過労死社畜は悪役令嬢に転生して経済革命を起こす

色部耀

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水の王国編

え、私眠りにつく?

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 どぶろく1杯で気持ち良くなった私は宴が終わった後、王宮近くの旅館に宿泊することになった。どぶろく1杯で酒に酔うなんてことはない。だけどどぶろく1杯の美味しさで幸せに酔うことはある。

「本当は露天風呂もあったらしいけどレヴィアタンのせいで使えないんだってさ」

 私は布団に転がりながら、旅館の小さなお風呂から上がったアリスに言った。仲居さんが言うには露天風呂はベンネスの外縁部にあるらしく、レヴィアタンや魔獣が近づいてきた際の防衛エリアのため使えなくなったとか。つくづく今のベンネスは娯楽を我慢ばかりさせられている。
 国産のお酒も飲めない。水上で夜にパーティもできない。外縁部にあった娯楽施設なども使えない。ゲームでは分からなかったことがたくさんある。

「レヴィアタンを討伐できたらゆっくりと楽しみましょう。ね。お姉さま」
「そうね。2日くらいの辛抱ね」

 明日封印の賢者に魔法を授けてもらい、その足でそのままレヴィアタン討伐。ゲームだとそんなに難しいイベントじゃない。

「お姉さま……。今日は寝る時に手を握ってもらえませんか?」
「え、アリス酔っ払ってる?」
「えへへ。そうかもしれません。でも酔っ払ってても明日は不安です。だから昔みたいに手を握ってくれたら明日の不安もなくなると思うんです」

 昔みたいに……。そう言われても私は昔の2人の関係を知らない。だからアリスが言うならそうなんだろう。
 アリスは私の隣に敷かれた布団に入るとそう言って手を伸ばしてきた。

「はい。これで安心した?」
「ありがとうございます。お姉さま」

 アリスはそう言って私の手を強く握り返すと目を瞑った。私はレヴィアタン戦の結末を知っている。問題なく討伐されるレヴィアタンを知っているからあまり不安はない。けど、この世界で生まれ育ったアリスはそうではない。これで少しでも安心させてあげることができるなら安いものだ。
 それに、なぜか私も悪い気はしない。誰かと手を握って眠るなんていつぶりだろう……。そんなことを思いながら、いつの間にか私も眠りについたのだった。
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