20 / 66
土の王国編
え、私計画進められない?
しおりを挟む
急いで宿に戻ってアリスたちと朝食を済ませる。どうにか約束の時間に遅刻することなく盾のモニュメントの前に着くとそこには意外な人がいた。
「おやおやレジーナ。こんなところで会うなんて奇遇じゃないか」
そこにいたのは私との婚約を破棄したアレクサンダーと新しい婚約者だった。隣にはヒューリがなにやら悔しそうな顔をして立っている。猪ハンターたちはまだ来ていない。
「おはようございますアレクサンダー様」
当たり障りのない挨拶をして私はヒューリの下へと近付いた。
「ヒューリ王子、何かあったのですか?」
「申し訳ありませんレジーナ様。私の力不足です」
ヒューリは苦虫を噛み潰したような顔をしている。そしてその表情のまま何が起きたのかを説明してくれた。
「アレクサンダー様に中央卸売市場の契約を全て取られてしまいました」
「ヒューリ王子。その言い方は聞き捨てならないですな。まるで私が悪者みたいではないですか」
アレクサンダーはニヤニヤと笑いながら言った。その様子からも悪者感が出ている。
「それが何か問題でも?」
どういうことかいまいち分かっていない私はヒューリに質問を投げかけるが、それに答えたのはアレクサンダーだった。
「これだから何も知らない女はまともなビジネスができないんですよ。グランメイズの中央卸売市場はこの国の店全てに商品を卸す場所。その権利を持つということはこの国の全てを自由にできるということです」
「全てを自由に……?」
驚く私にヒューリが説明を加えてくれた。
「全てと言っても今まで契約されていた流通物資以外の新規枠全て……という意味です」
「つまり、その中央卸売市場を使って新しく猪肉を流通させることができないってことですか?」
ヒューリは黙って頷く。
「アレクサンダー様。私たちも近日中に新規事業を立ち上げる予定ですのでその枠をいくらか分けてはいただけないでしょうか?」
私はそう言ってアレクサンダーに打診をするが、アレクサンダーはニヤニヤとした顔のまま答えた。
「すでに契約書は交わしてしまいましたからね。一度交わした契約を破棄するなど信頼問題に関わります。商人の血筋のある私が契約破棄などという最低な行為をするわけにはいきません」
婚約破棄をしておいてどの口が! と言いたいのを飲み込む。
「……いくらでその契約を譲渡していただけますか?」
承認という言葉を出したからには金銭交渉に応じるはず。そう思って私は話を切り出した。
「ですから信頼とおっしゃったではないですか。いくらお金を積まれてもできないものはできません。レジーナ様方は諦めて田舎に帰って花でも摘んでいた方がよろしいのでは? 女性らしく……ね」
こいつは私たちに嫌がらせをしたいだけだ! 間違いない! いや……確かゲームのシナリオでは……。
「どうしても無理だとおっしゃるのなら別の手段を考えます。貴重なお時間ありがとうございました」
「私の時間が貴重というのは理解してくれてるようでなにより。では私はこの辺で」
アレクサンダーは高笑いをしながらその場から去っていった。その後ろ姿を見送ったヒューリは拳を壁に叩きつけて悔しさをあらわにする。
「くっ……。私があと2時間早く動いていればこのようなことにはならなかったというのに……」
過ぎてしまったことは仕方がない。しかし私も猪肉食べ放題を諦めることなどできはしない。戦いはこれからだ。
「おやおやレジーナ。こんなところで会うなんて奇遇じゃないか」
そこにいたのは私との婚約を破棄したアレクサンダーと新しい婚約者だった。隣にはヒューリがなにやら悔しそうな顔をして立っている。猪ハンターたちはまだ来ていない。
「おはようございますアレクサンダー様」
当たり障りのない挨拶をして私はヒューリの下へと近付いた。
「ヒューリ王子、何かあったのですか?」
「申し訳ありませんレジーナ様。私の力不足です」
ヒューリは苦虫を噛み潰したような顔をしている。そしてその表情のまま何が起きたのかを説明してくれた。
「アレクサンダー様に中央卸売市場の契約を全て取られてしまいました」
「ヒューリ王子。その言い方は聞き捨てならないですな。まるで私が悪者みたいではないですか」
アレクサンダーはニヤニヤと笑いながら言った。その様子からも悪者感が出ている。
「それが何か問題でも?」
どういうことかいまいち分かっていない私はヒューリに質問を投げかけるが、それに答えたのはアレクサンダーだった。
「これだから何も知らない女はまともなビジネスができないんですよ。グランメイズの中央卸売市場はこの国の店全てに商品を卸す場所。その権利を持つということはこの国の全てを自由にできるということです」
「全てを自由に……?」
驚く私にヒューリが説明を加えてくれた。
「全てと言っても今まで契約されていた流通物資以外の新規枠全て……という意味です」
「つまり、その中央卸売市場を使って新しく猪肉を流通させることができないってことですか?」
ヒューリは黙って頷く。
「アレクサンダー様。私たちも近日中に新規事業を立ち上げる予定ですのでその枠をいくらか分けてはいただけないでしょうか?」
私はそう言ってアレクサンダーに打診をするが、アレクサンダーはニヤニヤとした顔のまま答えた。
「すでに契約書は交わしてしまいましたからね。一度交わした契約を破棄するなど信頼問題に関わります。商人の血筋のある私が契約破棄などという最低な行為をするわけにはいきません」
婚約破棄をしておいてどの口が! と言いたいのを飲み込む。
「……いくらでその契約を譲渡していただけますか?」
承認という言葉を出したからには金銭交渉に応じるはず。そう思って私は話を切り出した。
「ですから信頼とおっしゃったではないですか。いくらお金を積まれてもできないものはできません。レジーナ様方は諦めて田舎に帰って花でも摘んでいた方がよろしいのでは? 女性らしく……ね」
こいつは私たちに嫌がらせをしたいだけだ! 間違いない! いや……確かゲームのシナリオでは……。
「どうしても無理だとおっしゃるのなら別の手段を考えます。貴重なお時間ありがとうございました」
「私の時間が貴重というのは理解してくれてるようでなにより。では私はこの辺で」
アレクサンダーは高笑いをしながらその場から去っていった。その後ろ姿を見送ったヒューリは拳を壁に叩きつけて悔しさをあらわにする。
「くっ……。私があと2時間早く動いていればこのようなことにはならなかったというのに……」
過ぎてしまったことは仕方がない。しかし私も猪肉食べ放題を諦めることなどできはしない。戦いはこれからだ。
2
あなたにおすすめの小説
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
婚約破棄は良いのですが、貴方が自慢げに見せているそれは国家機密ですわよ?
はぐれメタボ
ファンタジー
突然始まった婚約破棄。
その当事者である私は呆れて物も言えなかった。
それだけならまだしも、数日後に誰の耳目げ有るかも分からない場所で元婚約者が取り出したのは国家機密。
あーあ、それは不味いですよ殿下。
俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?
志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。
そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄?
え、なにをやってんの兄よ!?
…‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。
今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。
※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる