5 / 5
未知との後日談
しおりを挟む
その日の俺は、いつも通りネットゲームのレベル上げバイトをしていた。いつも通りの俺は、いつも通りじゃなかったあの日に想いを馳せる。
優子が生き返った日。礼子が成仏してしまった日。
俺は悪運強く、優子を生き返らせた事がバレること無く日常生活を送れている。
あの日あの時の礼子の台詞は忘れられない。
俺は優子を生き返らせた後、礼子と共に家まで送り届けた。
家に入ることを渋っていた優子だったが、礼子の励ましで顔色を変えて帰宅した。
俺と礼子は月明かりが眩しい夜中を、例の公園まで歩いて行った。少しだけ……話がしたかったんだ、礼子が成仏してしまうまでに。
「セッちゃん、本当に今までありがとう。感謝してもしきれないよ。やっぱり優しいよね。セッちゃんて」
苦しそうな鳴き声を上げるブランコに乗り、礼子は俺に大きな声で訴えた。
「俺は仕事だからな。お前みたいに死んでも友達を心配し続けて、嘘を貫き通していたヤツに比べれば優しさなんて無いようなもんだよ」
そう。礼子はずっと気付いていて黙っていたのだ。嘘をつき続けていたのだ。今考えても、よくもまああんなに口からでまかせが出たものだと思う。
「女は嘘をつくものよね。何百回も独り言を言うわけ無いじゃない」
出会った瞬間から嘘をついていたのだと言う。幽霊になった瞬間から、神のようなものが現れることを待っていたのだと言う。
「あたしがいなくなった後の優子が心配でたまらなくて成仏出来なかった。どうにかして人生をやり直させてあげられないかってずっと考えてた」
優子の死の瞬間も見ていたし、その後にどういう経緯でイレギュラーな幽霊になったのかも知っていた。
「セッちゃんが黒髪ロリータなエロ本買ってたのを見たの。それで、うほっ! あたしドストライクじゃん! って思って頑張っちゃった」
そうです。ずっと誤魔化してましたが、わたすがロリコンどす。
「セッちゃんにあたしを惚れさせて、優子を生き返らせてやろうって近付きました」
まんまとやられたわけです。でも後悔はしてない。こいつは……根っからの良いヤツだと知っているから。
「惚れさせようと思ったけど、よく考えてみればあたしって友達すら作れない残念なぼっちって気付いた」
おせーよ。誰が好き好んであんなバカテンションを好きになるかよ。
――好きになったよ。悪かったな!
「あたしって人に好かれるってどうしたら良いのか分からなくて、とりあえずセッちゃんのことをいっぱい調べた」
通りで幽霊の友達が山のようにいた訳だ。
「でも、調べてるうちにセッちゃんのこと好きになっちゃった。何でこんなにセッちゃんのことばっかり考えてるんだろうって思ったら、世界がクルってひっくり返ったって言うか……」
そうそう。俺に惚れてね。……え? なんだって?
「この町で、人助けも幽霊助けもバカみたいにやってるって話じゃん? 幽霊の間で物凄い有名でさー。本人はぶっきらぼうなのに、周りが皆べた褒めするじゃない? ……なんか、そう言うのカッコ良かったと言うかなんと言うか」
彼女いない歴が年齢を越えた俺にとって初めて告白を受けた瞬間でした。
「あたしの方が好きになっちゃってた」
「いや、俺の方が好きだよ! いやっ違っ! 今のは……。違う! 滑った! 口が滑っただけだ」
「口が滑ったら本音が出るのよ」
にやつく笑顔がまた可愛いわけで。……完全に負けてますねこれは。
「あたし、本当に幽霊になれて良かった! セッちゃんと一緒にいれて、とっても幸せだった! 後輩になるように誘ってくれたとき、実は胸が張り裂けるほど嬉しかった」
実体を持った幽霊にしか殺生神はできない……。それでなければすぐにでも……。
「優子に負けないくらいセッちゃんのことが好き……。でも、もうさよならの時間」
そう……言った。体は後ろのブロック塀の落書きが見える程度には透けてしまっていた。
「ちょっと待てよ。まだ成仏しなくても良いだろ? もう少しゆっくりして行けよ。まだ時間はいっぱいあるだろ?」
風がどんどんと冷たくなる。朝が近付いたからだろう。
「私は成仏します。生まれ変わって優子に会いに行くって約束したし、急がなくちゃ」
ブランコから立ち上がった礼子は、俺が知っている綺麗な笑顔だった。笑顔でお別れなんて……寂しいじゃないか。
