7番目のシャルル、聖女と亡霊の声

しんの(C.Clarté)

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【番外編】歴史コラム・資料・作者の覚書など

【翻訳】シャルル七世の一般的な評価とアカデミックな評価が正反対の件

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(※)2021年12月19日付け歴史コラムを再掲。note原文では、英語と日本語訳文を併記しています。
▼【英日翻訳】シャルル七世の一般的な評価とアカデミックな評価が正反対の件
https://note.com/shinno3cc/n/n1c2c3185593c
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 以前、中国・上海在住のフォロワーさんがX(旧Twitter)で、シャルル七世の一般的な評価(俗説)とアカデミックな評価が正反対の件についてスピーチしているのを見つけました。

 誠実で理路整然とした内容で説得力があり、広く読まれて欲しいと思ったため、ご本人から許可をいただき、英語を日本語に翻訳して紹介することにしました。

 英仏の歴史、百年戦争、ジャンヌ・ダルク、シャルル七世に興味のある方はぜひご一読ください。





フランス革命は確かに暴力と恐怖に満ちていた。
しかし、現在までに、当初批判されていたルイ十四世、フィリップ二世、アンリ四世、そしてジャンヌは評判を回復し、高い評価を受けている。興味深いことだ。シャルル七世だけは、ポピュラー(大衆的)な見方とアカデミック(学術的)な見解が正反対だ。


シャルル七世は冷たい人物ではなかった。
ジャンヌ・ダルクが捕らえられたとき、彼は救助に動いた。
ジル・ド・レ元帥が処刑されたとき、彼はブルターニュ公に尋問した。
ローマ教皇カリストゥス三世は逃亡したジャック・クールを助けた。教皇はシャルル七世と良好な関係にあり、ジャンヌの名誉回復を申し出た。


シャルル七世は後に、この財産をクールの家族に返還した。
アランソン公の反乱の際、シャルル七世自身が裁判を審理したが、最終的にアランソン公に死刑宣告することはなかった。


なぜシャルル七世が冷酷といわれるのか理解できない。
当時、フランスの君主は家臣に対して多くの義務を負っていなかった。
騎士たちもまた、自分のための身代金を用意する必要があった。
彼が恩知らずだという非難は昔は存在せず、後世の人々が忘却した歴史だ。


当時、シャルル七世はノルマンディーで記念メダルを受け取っている。
ヴォルテールのエッセイ『諸国民と風俗の精神について(Essai sur les mœurs et l'esprit de snations)』でも、シャルル七世がジャンヌの名誉を回復させたことを指摘している。ヴォルテールはまた、ジル・ド・レ元帥が処刑されたのは、人々の残酷さと狂信のせいだと考えていた。


つまり、ヴォルテールの時代の人々は、シャルル七世の功績を当然知っていただけでなく、異端裁判は不当な危害を与えるための手段だったと信じていた。
ヴォルテールの著作は、現代フランスのアナール学派に影響を与えたという見方もある。


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(※)訳者注:アナール学派は、フランス現代歴史学の潮流のひとつ。旧来の歴史学が戦争などの政治的事件を中心とする「事件史」、高名な人物を軸とする「大人物史」の歴史記述に傾きやすかったことを教訓に、経済学・統計学・人類学・言語学などの知見を取り入れて社会史(社会全体の「集合記憶」)的な視点を加えている。
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多くの俗説(大衆的な見方)は、一般的な歴史作品から来ていると思う。
広まりやすい一方で、深く理解するための根拠がない。
そして、英語/イギリス人の思想のほうが常により広く浸透している。
現在、フランスのアカデミック(学術的)な見解はとても包括的(広範囲)だ。


近年、最も権威あるフランス史の見解のひとつが、アナール学派の著名な教授であるジョルジュ・デュビー(Georges Duby)によって編集された。
シャルル七世に関する章がひとつ、ジャンヌのことは1ページしかない。
シャルル七世については、フィリップ・コンタミーヌ(Philippe contamine)や他の学者も著作を発表している。


つまり、(シャルル七世への)批判がどこから来ているのか分からないし、それらが学者の間に存在する証拠も見つからなかった。
それらは何もない空中から生まれた俗説で、排除する必要がある。
よく考えないで俗説を引用する作品は、歴史的リテラシーに欠けていると思う。


最後に個人的な見解を。
シャルル七世の功績はすでに知られている。
同じ目標を持っているジャンヌとシャルル七世が、大衆の意見によって分断されるとは思えない。
ジャンヌがシャルルに復讐するのを手伝いたいと言う人がいる。
(ジャンヌにとっての)復讐とは、まず最初にイングランドを倒すことではないのか?笑


フランス革命を考えるだけでは、他の人物たちが名声を取り戻した理由を説明することはできない。おそらく、シャルル七世のイメージが現在のフランスに合わず、わかりやすいキャラクターではないからだろう。


実際、これらの資料を読んだ人は、当時のフランスを誰が守っていたのか知っているよね? これらの専門家たちを見てほしい。
長い間、人々の見方は間違っていたと思わないか?


Jonathan Sumption, Charles VII: Une vie, une politique, by Philippe Contamine, The English Historical Review, Volume 133, Issue 565, December 2018, Pages 1592–1594,

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