7番目のシャルル、聖女と亡霊の声

しんの(C.Clarté)

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【青年期編】終章

終章・後編 リッシュモンの書斎:父祖の罪

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 みずからの臨終シーンまで語り明かし、満足したのだろう。
 現在、書斎の主人は眠りについている。
 したがって、今回は公私のパートナーを自負する私ことアルテュール・ド・リッシュモンが代理となり、書斎の話し相手を務めよう。

 「勝利王の書斎」と呼ばれるこの空間では、フランスの慣用句を例に挙げて、進行中の物語の状況を説明するというルールが定められている。
 それでは、私からはこれを提示しよう。

"Les Péchés des Pères."

 直訳すると、父の罪。
 読者諸氏になじみのある例えを挙げると「親の因果が子に報いる」だろう。
 父祖の犯した悪業の報いが、罪のない子孫に災いをもたらすことを意味する。

 旧約聖書『出エジプト記』第二十章に記載されている先祖の罪——、すなわち「親世代から子世代に受け継がれる罪や不義」に関する逸話に由来する。

 この概念は「未解決の問題は世代から世代へと受け継がれる」ことを暗示しているが、新約聖書では「イエス・キリストは束縛を断ち切る。この呪いの連鎖を断ち切ることができる」と記されている。

 この呪いを断ち切る条件は、当事者以外の第三者、つまり私たちが「そうしてほしいと望む場合のみ」であるという。

 ならば、私はわが王の苦悩を断ち切ることを切に望む。





 今も昔も「シャルル七世が何を考えているかよくわからない」と言われるが、私はこれほどわかりやすい人物はいないと思う。

 わが王の根底にあるのはヒューマニティ(人間性、人情味、慈愛)であり、つねに思考や行動の動機になっている。

 人間の心の基盤でありながら、時には恥ずべきものだと軽んじられる「優しさ」。

 ジャンヌ・ラ・ピュセルは神の声を信じたが、わが王は人の心——いわば良心を信じていた。人間性ヒューマニティを大事にしているから、敵味方を問わず、相手の意思を尊重し、できる限り報いようとする。

 頑固さと相まって、難儀な性格の御方だ。
 しかし、優しさゆえの気難しさに私は惹かれた。
 病めるときも健やかなときも、あの方はいつも愛おしく、時においたわしい。

 最終的に、シャルル七世は勝利王と呼ばれるようになった。
 だが、王国に平和が訪れ、人々が幸福を享受し、恩人の名誉を回復したとしても、王自身が悲嘆から救われなければ真の幸福とはいえない。

 あの夜、王はかすかに震えながら、それでも圧倒的に強いまなざしで、私に「最後まで付き合え」と命じた。

 なんと水臭いことを仰せか! 命令などなくとも……、肉体的な交わりや精神的な絆がなくても、敬愛する王に従うのは当然の義務だ。百年戦争の終結、治世の終焉のみならず、私はそれ以降も未来永劫付き合うつもりでいる。
 王が同行を拒むなら、ばれないように隠れてついていこう。
 私の執着心をみくびってもらっては困る。

 わが王が、天国の門から締め出されるなら私も門をくぐらない。
 煉獄の炎に焼かれるなら、ともに堕ちよう。
 孤独と痛みを和らげる一助になれるなら本望だ。

 ……とはいえ、わが王は正しく幸福になるべきだ。
 聖女ジャンヌが導き、正義公リッシュモンが従った勝利王シャルル七世が愚かな暗君のはずがない。死してなお、王を束縛する苦悩と悲嘆を断ち切るために、私はあらゆる努力を惜しまない。

 王が幸福を見つけるまで、この物語は終わらない。
 願わくは、あの方の幸せの中に、私の居場所があればもっといい。

 最後まで付き合う。それが私の正義だ。






————————————
(※)『7番目のシャルル、聖女と亡霊の声【青年期編】』一応、完結。
この後はあとがきと番外編をいくつか。

(※)余談。本作におけるリッシュモンのキャラクター設定は、「モラハラ気味ストーカー」と「スパダリ」の境界線ギリギリをめざしています。

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