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水の王国編
え、私話を進めた?
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アウラ王子はそう言って三叉槍を私に向けて構えた。なびく長髪に神秘的な三叉槍。ああ、これがスチルで見たシーンだ……。そう感動していた私の前にクロードがすぐさま割って入ると剣を抜いた。
「レジーナ様にそのような危険なものを向けるとは、貴様死にたいようだな」
そしてクロードはそう言い放った。顔には緊張が見えるメアリーも隣で剣を構えている。私にはよく分からないけど、2人にはアウラ王子の強さと三叉槍の危険さが見て分かるのだろう。
「悪い。ちょっとカッコつけただけだ」
アウラ王子はそう言うと手に持った三叉槍を光の粒に変えて消し去った。
「貴様は何者だ。それだけの力をどうやって手にした」
クロードは剣を構えたままアウラ王子を睨みつける。
「王子! こんなところにいた!」
ピリピリとした空気の中、空から飛んできた小柄な青年は見えないクッションの上に着地したように静かにアウラ王子の前に立った。
「ウチのバカ王子が失礼しました」
そしてアウラ王子の頭を無理矢理掴んで下げさせる。この国のトップにそんな無礼な態度を取る姿を見て私はとても暖かい気持ちになっていた。
「やめろよティード。髪が乱れるだろ」
「ボーボーに伸ばしてる王子が悪い」
「な! この長髪の良さが分からないとは!」
「あいにく俺は女々しさに良さを感じないもんでね。いいからこの人たちにちゃんと謝って。迷惑かけたんでしょ?」
「迷惑なんて!」
そう言ってアウラ王子は私を守るようにして立つ2人を見て固まった。
「かけたかもしれない」
「謝って。ちゃんと謝って」
「……ごめん」
アウラ王子は視線を逸らして俯くと小声でそう言った。
「おそらくこのバカは偽名でも名乗ったのだと思いますので、改めて紹介させてください。こちらは水の王国の王子。アウラ・ベンネスです。私は近衛兵長のティード・ユーリです。大変ご迷惑をおかけしたことと思います。よろしければ王宮にてお詫びをさせていただきます。いかがでしょうか?」
「行きます!」
ふたつ返事でそう言った私に使用人2人もアリスも呆気に取られている。
「では私たちは先に戻って準備をしますので。好きな時間にお越しください」
「え、僕まだ帰るつもりないよ? アリスちゃんとデートの途中なんだから」
「うっせえバカ。早く行くぞ。では皆さまお先に失礼します」
ティードはそう言ってアウラ王子の腕を掴むとそのまま魔法で空へと飛び立ったのだった。
「いったい何が起きたのですか……?」
メアリーは状況を理解できずに固まったままそう言った。うん。分かるよ。何も知らずに今の状況になったらそうだよね。知ってた私も展開の速さに驚いてる。
本来なら夕方まで連れまわされた後にティードに見つかって一緒に王宮に向かう流れのはずだった。三叉槍を構えるシーンも深夜に2人で王宮を抜け出した時に起こるイベントだ。おそらく私が話に割って入ったせいで三叉槍を出して、捜索中だったティードに見つかったのだろう。
ゲーム本来のシナリオから色々と順序が変わってしまったみたいだけど、とりあえず王宮に行く流れだけは確保したので大丈夫……だと……思う。
「とりあえず夕方くらいまで水の王国の観光でもしてましょうか。ほら、水晶鱒の塩焼きとか食べられると思うし」
「道中で構いません。知っていたことを洗いざらい話していただけますね?」
「……はい」
クロードの視線が痛い。流石にこんなハプニングじみたことになるとは思ってなかったから本当に申し訳ない……。認識が甘かった……。
「レジーナ様にそのような危険なものを向けるとは、貴様死にたいようだな」
そしてクロードはそう言い放った。顔には緊張が見えるメアリーも隣で剣を構えている。私にはよく分からないけど、2人にはアウラ王子の強さと三叉槍の危険さが見て分かるのだろう。
「悪い。ちょっとカッコつけただけだ」
アウラ王子はそう言うと手に持った三叉槍を光の粒に変えて消し去った。
「貴様は何者だ。それだけの力をどうやって手にした」
クロードは剣を構えたままアウラ王子を睨みつける。
「王子! こんなところにいた!」
ピリピリとした空気の中、空から飛んできた小柄な青年は見えないクッションの上に着地したように静かにアウラ王子の前に立った。
「ウチのバカ王子が失礼しました」
そしてアウラ王子の頭を無理矢理掴んで下げさせる。この国のトップにそんな無礼な態度を取る姿を見て私はとても暖かい気持ちになっていた。
「やめろよティード。髪が乱れるだろ」
「ボーボーに伸ばしてる王子が悪い」
「な! この長髪の良さが分からないとは!」
「あいにく俺は女々しさに良さを感じないもんでね。いいからこの人たちにちゃんと謝って。迷惑かけたんでしょ?」
「迷惑なんて!」
そう言ってアウラ王子は私を守るようにして立つ2人を見て固まった。
「かけたかもしれない」
「謝って。ちゃんと謝って」
「……ごめん」
アウラ王子は視線を逸らして俯くと小声でそう言った。
「おそらくこのバカは偽名でも名乗ったのだと思いますので、改めて紹介させてください。こちらは水の王国の王子。アウラ・ベンネスです。私は近衛兵長のティード・ユーリです。大変ご迷惑をおかけしたことと思います。よろしければ王宮にてお詫びをさせていただきます。いかがでしょうか?」
「行きます!」
ふたつ返事でそう言った私に使用人2人もアリスも呆気に取られている。
「では私たちは先に戻って準備をしますので。好きな時間にお越しください」
「え、僕まだ帰るつもりないよ? アリスちゃんとデートの途中なんだから」
「うっせえバカ。早く行くぞ。では皆さまお先に失礼します」
ティードはそう言ってアウラ王子の腕を掴むとそのまま魔法で空へと飛び立ったのだった。
「いったい何が起きたのですか……?」
メアリーは状況を理解できずに固まったままそう言った。うん。分かるよ。何も知らずに今の状況になったらそうだよね。知ってた私も展開の速さに驚いてる。
本来なら夕方まで連れまわされた後にティードに見つかって一緒に王宮に向かう流れのはずだった。三叉槍を構えるシーンも深夜に2人で王宮を抜け出した時に起こるイベントだ。おそらく私が話に割って入ったせいで三叉槍を出して、捜索中だったティードに見つかったのだろう。
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「道中で構いません。知っていたことを洗いざらい話していただけますね?」
「……はい」
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