「成仏したって、良いこと無いんだぞ! 完全に無になるだけなんだ。成仏なんてするなよ。ここにいろよ! そうだ。お前が好きっていってくれたあの狭い部屋に住まわせてやるからさ!」
「セッちゃん、それオフレコなんじゃない? まあ、薄々気付いてはいたけど……。それでもあたしは成仏します。奇跡を信じて」
「奇跡なんて……。今まで起きた試しがない。あの時だって……。頼む、俺のそばにいてくれよ!!!!」
俺は礼子を抱き締めようと駆け寄って手を回した。普通の物語ならそのまま通り抜けておしまいだが、俺は神。触れるくらいできる。やろうと思えば無理矢理引き留めることだって……。
……そう思っていた時期が俺にもありました。
俺の体重を支えてくれているのは、礼子ではなく、予想外に踏み出した右足だった。
つまり、すり抜けたと言うこと。
「なんで! どうしてッ!! どうして……」
俺は礼子に触れようと何度も肩に手をかけようとするが、全てが無駄だった。
「あたしが触れられたくないって気持ちの方が強いみたいね」
「そんなことは関係無い! 俺は神の力を使ってるんだぞ!」
「神の力の無駄遣い乙」
なんだよ乙って。
「あたしはどうしても触れられたくないの!」
「どうして!」
「あんたバカぁ? 辛くなるからに決まってるじゃない!!」
俺は……それ以上口を開くことが出来なかった。
「セッちゃん……最後に本名教えてよ」
最後なんて言うなよ。
「……天沢聖司だ」
「コンクリートロードはやめた方がいいぜ! やなヤツ!」
だから言いたくなかったんだ。
「じゃあこれからも、セッちゃんって呼べるね!」
「これからもっておまえ!」
「バイバイ! セッちゃん、だいす――
……最後まで言い切らずに消えちまいやがったな。これからもって……一回だけじゃないか。
冷たい夜風が、俺の内蔵に直接入り込んだかのように、胸が冷たく締め付けられた――。
あれからどれだけ時間が経ったのだろう――。
毎日が退屈なものに変わったのは。いや、普段がどれだけ退屈な日々だったのかと思い知らされた――そう表現した方が正しいのかもしれない。
優子は、幸せな毎日を知ることで今までの生活に戻れない――そう思い詰めるほどだった。俺も今ならその気持ちが分かる。解る。
だからと言って、これからの時間を消してしまえば、こうして楽しかった日々を思い出すことさえできなくなるのだ。
思い出の中で……時間はいくらでも巻き戻るのだ。
例えば、芸能人なんかが亡くなってしまったとしよう。しかし、その事実が隠されたまま再放送や録画放送でテレビに出続けていたらどうだろう?
実際に会う機会がない者にとっては生きているのと変わり無いのではないか? ならば、思い出すことで次に会った時にどのような会話をしようかと馳せる事で実質の別れも永遠の別れとはならないのではないか?
どれだけでも理屈を並べる。別れが無かったことに出来るならこの時間に二の足を踏もうとも。それがどれだけ不毛だろうとも――。
涼しい夜風を浴びていると余計に切なくなってくる。
――なんだ……雨か?
「いや、みくるビームか――」
ベランダから夜空を見上げていると、ポケットから振動が伝わってきた。――単なる携帯電話のバイブレーションだが……。
俺はむず痒い目を拭って受信したメールを開く。
「おっすwwwおーっすwwwwww夜空んごを見上げて乙女泣きしてた天沢君に久々ながら会いに行くおwww神自ら会いに行くおwwwいま会いに行きますwww」
乙女泣きとかしてねぇし。と言うか、神になんて久々だとしても会いたくない、ウザいキモい邪魔くさい。臭い。
もう一通届いた。
「臭いとかマジへこむから。あー、へこみすぎたからファブリーズでうがいするわ」
どうでも良かった。
どうでも良いが、部屋の中が神々しく光だした。良く転生物の小説で描写される何かキラキラしたやつだ。描写が欲しい人は、転生、ファンタジーで検索。
しかしファンタジー小説と違い、そこから現れるのはウザいおっさんだ。
「いつもニコニコあなたの隣に這いよる混沌! 礼子ちゃんでーーす!!!!」
「…………」
「いつもニコニコあなたの隣に這いよる混沌! 礼子ちゃんでーーす!!!!」
「…………」
「いつもニコニコあなたの隣に這いよる混沌! 礼子ちゃんでーーす!!!!」
「…………」
「いつもニコニコあなたの隣に這いよる混沌! 礼子ちゃんでーーす!!!!」
「…………」
「いい加減に突っ込みなさいよ!! それがあなたの生きる道でしょうが!!」
