちろん。無茶な仕事を頼んだ私が悪いんだしね。美味しいもの食べておいで」
土の王子も来るしゲームシナリオとは違って早く出会う形になるけど悪くないと思う。ゲーム上でアリスが攻略できる異性は全員で6人。土の王子、水の王子、火の王子、風の王子、氷の王子、雷の王子。土の王子は真面目で頭が良く誠実な青年。この世界で唯一のメガネキャラということもあり界隈での人気も高い。
アリスが気に入るのなら後押しをしたい。
「ではお言葉に甘えて」
「うん。お母さんの形見のドレスも着たかったでしょ?」
「え!」
アリスは驚いた顔を見せ、すぐに顔を伏せてしまった。
「……ありがとう……ございます」
アリスは涙を流していた。それ以上私が何か言うのも野暮が過ぎる。そう思って私は席を立つとアリスにまたねと言って部屋を後にした。
「おいし~」
肉料理を味わい尽くした私はそれはもう幸せいっぱいにそう言った。アリスはそんな私を見て柔らかな笑みを浮かべる。
「でもこれ何の肉なの?」
私の質問に答えたのは隣に立つ可愛いメイドだった。
「猪肉でございます」
「え、猪ってこんなに美味しいの?」
「お姉さまったらまるで記憶喪失にでもなったみたいですね」
アリスはそう言って笑う。
「私もうっかり忘れてしまったからメアリー教えてくれるかしら?」
「かしこまりました」
アリスの気遣いで私の世話をしてくれるメイド、メアリーは説明をしてくれた。
「この土の王国は大規模な畑が主産業となっております。さらに魔王国から離れているために魔物も出ません。そのため天敵のいない猪が強く多く、そして畑を荒らすので栄養を蓄えていて美味なのです」
「畑を荒らすし美味しいならたくさん狩って食べられますね」
「お姉さま……」
「あ……」
自分で言っておきながら野蛮な発言だと気がついた。しかしメアリーは気にも留めることなく答えた。
「土の王国の猪は強すぎるのです。強すぎるという理由から高級食材になっているほどに。だから生態系を崩すほど繁殖してしまっています」
「じゃあこの肉は……」
「これはフルハイム領に入り込んだ猪を執事達が仕留めたものです」
そう言われて思い出した。フルハイムの執事とメイドはゲーム内でも屈指の戦闘力を持っているのだったと。ゲーム終盤の戦闘シーンでも活躍していた描写があった。
「なら侵入してきてくれたらまたたくさん食べられますね」
「お姉さま……」
「あ……」
朝食の席はそうしてアリスに呆れられながら和やかに終わった。そんなに食べることばかり考えていると猪ではなく豚になってしまうかもしれない。レジーナの中身が私になったせいか、初めは殺伐とした雰囲気だった執事やメイド達もたまに表情が緩んだりして私も少しだけ居心地が良くなった。
「ところでお姉さま。先程おっしゃられたパーティの件ですが、本当に私だけ楽しませてもらってもよろしいのでしょうか」
「もちろん。無茶な仕事を頼んだ私が悪いんだしね。美味しいもの食べておいで」
土の王子も来るしゲームシナリオとは違って早く出会う形になるけど悪くないと思う。ゲーム上でアリスが攻略できる異性は全員で6人。土の王子、水の王子、火の王子、風の王子、氷の王子、雷の王子。土の王子は真面目で頭が良く誠実な青年。この世界で唯一のメガネキャラということもあり界隈での人気も高い。
アリスが気に入るのなら後押しをしたい。
「ではお言葉に甘えて」
「うん。お母さんの形見のドレスも着たかったでしょ?」
「え!」
アリスは驚いた顔を見せ、すぐに顔を伏せてしまった。
「……ありがとう……ございます」
アリスは涙を流していた。それ以上私が何か言うのも野暮が過ぎる。そう思って私は席を立つとアリスにまたねと言って部屋を後にした。
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