41 / 66
水の王国編
え、私シナリオ変える?
しおりを挟む
「レヴィアタン討伐に私ができる協力はここまで。健闘を祈るわ」
「ありがとうございます。きっと打ち倒して見せます」
リラの言葉にアウラ王子がそう答えて頭を下げる。アリスも同様に頭を下げる。
「それでは失礼しました」
アウラ王子がそう言って祠から出ようとする。アリスももちろんそれについて行こうとする。でも私はそこで聖王国最大のタブーのひとつに触れることにした。
ゲームでも魔法を授けてもらってすぐに祠を出るとレヴィアタン討伐へ向かうことになる。それはいい。しかし、祠に残ったリラには今後一切会うことができなくなる。祠まで来ても扉は固く閉ざされていると表示が出て入ることはできない。祠の中にいるのか、はたまた外に出たのかも分からない。
役目を終えた彼女がどうなったのか。まとめサイトやSNSでは憶測が飛び交い、死亡説まで流れ、ひとりで幸せに旅立つ二次創作まで生まれているほど。
なんの違和感もなく立ち去ろうとした2人に私は待ったをかけた。
「2人とも待って。私たちがレヴィアタン討伐に向かった後。レヴィアタンを討伐した後、あなたはどうするの?」
2人を引き止めてリラにそう質問する私。リラは悟ったような顔で答える。
「私はこの時代の人間じゃない。レヴィアタン封印の役目もない。生まれた意味を果たしたならあとは……」
そこで言葉を濁した。でもその言葉に続くものなんて数が知れている。私はそんな言葉を聞いて黙っていられるほど欲のない人間じゃない。私がこの世界で欲しいのは美味しい食べ物や飲み物だけじゃない。綺麗な景色を見ることだけじゃない。
「一緒に行きましょうリラ。生まれた意味は自分では決められないかもしれないけど、生きる理由は自分で決められる。一緒に生きましょう」
そう言って私は手を差し伸べる。リラは今まで眠たそうに細めていた目を大きく見開いて驚く様子を見せる。
私は欲張りだから。目の前にいる可愛い子が幸せに生きる可能性があるならそれも欲しい。幸せに生きるリラの姿が見たい。
リラはしばらく固まった後にゆっくりと、それはそれはゆっくりと私に近づいて手を握った。
その手は震えていた。
「私はこの世界にいても良いの?」
そしてそんなことを聞いてきた。答えは決まってる。
「当たり前じゃん」
リラは私の答えを聞いて涙をぼろぼろ流した。私は泣いて欲しかったわけじゃない。そうじゃないけど、その姿はとても美しく思えた。
「もし生きる許可が欲しいとか考えてたなら、その許可私が出す。元花の国フルハイム家の現当主の許可なら十分でしょ?」
「……うん」
リラは私の手を一層強く握った。私はリラを幸せにしたいと一層強く思った。
「ありがとうございます。きっと打ち倒して見せます」
リラの言葉にアウラ王子がそう答えて頭を下げる。アリスも同様に頭を下げる。
「それでは失礼しました」
アウラ王子がそう言って祠から出ようとする。アリスももちろんそれについて行こうとする。でも私はそこで聖王国最大のタブーのひとつに触れることにした。
ゲームでも魔法を授けてもらってすぐに祠を出るとレヴィアタン討伐へ向かうことになる。それはいい。しかし、祠に残ったリラには今後一切会うことができなくなる。祠まで来ても扉は固く閉ざされていると表示が出て入ることはできない。祠の中にいるのか、はたまた外に出たのかも分からない。
役目を終えた彼女がどうなったのか。まとめサイトやSNSでは憶測が飛び交い、死亡説まで流れ、ひとりで幸せに旅立つ二次創作まで生まれているほど。
なんの違和感もなく立ち去ろうとした2人に私は待ったをかけた。
「2人とも待って。私たちがレヴィアタン討伐に向かった後。レヴィアタンを討伐した後、あなたはどうするの?」
2人を引き止めてリラにそう質問する私。リラは悟ったような顔で答える。
「私はこの時代の人間じゃない。レヴィアタン封印の役目もない。生まれた意味を果たしたならあとは……」
そこで言葉を濁した。でもその言葉に続くものなんて数が知れている。私はそんな言葉を聞いて黙っていられるほど欲のない人間じゃない。私がこの世界で欲しいのは美味しい食べ物や飲み物だけじゃない。綺麗な景色を見ることだけじゃない。
「一緒に行きましょうリラ。生まれた意味は自分では決められないかもしれないけど、生きる理由は自分で決められる。一緒に生きましょう」
そう言って私は手を差し伸べる。リラは今まで眠たそうに細めていた目を大きく見開いて驚く様子を見せる。
私は欲張りだから。目の前にいる可愛い子が幸せに生きる可能性があるならそれも欲しい。幸せに生きるリラの姿が見たい。
リラはしばらく固まった後にゆっくりと、それはそれはゆっくりと私に近づいて手を握った。
その手は震えていた。
「私はこの世界にいても良いの?」
そしてそんなことを聞いてきた。答えは決まってる。
「当たり前じゃん」
リラは私の答えを聞いて涙をぼろぼろ流した。私は泣いて欲しかったわけじゃない。そうじゃないけど、その姿はとても美しく思えた。
「もし生きる許可が欲しいとか考えてたなら、その許可私が出す。元花の国フルハイム家の現当主の許可なら十分でしょ?」
「……うん」
リラは私の手を一層強く握った。私はリラを幸せにしたいと一層強く思った。
1
あなたにおすすめの小説
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした
まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」
王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。
大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。
おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。
ワシの怒りに火がついた。
ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。
乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!!
※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。
豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。
下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。
豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。
小説家になろう様でも投稿しています。
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる