未来からの小説、過去からの恋

色部耀

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HARU:五日目~六日目

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 私は声を上げて涙を流していた。
 KAZUの好きな女の子への気持ちが痛いほどに綴られた物語だった。途中で読むことが辛くなるほどに揺るぎない真っ直ぐで固い想いが乗せられた小説だった。それは紛れもなく私ではない誰かに宛てたラブレターだった。
 この数日、私は今までにないくらいに心を揺さぶられ、初めて本当の恋をしたと思っていた。けれど、やっぱりそこには超えられない壁はあって、今すぐ会うことができない私にはどうすることもできない問題だった。心が高ぶっていた分、落ちた時の衝撃も強く、それも今までにない苦しみだった。

「ハルー。大丈夫か?」

「放っといて!」

 部屋の外から聞こえてくるお父さんの声に大声で返す。怒っているわけでは無い。ただ、震えた泣き声を聞かせたくなかったからそんな言い方になってしまっただけ。
 小説から受けた印象は明確な拒絶。二十年後の私は素敵だったけど好きな子がいたなんて書いてあった。けれど、そんな優しい言葉が更に私を苦しめた。KAZUなら……最後くらいは綺麗な言葉で終わらせたいと思うだろうから。できるだけ私を傷つけずにいようと考えるはずだから。だからこれが最後なのだろうと私は確信してしまった。感想は書かなくても良いと言っていたのは感想を貰うと迷惑だからだろう。もう私と話したくはないという意思表示なのだろう。
 KAZUが突然私と距離を置くための小説を書いた。それはショックでたまらないし、寂しいに違いない。けれど、それは一つの事実も指し示していて……

「私……未来でKAZUに気持ち伝えちゃったんだろうな……」

 だからその気持ちに応えられないとわざわざ小説にしてまで私に伝えてくれたのだろう。そう思うと少しだけ、ほんの少しだけだけど納得することができた。

 私は未来でフラれたんだと――

 日が変わる頃、私は小説サイトのトップページからメニューを開く。明日でこのサイトは他のサイトに吸収される形でサービス終了になる。そんなお知らせ文を横目に私は画面を一番下までスクロールする。

「もう……いいや……」

 私はそこから進んだ画面に表示された「本当に退会しますか?」という項目に決定ボタンを押した。残ったのは、ご利用ありがとうございましたと書かれた文字だけだった。
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