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2015年末「通院の日々」

映画「博士と彼女のセオリー」で泣いた

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 昨年のアカデミー賞で主演男優賞を受賞したエディ・レッドメインさん。
 その出演映画は、車椅子の天才物理学者スティーブン・ホーキング博士の半生を描いた「博士と彼女のセオリー」

 授賞式の中継でワンシーンを見て、「えっ、あのレ・ミゼラブルのマリウス役!?」 

 まさに貴公子のような俳優さんが・・・テレビで見るホーキング博士その人にしか見えず、絶対に観たい!!と思った映画でした。

 でも昨年の今頃は、足に力が入らずよく転倒するしで、その原因が分からず病院巡りをしていた頃・・・仕事も年度末で多忙・・・
 そのうち機を逃してしまっていた。

 今やすっかりお茶の間専門での映画鑑賞になってしまったけど。
 この間、やっと観ることができました。

 昨年の授賞式で、オスカーを手に感謝のスピーチのエディ・レッドメインさん。
 スピーチの一部になりますが、

「このオスカーは世界中のALSと闘っている人達のための像、そしてホーキング家の子供達のためのものです・・・」

 まさか自分がそのALSになるとは知る由もなかった時なのに、この箇所がとても印象に残っていました。



 ホーキング博士は若くしてALSを発症、余命宣告2年と知りつつ、未来へと共に歩んだ奥様の回顧録を元に描かれた映画。

「博士と彼女のセオリー」

 出会い・・・
 そして大学ダンスパーティーの夜に愛を育むふたり・・・

 でも、その症状は徐々にやってくる。物を掴みにくくなり、躓きやすくなり・・・身体の違和感に、何故?
 そして激しく転倒し、検査を受けると告げられる病名。

 運動ニューロン疾患ALSです。
 運動神経細胞が侵され、脳からの命令が筋肉に伝わらなくなります。
 たとえば、話すこと歩くこと・・・呼吸や飲み込むこと、筋肉を動かそうとする信号が伝わらなくなるので、その結果、全身の筋肉が弱っていき、やがては随意運動を制御する能力が失われます。

「残念ですが 余命は2年ほど・・・治療法はありません」

 医師からのこの宣告に、若きホーキング博士が「脳への影響は?」と・・・

「脳は影響を受けません。思考力もです」

 後々、ホーキング博士が言ってます。

「脳みそが筋肉でできてなくて良かった」

 本当に思考力は人間の尊厳とも言えるもの。
 どんな現実も受け止めなくてはならない。残酷な面ではあるけれど・・・
 全ての選択肢は自分自身で決められるのだから、ある意味この上なく幸せなのかもしれない。

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 教授と若きホーキング博士のワンシーン。
 2年の余命と宣告されながら、ホーキング博士は現在72歳。

 今も「万物の理論」を追及、研究に終わりがない・・・
 その情熱が生きる強さになっている。

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 講演会での質疑応答の中の一つに、「教授は”神を信じない”とおっしゃいました。人生哲学はなんですか?」

 この問いに・・・

「我々は1000億の銀河のうちの1つの端で、平均的な恒星の周りを回る小さな惑星上の霊長類の中の高度な種の1つでしかありません。文明の夜明け以来、人々はこの世の潜在的秩序について理解したがっています。宇宙の『境界条件』に関しては特別な何かがあるのでしょう。そして、さらに言えば境界などないのです。人類の努力にも境界はありません。我々は皆、違います。いかに不運な人生でも何かやれることはあり、成功できるのです。命ある限り、希望があります」

 ホーキング博士著「宇宙を語る」は全世界で1000万部以上売れたそうです。
 博士の理論を理解するのは難しく、たくさんの名言のすべてに共感できる訳ではないけれど、自ら実証されるその生きる強さ・・・ただただスゴイ方です。

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 ラストのシーン・・・
 どこから見てもホーキング博士にしか見えない。


 ***


 余談になりますが、現実ではご夫婦は離婚され、ホーキング博士は看護師さんと再婚し、奥様はそれまで家族を支えてくれた男性と再婚。

 それぞれ幸せな第二の生活を送っていると思われていたのに、博士は再婚相手に虐待をされていたとか・・・
 発覚して離婚したそうですが、元奥様とその夫になった方との良き友人関係は続いていると分かり、他人事ながら安堵しました。

 博士は「強い人!」と思っていたのですが、やはり苦悩された時代があり・・・
 それを乗り越えるには、周囲の支えはもちろんですが、本人の生きる目標に尽きるものはないと思いました。
 人工呼吸器を付けて言葉を失ってからの演技は、心を打たれました。

 レ・ミゼラブルで美声を聴かせてくれたけど、気になる俳優さんでもなかったのに、もう大ファンになってしまいました。
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