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水の王国編
え、私楽観的すぎ?
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翌日、ベンネスの南外縁部に集まった私たちとアウラ、アウラの近衛兵たち。今日はここから水中を移動して封印の賢者の下へ向かう。
「初めの水中移動の魔法は王宮魔法士にかけてもらって魔力温存をするように。道中で魔法が切れたら各々自分でかけること。レジーナ様一向は私がかけます」
そう言ったのはティードだった。水族館の巨大水槽の前のような場所で、近衛兵たちとは違った和装をした魔法士たちが一人一人魔法をかけていく。
遠くから見ていると綺麗だとばかり思っていた水の壁も近くから見ると恐怖のようなものがある。自分の方へ向かって雪崩れ込んできたら……という恐怖。しかし、魔法をかけられた近衛兵たちが次々に水の壁に入っていく様を見て怖さよりも楽しみな気持ちが上回る。
「では次、レジーナ様どうぞ」
魔法士に水中移動の魔法をかけてもらった私は呼吸を止めて目を閉じて水中に足を踏み入れた。濡れているはずなのに濡れているような感覚はない。服も乾いたまま。ゆっくり目を開けると水中で目を開けた時独特の刺激もない。そこで呼吸を止めていることに限界を感じ、意を決して息をすると水中なのに普段通り呼吸ができる。
「なんか、魔法みたい」
「魔法ですよレジーナ様」
私の当たり前の感想にメアリーが呆れた声を出す。
「分かってる。分かってるけど凄くて」
「お姉さま! 私水の中を歩いてます!」
メアリーに返事をしたところで嬉しそうなアリスが飛びついてくる。分かる。その感動は分かるよ。
「アリスちゃん。初めての水中に興奮するのは分かるけど、危ないから僕のそばを離れないようにね。あとこれ」
アウラ王子はそう言ってアリスに真珠のペンダントを渡した。
「お守り。これを絶対に肌身離さず持っていて」
「はい。分かりました」
アリスは受け取って真珠のペンダントを首に下げる。ペンダント自体も美しいけれど、その効果がまた凄まじいものだと私は知っている。けど、ここでその話をするのも野暮というものだろう。
「それでは行きましょう。ここから真っ直ぐ南下して珊瑚の森の祭壇に封印の賢者はいる。何事もなければ3時間ほどで到着するが、皆気を引き締めて行くように」
近衛兵長のティードがそう言うと他のメンバーは敬礼で応えた。アウラはにこりと微笑んでアリスの手を取ると部隊の中央に移動する。
「レジーナ様。私たちはこのまま最後尾を行きましょう」
「え、どうして?」
「状況を把握しているレジーナ様が部隊全体を視認できる位置にいた方がよろしいかと」
「うーん。よく分からないからどこでも良いや」
メアリーの提案に従って部隊の後方を歩く副隊長のニアと並ぶ形で私たちは進んだ。クロードはアウラ王子に目を光らせながらアリスのそばにいる。
「クロードも心配性ね」
「本当です。身の程を弁えるべきです」
「メアリー、そんなこと思ってたのね」
「相手はこの国の王子。戴冠式をしていないだけで実質王と言えます。そんな方をあのような目で見るべきではございません」
「まあ、たしかにそうなのかもしれないけど……」
離れた位置から3人を見ているとまるでアリスの取り合いをしているかのようで少し愛らしい。アウラ王子の余裕っぷりとクロードの苛立ちも見てみて尊い。
「魔獣とかレヴィアタンと戦うときに支障がなければ良いじゃない」
「レジーナ様は楽観的すぎます」
そうかな? あ、でもやっぱりそんなに重く感じていないのもゲーム知識のせいかもしれない。そう思うとメアリーの感覚もあながち間違いじゃないような気もしてきた。
「初めの水中移動の魔法は王宮魔法士にかけてもらって魔力温存をするように。道中で魔法が切れたら各々自分でかけること。レジーナ様一向は私がかけます」
そう言ったのはティードだった。水族館の巨大水槽の前のような場所で、近衛兵たちとは違った和装をした魔法士たちが一人一人魔法をかけていく。
遠くから見ていると綺麗だとばかり思っていた水の壁も近くから見ると恐怖のようなものがある。自分の方へ向かって雪崩れ込んできたら……という恐怖。しかし、魔法をかけられた近衛兵たちが次々に水の壁に入っていく様を見て怖さよりも楽しみな気持ちが上回る。
「では次、レジーナ様どうぞ」
魔法士に水中移動の魔法をかけてもらった私は呼吸を止めて目を閉じて水中に足を踏み入れた。濡れているはずなのに濡れているような感覚はない。服も乾いたまま。ゆっくり目を開けると水中で目を開けた時独特の刺激もない。そこで呼吸を止めていることに限界を感じ、意を決して息をすると水中なのに普段通り呼吸ができる。
「なんか、魔法みたい」
「魔法ですよレジーナ様」
私の当たり前の感想にメアリーが呆れた声を出す。
「分かってる。分かってるけど凄くて」
「お姉さま! 私水の中を歩いてます!」
メアリーに返事をしたところで嬉しそうなアリスが飛びついてくる。分かる。その感動は分かるよ。
「アリスちゃん。初めての水中に興奮するのは分かるけど、危ないから僕のそばを離れないようにね。あとこれ」
アウラ王子はそう言ってアリスに真珠のペンダントを渡した。
「お守り。これを絶対に肌身離さず持っていて」
「はい。分かりました」
アリスは受け取って真珠のペンダントを首に下げる。ペンダント自体も美しいけれど、その効果がまた凄まじいものだと私は知っている。けど、ここでその話をするのも野暮というものだろう。
「それでは行きましょう。ここから真っ直ぐ南下して珊瑚の森の祭壇に封印の賢者はいる。何事もなければ3時間ほどで到着するが、皆気を引き締めて行くように」
近衛兵長のティードがそう言うと他のメンバーは敬礼で応えた。アウラはにこりと微笑んでアリスの手を取ると部隊の中央に移動する。
「レジーナ様。私たちはこのまま最後尾を行きましょう」
「え、どうして?」
「状況を把握しているレジーナ様が部隊全体を視認できる位置にいた方がよろしいかと」
「うーん。よく分からないからどこでも良いや」
メアリーの提案に従って部隊の後方を歩く副隊長のニアと並ぶ形で私たちは進んだ。クロードはアウラ王子に目を光らせながらアリスのそばにいる。
「クロードも心配性ね」
「本当です。身の程を弁えるべきです」
「メアリー、そんなこと思ってたのね」
「相手はこの国の王子。戴冠式をしていないだけで実質王と言えます。そんな方をあのような目で見るべきではございません」
「まあ、たしかにそうなのかもしれないけど……」
離れた位置から3人を見ているとまるでアリスの取り合いをしているかのようで少し愛らしい。アウラ王子の余裕っぷりとクロードの苛立ちも見てみて尊い。
「魔獣とかレヴィアタンと戦うときに支障がなければ良いじゃない」
「レジーナ様は楽観的すぎます」
そうかな? あ、でもやっぱりそんなに重く感じていないのもゲーム知識のせいかもしれない。そう思うとメアリーの感覚もあながち間違いじゃないような気もしてきた。
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