過労死社畜は悪役令嬢に転生して経済革命を起こす

色部耀

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土の王国編

え、私ざまぁしてる?

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 ヒューリとの話がひと区切りついたところで私は思いついた。

「肝心の配送業者が必要だと思うんですけど、ハンターさんたちの集落の人に頼めませんか? 危険な生き物とか魔物と戦うことはありませんし、女性やお年寄りでも十分に活躍できると思うんです。もちろん報酬もお渡しします」

 ハンターのリーダーであるマルクにそう言うと二つ返事で答えてくれた。

「可能だ」
「では今から迎えに行ってあげてください。帰ってくる頃にはヒューリ王子の魔法士たちが住む場所も作ってくれると思います」

 半分冗談でそう言ってみたけど、ヒューリは即答で任せてくださいと言ってくれた。優秀な人は心強い。魔法士の方たちには恨まれてしまうかもしれないけど。

 ***

 そして多くのことが決まって動き出した事業。フルハイムミートと名付けられたチェーン店はたった1週間で20店舗もオープンする準備が整った。元々グランメイズにはフルハイム家が出資している花屋が50もあった。しかしそれだけあれば暇な花屋も多いわけで、フルハイムミートに鞍替えしたいと言ってすぐに動いた所も多かった。

 倉庫兼ハンターズの拠点には順調に猪肉が集まり、全店オープンに問題もない。さらにヒューリの働きかけでフルハイムミートと契約したいという作物業者も集まり、配送1本で仕入れを回すことも可能となった。

「記念すべき開業ですね」
「はい。それもヒューリ王子のお力のおかげです」

 午前4時。倉庫前で配送に出発する10台の馬車を見送り私とヒューリは感慨にふける。

「では私たちは私たちの仕事をしに行きますか」

 ヒューリにそう言われて私は返事をすると土の王国の家紋が入った馬車に乗り込む。馬車の中にはヒューリ直属の近衛兵団の面々。それと私とメアリー。

「お姉さま。お気をつけて」

 アリスはクロードと共に残り私たちを見送る。そして私たちを乗せた馬車は市場へ向けて速度を上げた。
 市場に着くとすでにセリで賑わっていた。しかしその一角でセリの声とは別に怒号が響く。

「注文していたものがなぜ届いていない!」

 市場の一角。本来なら大量の商品が置かれる予定だった場所は綺麗に床が見えている。声を上げているのは私の元婚約者アレクサンダーだった。

「どうかされましたか? アレクサンダー様」

 声をかけたのはヒューリ。後ろに控える近衛兵団の迫力が人々を遠ざける。

「な、な、なんでヒューリ王子が」

 明らかに動揺するアレクサンダー。一方のヒューリは毅然とした態度で眼鏡をクイっと上げると言い放った。

「アレクサンダー・フォスター。あなたを国家転覆罪で連行します」

 その言葉が聞こえた人々からざわめきが生まれる。国家転覆罪。それは死刑か終身刑の2択となるほどに重い罪。

「なんのことか分かりませんね」

 平静を装うアレクサンダー。しかしヒューリは書面を掲げるとそこに書かれた文章を読み上げる。

「重火器及び刀剣の密輸。税関と市場職員の買収。そして私設兵団の不法入国斡旋。これらの事実により国家転覆罪として裁判にかけます。御同行お願いできますね」

 アレクサンダーと隣に立つ婚約者は憎しみをたたえた目で私を睨む。

「レジーナ! 全て貴様のせいか! 私への復讐のつもりか!」

 私はアレクサンダーの言いがかりを受けて視線を逸らすと無視を決め込む。

「いいえ。全て私の近衛兵団の調査による物です。言いがかりはやめて大人しく王宮までお越しください」

 嘘だ。怪しい動きを察知していたのは間違いないけどヒューリたちだけでここまで上手くいくことはなかった。ゲームだと持ち込まれた武器と兵士による反乱をヒューリの近衛兵団が打ち倒すシナリオになっているから。アリスがその協力をすることによって物語が進む。
 しかしそのシナリオに沿うと反乱軍はもちろん、アレクサンダーも討ち死にしてしまう。だから私はゲームのことを誤魔化しつつ反乱情報だけ上手く伝えたのだった。
 その結果、武器の密輸の阻止。誰の血も流れることなくアレクサンダーの捕縛までこぎつけることができた。

「くそっ! 離せ!」

 口汚くなったアレクサンダーは近衛兵団に拘束されて馬車に押し込められる。婚約者も同様に拘束されて馬車に連れて行かれた。

「悪事に手を染める者の末路です」
「ちゃんと生きなきゃですね」
「ええ。しかし、アレクサンダーももしあなたとの婚約を破棄していなければこのようなことにはなっていなかったかもしれませんね」

 ヒューリはそう言って笑う。

「やはり婚約の兼はご存知だったのですね」
「黙っていてすみません」
「いえ。でも今そう言ってくださったのは少しでも私の気を晴らさせたいという意図があってのことでしょう?」
「はは、全てお見通しというわけですか。これは敵いませんね」
「ヒューリ王子はお優しい人と知っていますから」

 何度も周回プレイしたゲーム。そこでいつも初めに出会う王子様。今回もヒューリと出会えて良かったと心から思う。

「この件につきましては改めてお礼をさせていただきます」

 ヒューリはそう言って深く頭を下げたのだった。
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