過労死社畜は悪役令嬢に転生して経済革命を起こす

色部耀

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土の王国編

え、私計画進められない?

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 急いで宿に戻ってアリスたちと朝食を済ませる。どうにか約束の時間に遅刻することなく盾のモニュメントの前に着くとそこには意外な人がいた。

「おやおやレジーナ。こんなところで会うなんて奇遇じゃないか」

 そこにいたのは私との婚約を破棄したアレクサンダーと新しい婚約者だった。隣にはヒューリがなにやら悔しそうな顔をして立っている。猪ハンターたちはまだ来ていない。

「おはようございますアレクサンダー様」

 当たり障りのない挨拶をして私はヒューリの下へと近付いた。

「ヒューリ王子、何かあったのですか?」
「申し訳ありませんレジーナ様。私の力不足です」

 ヒューリは苦虫を噛み潰したような顔をしている。そしてその表情のまま何が起きたのかを説明してくれた。

「アレクサンダー様に中央卸売市場の契約を全て取られてしまいました」
「ヒューリ王子。その言い方は聞き捨てならないですな。まるで私が悪者みたいではないですか」

 アレクサンダーはニヤニヤと笑いながら言った。その様子からも悪者感が出ている。

「それが何か問題でも?」

 どういうことかいまいち分かっていない私はヒューリに質問を投げかけるが、それに答えたのはアレクサンダーだった。

「これだから何も知らない女はまともなビジネスができないんですよ。グランメイズの中央卸売市場はこの国の店全てに商品を卸す場所。その権利を持つということはこの国の全てを自由にできるということです」
「全てを自由に……?」

 驚く私にヒューリが説明を加えてくれた。

「全てと言っても今まで契約されていた流通物資以外の新規枠全て……という意味です」
「つまり、その中央卸売市場を使って新しく猪肉を流通させることができないってことですか?」

 ヒューリは黙って頷く。

「アレクサンダー様。私たちも近日中に新規事業を立ち上げる予定ですのでその枠をいくらか分けてはいただけないでしょうか?」

 私はそう言ってアレクサンダーに打診をするが、アレクサンダーはニヤニヤとした顔のまま答えた。

「すでに契約書は交わしてしまいましたからね。一度交わした契約を破棄するなど信頼問題に関わります。商人の血筋のある私が契約破棄などという最低な行為をするわけにはいきません」

 婚約破棄をしておいてどの口が! と言いたいのを飲み込む。

「……いくらでその契約を譲渡していただけますか?」

 承認という言葉を出したからには金銭交渉に応じるはず。そう思って私は話を切り出した。

「ですから信頼とおっしゃったではないですか。いくらお金を積まれてもできないものはできません。レジーナ様方は諦めて田舎に帰って花でも摘んでいた方がよろしいのでは? 女性らしく……ね」

 こいつは私たちに嫌がらせをしたいだけだ! 間違いない! いや……確かゲームのシナリオでは……。

「どうしても無理だとおっしゃるのなら別の手段を考えます。貴重なお時間ありがとうございました」
「私の時間が貴重というのは理解してくれてるようでなにより。では私はこの辺で」

 アレクサンダーは高笑いをしながらその場から去っていった。その後ろ姿を見送ったヒューリは拳を壁に叩きつけて悔しさをあらわにする。

「くっ……。私があと2時間早く動いていればこのようなことにはならなかったというのに……」

 過ぎてしまったことは仕方がない。しかし私も猪肉食べ放題を諦めることなどできはしない。戦いはこれからだ。
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