「ほん……もの……か?」
「触ってみる?」
俺は何の考えもなく礼子を抱き締めていた。
「いたい。いたいっすよセッちゃん」
俺は黙って抱き締め続けていた。いや言葉が出なかった。声にならないほど嬉しかった。
――落ち着くまで時間がかかった。
「よしよし。落ち着いたかい?」
落ち着いた俺は、調子に乗って頭を撫でてきた礼子の手を払って一歩距離をあけた。
「どうして帰ってこれたんだ?」
「なんでここがあたしの家って前提みたいに言ってはんねん。マジひくわー。あっうっごめんなさいアイロンは投げないで下さい」
こっちは真剣に聞いているんだ。
「つまりはこういう事」
礼子は巻物のような物をサッと広げた。そこには俺が知るウザ神の字でこう書かれていた。
「新米の神と大量の仕事を送っとくから、研修がてらガンバってね」
俺が声に出して読み終えると、礼子は続いてこう言った。
「あたしってば、新世界の神になったっぽいよ。生々しく言えばセッちゃんの上司」
生々しい言い方にするな。嘘でなければ……間違いじゃないが。
生々しい台詞が吐かれてすぐ、またもや俺のポケットの中から振動が伝わってくる。神からのメールだ。
「頼むから、その子を天界に帰さないで下さい。お願いします。すみませんでした」
……どんだけ弱みを握られたんだよ。
「よしセッちゃん!! 早速だけどお仕事行こうか!! 初任務初任務」
浮かれた元浮かばれない幽霊。
「まずは、道に飛び出して事故に合いそうになった少年を助けようとして、予定外に死んでしまった不良男子高生よ!!」
「どこかで聞いたことある話だな――」
「さっ! 行くよセッちゃん!!」
俺はこれから何度も『セッちゃん』と呼ばれるのだろう。
俺と礼子の物語はまだ以下略――
優子が生き返った日。礼子が成仏してしまった日。
俺は悪運強く、優子を生き返らせた事がバレること無く日常生活を送れている。
あの日あの時の礼子の台詞は忘れられない。
俺は優子を生き返らせた後、礼子と共に家まで送り届けた。
家に入ることを渋っていた優子だったが、礼子の励ましで顔色を変えて帰宅した。
俺と礼子は月明かりが眩しい夜中を、例の公園まで歩いて行った。少しだけ……話がしたかったんだ、礼子が成仏してしまうまでに。
「セッちゃん、本当に今までありがとう。感謝してもしきれないよ。やっぱり優しいよね。セッちゃんて」
苦しそうな鳴き声を上げるブランコに乗り、礼子は俺に大きな声で訴えた。
「俺は仕事だからな。お前みたいに死んでも友達を心配し続けて、嘘を貫き通していたヤツに比べれば優しさなんて無いようなもんだよ」
そう。礼子はずっと気付いていて黙っていたのだ。嘘をつき続けていたのだ。今考えても、よくもまああんなに口からでまかせが出たものだと思う。
「女は嘘をつくものよね。何百回も独り言を言うわけ無いじゃない」
出会った瞬間から嘘をついていたのだと言う。幽霊になった瞬間から、神のようなものが現れることを待っていたのだと言う。
「あたしがいなくなった後の優子が心配でたまらなくて成仏出来なかった。どうにかして人生をやり直させてあげられないかってずっと考えてた」
優子の死の瞬間も見ていたし、その後にどういう経緯でイレギュラーな幽霊になったのかも知っていた。
「セッちゃんが黒髪ロリータなエロ本買ってたのを見たの。それで、うほっ! あたしドストライクじゃん! って思って頑張っちゃった」
そうです。ずっと誤魔化してましたが、わたすがロリコンどす。
「セッちゃんにあたしを惚れさせて、優子を生き返らせてやろうって近付きました」
まんまとやられたわけです。でも後悔はしてない。こいつは……根っからの良いヤツだと知っているから。
「惚れさせようと思ったけど、よく考えてみればあたしって友達すら作れない残念なぼっちって気付いた」
おせーよ。誰が好き好んであんなバカテンションを好きになるかよ。
――好きになったよ。悪かったな!
「あたしって人に好かれるってどうしたら良いのか分からなくて、とりあえずセッちゃんのことをいっぱい調べた」
通りで幽霊の友達が山のようにいた訳だ。
「でも、調べてるうちにセッちゃんのこと好きになっちゃった。何でこんなにセッちゃんのことばっかり考えてるんだろうって思ったら、世界がクルってひっくり返ったって言うか……」
そうそう。俺に惚れてね。……え? なんだって?
