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水の王国編

え、私聖女様みたい?

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「私は……」

 少しだけ考えて答えた。

「時間を操る魔法が欲しいです」

 言うだけならタダだ。そう思って少し欲張りな要求を出してみた。するとリラは困ったように腕を組んで考え始めた。え、やっぱり無理かな?

「時間を操る要素がある魔法……でいい?」
「じゃあそれで!」

 リラは即答する私に近付くとアリスやアウラ王子にしたのと同じく私の胸に手を当てた。眩しいくらいの光と共に魔法の帯が私の中に入り込んでくる。
 この世界に来て私自身に初めて魔法が使われる。それはとても胸高鳴ることで、私は一生懸命に顔の緩みを抑えていた。
 光の帯が体に入ってくるたびに少しずつ断片的な魔法の情報が感覚と脳に刻まれていくみたいだった。アプリをインストールされるパソコンってこんな気持ちなのかな? などとどうでもいいことを考えたりもする。
 そして帯の最後が私の中に入ってきた瞬間にどのような魔法が使えるようになったのかや、どうやって魔法を使えばいいのかが頭の中でカチリとハマった気がした。理解した。

「傷を……癒す魔法?」

 自分の手のひらを見つめながら私は呟いた。

「怪我が治る速度を急激に高める……。という意味では時間を操る魔法の一種だから。お母様がよく使っていた魔法。不満?」
「いや、全然! なんかこう……初めての魔法で感慨深くて! それに、色々検証のしがいもあるかなって」
「検証……ですか?」

 そう聞き返してきたのはアリスだった。私が魔法をもらう目的は戦闘にはない。傷を癒す魔法はそれ自体が重宝される凄い魔法なんだと思うけど、元々この世界には傷を癒す魔法を使える人は多いし、正直言って私が出る幕なんてない。でも、だからこそ傷を癒す目的以外で使い道がないのか検証して検討して実用化させたいなんて思ったりもする。

「傷を治す原理。それを追究して他に使い道がないかなって。汎用性が高い魔法の方が色々便利でしょ?」
「さすがお姉さまです。そんなこと考えもしませんでした! それにしても傷を癒す魔法を操るお姉さまはなんというか……。伝説の聖女様みたいですね!」

 伝説の聖女様……。ゲーム聖王国の中で聖王国の初代王女の呼称。聖なる力で一面に広がる毒の大地を美しい草原に変えたとか。疫病を魔法ひとつで消し去ったとか。
 いやいや、私はそんな大層なものになれませんよ? 荷が重いですよ? それに……

 ゲームのエンディングで聖女様になってるのはアリスだから!!
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