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【番外編】光芒を継ぐもの
光芒を継ぐもの(2) 〜After Jeanne編〜
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(※)2023年に限定近況ノートで公開したサイドストーリーです。
『7番目のシャルル』本編ではだいぶ先になりそうな(当時)、ジャンヌ・ダルク火刑後+リッシュモン復帰後のお話。本編とは別の世界線(パラレルワールド)と解釈してください。
(※)前回の続きですが別視点です。
————————————
============================
光芒を継ぐもの(2) ~7番目のシャルル、After Jeanne編~
============================
さんざん迷ったあげく、私が選んだ選択はまた新たな災いを招いた。
王の権力でも取り返せない過ちがいくつあっただろう——。
あの少女が火刑に処された後、長らく追放していた大元帥を呼び戻した。
問いに迷い、解を違え、災いの海へと堕ちていく。
神の愛を求めて、人の生を奪い、大地に血が流れ、灰が空に舞う。
人は誰もが死すべき運命を背負って、この世へ生まれ落ちる。
ままならない運命をひとときの愛で埋めようとして、誰かを抱き、あるいは誰かに抱かれたいと願うのだろうか。
戦いは長きに渡り、人は罪を犯し続ける。
火を騙り、風を穢し、地を屠り、水を腐しながら、
それでも、闇の中で星は煌めき、日が昇る。
人と時代は変わらず巡り続ける。
本来、人は愛を求めているはずなのに。
結局、ほとんどの人は死すべき運命を呪っている。
何かを奪い、あるいは奪われて、怒りと憎しみ、痛みと悲しみばかりが心を満たしていく。私とて例外ではない。
——やがて、貴方は……、自分を殺して、畏れを忘れるでしょう。
「そうかもしれない」
——それでも、先へ進んでください。やさしい王太子さま。
「その声は、ジャンヌ……?」
なつかしいあの少女の声が聞こえた気がした。
私は立ち止まり、人目も自分の立場も忘れて辺りを見回した。
追放から呼び戻したばかりの大元帥が、怪訝そうにこちらを見つめている。
動揺を悟られる前に、私は目の端ににじんだものを親指でぬぐった。
(……気のせいだ。私は「存在しない声」を聞く能力など持っていないのだから)
ふと気づくと、私が愛した人たちはみな、私の前からいなくなってしまった。
ならば、私がしてきたことは無駄だったのか?
もう、何もかもが手遅れなのか?
どれほど叫んでも、私の問いに応える「声」はない。
仕方なく、私は自らの心に問いかける。
痛みや悲しみ、怒りや憎しみがまったくないのかと問われたら、嘘になる。
それでも、私は災禍多きこの王国と向き合うことからもう逃げない。
「だから、もう少しだけ……」
神よ、私に勇気をください。
————————————
(※)サブタイトルの「光芒」とは、彗星のように尾を引いて見える一筋の光のこと。光の穂先。「芒」は、稲穂や麦穂の先っぽ。穂先。毛先。
この短編では、光芒=ジャンヌの死を意味しています。
(※)なお、Before Jeanne編に当たるのが、『7番目のシャルル』連載前に書いた短編『追放された王太子のひとりごと』です。当初は長編を連載する気はなかったし、タイトルが何度か変わってますが、現在は少年期編・番外編に置いてあります。
▼追放された王太子のひとりごと
https://www.alphapolis.co.jp/novel/394554938/595255779/episode/4244922
ジャンヌに出会う前と、ジャンヌの死後。
シャルル七世の内面は、このとき激変(=勝利王に覚醒)したと推測。
そのような意図をこめて、番外編のサブタイトルを「Before Jeanne編」と「After Jeanne編」にしています。
『7番目のシャルル』本編ではだいぶ先になりそうな(当時)、ジャンヌ・ダルク火刑後+リッシュモン復帰後のお話。本編とは別の世界線(パラレルワールド)と解釈してください。
(※)前回の続きですが別視点です。
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光芒を継ぐもの(2) ~7番目のシャルル、After Jeanne編~
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さんざん迷ったあげく、私が選んだ選択はまた新たな災いを招いた。
王の権力でも取り返せない過ちがいくつあっただろう——。
あの少女が火刑に処された後、長らく追放していた大元帥を呼び戻した。
問いに迷い、解を違え、災いの海へと堕ちていく。
神の愛を求めて、人の生を奪い、大地に血が流れ、灰が空に舞う。
人は誰もが死すべき運命を背負って、この世へ生まれ落ちる。
ままならない運命をひとときの愛で埋めようとして、誰かを抱き、あるいは誰かに抱かれたいと願うのだろうか。
戦いは長きに渡り、人は罪を犯し続ける。
火を騙り、風を穢し、地を屠り、水を腐しながら、
それでも、闇の中で星は煌めき、日が昇る。
人と時代は変わらず巡り続ける。
本来、人は愛を求めているはずなのに。
結局、ほとんどの人は死すべき運命を呪っている。
何かを奪い、あるいは奪われて、怒りと憎しみ、痛みと悲しみばかりが心を満たしていく。私とて例外ではない。
——やがて、貴方は……、自分を殺して、畏れを忘れるでしょう。
「そうかもしれない」
——それでも、先へ進んでください。やさしい王太子さま。
「その声は、ジャンヌ……?」
なつかしいあの少女の声が聞こえた気がした。
私は立ち止まり、人目も自分の立場も忘れて辺りを見回した。
追放から呼び戻したばかりの大元帥が、怪訝そうにこちらを見つめている。
動揺を悟られる前に、私は目の端ににじんだものを親指でぬぐった。
(……気のせいだ。私は「存在しない声」を聞く能力など持っていないのだから)
ふと気づくと、私が愛した人たちはみな、私の前からいなくなってしまった。
ならば、私がしてきたことは無駄だったのか?
もう、何もかもが手遅れなのか?
どれほど叫んでも、私の問いに応える「声」はない。
仕方なく、私は自らの心に問いかける。
痛みや悲しみ、怒りや憎しみがまったくないのかと問われたら、嘘になる。
それでも、私は災禍多きこの王国と向き合うことからもう逃げない。
「だから、もう少しだけ……」
神よ、私に勇気をください。
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(※)サブタイトルの「光芒」とは、彗星のように尾を引いて見える一筋の光のこと。光の穂先。「芒」は、稲穂や麦穂の先っぽ。穂先。毛先。
この短編では、光芒=ジャンヌの死を意味しています。
(※)なお、Before Jeanne編に当たるのが、『7番目のシャルル』連載前に書いた短編『追放された王太子のひとりごと』です。当初は長編を連載する気はなかったし、タイトルが何度か変わってますが、現在は少年期編・番外編に置いてあります。
▼追放された王太子のひとりごと
https://www.alphapolis.co.jp/novel/394554938/595255779/episode/4244922
ジャンヌに出会う前と、ジャンヌの死後。
シャルル七世の内面は、このとき激変(=勝利王に覚醒)したと推測。
そのような意図をこめて、番外編のサブタイトルを「Before Jeanne編」と「After Jeanne編」にしています。
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