「この町で、人助けも幽霊助けもバカみたいにやってるって話じゃん? 幽霊の間で物凄い有名でさー。本人はぶっきらぼうなのに、周りが皆べた褒めするじゃない? ……なんか、そう言うのカッコ良かったと言うかなんと言うか」
彼女いない歴が年齢を越えた俺にとって初めて告白を受けた瞬間でした。
「あたしの方が好きになっちゃってた」
「いや、俺の方が好きだよ! いやっ違っ! 今のは……。違う! 滑った! 口が滑っただけだ」
「口が滑ったら本音が出るのよ」
にやつく笑顔がまた可愛いわけで。……完全に負けてますねこれは。
「あたし、本当に幽霊になれて良かった! セッちゃんと一緒にいれて、とっても幸せだった! 後輩になるように誘ってくれたとき、実は胸が張り裂けるほど嬉しかった」
実体を持った幽霊にしか殺生神はできない……。それでなければすぐにでも……。
「優子に負けないくらいセッちゃんのことが好き……。でも、もうさよならの時間」
そう……言った。体は後ろのブロック塀の落書きが見える程度には透けてしまっていた。
「ちょっと待てよ。まだ成仏しなくても良いだろ? もう少しゆっくりして行けよ。まだ時間はいっぱいあるだろ?」
風がどんどんと冷たくなる。朝が近付いたからだろう。
「私は成仏します。生まれ変わって優子に会いに行くって約束したし、急がなくちゃ」
ブランコから立ち上がった礼子は、俺が知っている綺麗な笑顔だった。笑顔でお別れなんて……寂しいじゃないか。
「成仏したって、良いこと無いんだぞ! 完全に無になるだけなんだ。成仏なんてするなよ。ここにいろよ! そうだ。お前が好きっていってくれたあの狭い部屋に住まわせてやるからさ!」
「セッちゃん、それオフレコなんじゃない? まあ、薄々気付いてはいたけど……。それでもあたしは成仏します。奇跡を信じて」
「奇跡なんて……。今まで起きた試しがない。あの時だって……。頼む、俺のそばにいてくれよ!!!!」
俺は礼子を抱き締めようと駆け寄って手を回した。普通の物語ならそのまま通り抜けておしまいだが、俺は神。触れるくらいできる。やろうと思えば無理矢理引き留めることだって……。
……そう思っていた時期が俺にもありました。
俺の体重を支えてくれているのは、礼子ではなく、予想外に踏み出した右足だった。
つまり、すり抜けたと言うこと。
「なんで! どうしてッ!! どうして……」
俺は礼子に触れようと何度も肩に手をかけようとするが、全てが無駄だった。
「あたしが触れられたくないって気持ちの方が強いみたいね」
「そんなことは関係無い! 俺は神の力を使ってるんだぞ!」
「神の力の無駄遣い乙」
なんだよ乙って。
「あたしはどうしても触れられたくないの!」
「どうして!」
「あんたバカぁ? 辛くなるからに決まってるじゃない!!」
俺は……それ以上口を開くことが出来なかった。
「セッちゃん……最後に本名教えてよ」
最後なんて言うなよ。
「……天沢聖司だ」
「コンクリートロードはやめた方がいいぜ! やなヤツ!」
だから言いたくなかったんだ。
「じゃあこれからも、セッちゃんって呼べるね!」
「これからもっておまえ!」
「バイバイ! セッちゃん、だいす――
……最後まで言い切らずに消えちまいやがったな。これからもって……一回だけじゃないか。
冷たい夜風が、俺の内蔵に直接入り込んだかのように、胸が冷たく締め付けられた――。
あれからどれだけ時間が経ったのだろう――。
毎日が退屈なものに変わったのは。いや、普段がどれだけ退屈な日々だったのかと思い知らされた――そう表現した方が正しいのかもしれない。
優子は、幸せな毎日を知ることで今までの生活に戻れない――そう思い詰めるほどだった。俺も今ならその気持ちが分かる。解る。
だからと言って、これからの時間を消してしまえば、こうして楽しかった日々を思い出すことさえできなくなるのだ。
思い出の中で……時間はいくらでも巻き戻るのだ。
例えば、芸能人なんかが亡くなってしまったとしよう。しかし、その事実が隠されたまま再放送や録画放送でテレビに出続けていたらどうだろう?
実際に会う機会がない者にとっては生きているのと変わり無いのではないか? ならば、思い出すことで次に会った時にどのような会話をしようかと馳せる事で実質の別れも永遠の別れとはならないのではないか?
どれだけでも理屈を並べる。別れが無かったことに出来るならこの時間に二の足を踏もうとも。それがどれだけ不毛だろうとも――。
涼しい夜風を浴びていると余計に切なくなってくる。
――なんだ……雨か?
「いや、みくるビームか――」
ベランダから夜空を見上げていると、ポケットから振動が伝わってきた。――単なる携帯電話のバイブレーションだが……。
俺はむず痒い目を拭って受信したメールを開く。
「おっすwwwおーっすwwwwww夜空んごを見上げて乙女泣きしてた天沢君に久々ながら会いに行くおwww神自ら会いに行くおwwwいま会いに行きますwww」
乙女泣きとかしてねぇし。と言うか、神になんて久々だとしても会いたくない、ウザいキモい邪魔くさい。臭い。
もう一通届いた。
「臭いとかマジへこむから。あー、へこみすぎたからファブリーズでうがいするわ」
どうでも良かった。
どうでも良いが、部屋の中が神々しく光だした。良く転生物の小説で描写される何かキラキラしたやつだ。描写が欲しい人は、転生、ファンタジーで検索。
しかしファンタジー小説と違い、そこから現れるのはウザいおっさんだ。
「いつもニコニコあなたの隣に這いよる混沌! 礼子ちゃんでーーす!!!!」
「…………」
「いつもニコニコあなたの隣に這いよる混沌! 礼子ちゃんでーーす!!!!」
「…………」
「いつもニコニコあなたの隣に這いよる混沌! 礼子ちゃんでーーす!!!!」
「…………」
「いつもニコニコあなたの隣に這いよる混沌! 礼子ちゃんでーーす!!!!」
「…………」
「いい加減に突っ込みなさいよ!! それがあなたの生きる道でしょうが!!」
「ほん……もの……か?」
「触ってみる?」
俺は何の考えもなく礼子を抱き締めていた。
「いたい。いたいっすよセッちゃん」
俺は黙って抱き締め続けていた。いや言葉が出なかった。声にならないほど嬉しかった。
――落ち着くまで時間がかかった。
「よしよし。落ち着いたかい?」
落ち着いた俺は、調子に乗って頭を撫でてきた礼子の手を払って一歩距離をあけた。
「どうして帰ってこれたんだ?」
「なんでここがあたしの家って前提みたいに言ってはんねん。マジひくわー。あっうっごめんなさいアイロンは投げないで下さい」
こっちは真剣に聞いているんだ。
「つまりはこういう事」
礼子は巻物のような物をサッと広げた。そこには俺が知るウザ神の字でこう書かれていた。
「新米の神と大量の仕事を送っとくから、研修がてらガンバってね」
俺が声に出して読み終えると、礼子は続いてこう言った。
「あたしってば、新世界の神になったっぽいよ。生々しく言えばセッちゃんの上司」
生々しい言い方にするな。嘘でなければ……間違いじゃないが。
生々しい台詞が吐かれてすぐ、またもや俺のポケットの中から振動が伝わってくる。神からのメールだ。
「頼むから、その子を天界に帰さないで下さい。お願いします。すみませんでした」
……どんだけ弱みを握られたんだよ。
「よしセッちゃん!! 早速だけどお仕事行こうか!! 初任務初任務」
浮かれた元浮かばれない幽霊。
「まずは、道に飛び出して事故に合いそうになった少年を助けようとして、予定外に死んでしまった不良男子高生よ!!」
「どこかで聞いたことある話だな――」
「さっ! 行くよセッちゃん!!」
俺はこれから何度も『セッちゃん』と呼ばれるのだろう。
俺と礼子の物語はまだ以下略――
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私の守護霊さん『ラクロス編』
Masa&G
キャラ文芸
本作は、本編『私の守護霊さん』の番外編です。
本編では描ききれなかった「ラクロス編」を、単独でも読める形でお届けします。番外編だけでも内容はわかりますが、本編を先に読んでいただくと、より物語に入り込みやすくなると思います。
「絶対にレギュラーを取って、東京代表に行きたい――」
そんな想いを胸に、宮司彩音は日々ラクロスの練習に明け暮れている。
同じポジションには、絶対的エースアタッカー・梶原真夏。埋まらない実力差に折れそうになる彩音のそばには、今日も無言の相棒・守護霊さんがいた。
守護霊さんの全力バックアップのもと、彩音の“レギュラー奪取&東京代表への挑戦”が始まる──。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる