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2・聖女を辞めました
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そう言い放つと、今度はサディアスが「は?」と目を丸くする番となりました。
「なんで──」
「そもそも、殿下はどうして今まで聖女が一人しかいなかったのか、ご存知ですか?」
サディアスの言葉を遮って、私はそう問いかけます。
「特に理由はないだろう。どうせ、二人目の聖女を探すのが、面倒くさかっただけだ」
「いいえ、違います」
聖女は国中の“穢れ”を払う、大切なお仕事。
なのに、どうして今まで一人しかいなかったのか。
それは、女神様の神託で『聖女は一代に限り、一人ずつ』と決められていたからです。
過去に女神の神託を破って、二人目の聖女を雇った例もいくつかありました。
ですが、ことごとく裏目に出ました。
時には二人の聖女が権力争いを繰り広げ、機能不全に陥り。
時には聖女でも対処が出来ないような疫病が蔓延し、たくさんの人が死んだと聞いています。
人々は言いました。
女神の神託を破ったから、罰が当たったのだ──と。
この国において女神は絶対のもの。
事態を悪化させないためにも、二人目の──つまり、殿下の言うところの『第二の聖女』を、人々は長らく誕生させてこなかったわけです。
「教典を読み込んでいれば、分かることです。まさか、殿下は知らなかったのですか?」
「……っ! そ、そんなの、ただの偶然だろう。女神なんて偶像に騙されて、仕事を効率化しないなんてバカげている。僕はそんなものを信じない」
サディアスはむすっとして、そう答えました。
偶然……ですか。
確かに、過去に起こったこととはいえ、今回も同じだとは限りません。
第二の聖女を誕生させても、女神の怒りに触れない可能性もあります。
ですが、女神の神託を信じている者が多いのは事実。
女神の神託を破るような真似をしたら、必然と反発も大きくなります。
そうなると、王家の支持率も下がると思いますが……サディアスは、そんなことにも頭が回らないのでしょうか?
それに。
「私は……聖女としての仕事を、誇りに思っていました」
聖女のお仕事は大変なものでした。
不眠不休で働き続けるのは当たり前。
時には病気でまともに働かなくても、私は一生懸命、国のために尽くしました。
それなのに、新参者に『第一の聖女』を与えて、私が補佐に回る?
サディアスの愛する人を支える?
ここまでコケにされたら、私だって黙っていられません。
「あなたは、私のことをどう思っていたんですか?」
「どう……って。使い勝手のいい聖女だな、と。君は文句も言わず、働いてくれるからな。雇用側として、君ほど有り難い労働者はいないよ」
不可解そうな顔で、サディアスは告げました。
「…………」
その返答を聞いて、彼への気持ちがぷっつりと途切れました。
『もしかしたら、私はサディアスと相思相愛なのでは?』と、考えた時もありました。
ですが、全ては私の勘違い。
サディアスが優しくしてくれたのも、彼は私のことを都合のいい駒としか見ていなかったということでしょう。
そうでなければ、『第二の聖女になってくれ』なんて、バカげたことを言わないはずです。
どうして、私はこんな男のことを好きだったのでしょうか?
今となっては、理解できません。
「……とにかく、第二の聖女に関しては、私は断固反対です。即刻、考えをあらためてください」
「はあ!? 今更、なにを言っているんだ!」
サディアスが怒りで顔を染めます。
「優しくしていたら、つけ上がりやがって……っ! 君に拒否権はないんだ! 文句があるなら、この城から出ていけ!」
「そうですか。では、お言葉に甘えまして──」
私はサディアスに背を向けます。
「待て! どこに行く!?」
「出ていけと言われたから、あなたの前からいなくなろうと思っているだけですが?」
「君の仕事はどうなる! 仕事をほっぽり出すつもりか! 無断欠勤なんて許さないぞ!」
「その、第一の聖女であるエスメラルダさんにやってもらえばいいじゃないですか。それに、一週間くらいは私がいなくても、王宮が回るように仕事を終わらせています」
だから──。
「本日限りで、聖女を辞めさせていただきます。もっとも……あなたも、解雇《クビ》にするつもりで言ったと思いますが」
彼の制止の声にもあっさりと答えて、私は部屋から出ていきました。
「どうしましょう……我慢の限界だったとはいえ、少々軽率すぎたような気がします」
城から出ると、急に自分のしでかした行いが怖くなってきました。
とはいえ、もう後戻りは出来ません。
「サディアスに裏で手を回されて、まともな職に就けないかもしれませんし……そうでなくとも、この国にはあまりいい思い出はありません。セレスティアで生きていくのは、厳しいでしょうか?」
……となると、やっぱり。
「よし、決めました」
前々から考えてきたことを、私は実行に移すことにしました──。
「なんで──」
「そもそも、殿下はどうして今まで聖女が一人しかいなかったのか、ご存知ですか?」
サディアスの言葉を遮って、私はそう問いかけます。
「特に理由はないだろう。どうせ、二人目の聖女を探すのが、面倒くさかっただけだ」
「いいえ、違います」
聖女は国中の“穢れ”を払う、大切なお仕事。
なのに、どうして今まで一人しかいなかったのか。
それは、女神様の神託で『聖女は一代に限り、一人ずつ』と決められていたからです。
過去に女神の神託を破って、二人目の聖女を雇った例もいくつかありました。
ですが、ことごとく裏目に出ました。
時には二人の聖女が権力争いを繰り広げ、機能不全に陥り。
時には聖女でも対処が出来ないような疫病が蔓延し、たくさんの人が死んだと聞いています。
人々は言いました。
女神の神託を破ったから、罰が当たったのだ──と。
この国において女神は絶対のもの。
事態を悪化させないためにも、二人目の──つまり、殿下の言うところの『第二の聖女』を、人々は長らく誕生させてこなかったわけです。
「教典を読み込んでいれば、分かることです。まさか、殿下は知らなかったのですか?」
「……っ! そ、そんなの、ただの偶然だろう。女神なんて偶像に騙されて、仕事を効率化しないなんてバカげている。僕はそんなものを信じない」
サディアスはむすっとして、そう答えました。
偶然……ですか。
確かに、過去に起こったこととはいえ、今回も同じだとは限りません。
第二の聖女を誕生させても、女神の怒りに触れない可能性もあります。
ですが、女神の神託を信じている者が多いのは事実。
女神の神託を破るような真似をしたら、必然と反発も大きくなります。
そうなると、王家の支持率も下がると思いますが……サディアスは、そんなことにも頭が回らないのでしょうか?
それに。
「私は……聖女としての仕事を、誇りに思っていました」
聖女のお仕事は大変なものでした。
不眠不休で働き続けるのは当たり前。
時には病気でまともに働かなくても、私は一生懸命、国のために尽くしました。
それなのに、新参者に『第一の聖女』を与えて、私が補佐に回る?
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ここまでコケにされたら、私だって黙っていられません。
「あなたは、私のことをどう思っていたんですか?」
「どう……って。使い勝手のいい聖女だな、と。君は文句も言わず、働いてくれるからな。雇用側として、君ほど有り難い労働者はいないよ」
不可解そうな顔で、サディアスは告げました。
「…………」
その返答を聞いて、彼への気持ちがぷっつりと途切れました。
『もしかしたら、私はサディアスと相思相愛なのでは?』と、考えた時もありました。
ですが、全ては私の勘違い。
サディアスが優しくしてくれたのも、彼は私のことを都合のいい駒としか見ていなかったということでしょう。
そうでなければ、『第二の聖女になってくれ』なんて、バカげたことを言わないはずです。
どうして、私はこんな男のことを好きだったのでしょうか?
今となっては、理解できません。
「……とにかく、第二の聖女に関しては、私は断固反対です。即刻、考えをあらためてください」
「はあ!? 今更、なにを言っているんだ!」
サディアスが怒りで顔を染めます。
「優しくしていたら、つけ上がりやがって……っ! 君に拒否権はないんだ! 文句があるなら、この城から出ていけ!」
「そうですか。では、お言葉に甘えまして──」
私はサディアスに背を向けます。
「待て! どこに行く!?」
「出ていけと言われたから、あなたの前からいなくなろうと思っているだけですが?」
「君の仕事はどうなる! 仕事をほっぽり出すつもりか! 無断欠勤なんて許さないぞ!」
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だから──。
「本日限りで、聖女を辞めさせていただきます。もっとも……あなたも、解雇《クビ》にするつもりで言ったと思いますが」
彼の制止の声にもあっさりと答えて、私は部屋から出ていきました。
「どうしましょう……我慢の限界だったとはいえ、少々軽率すぎたような気がします」
城から出ると、急に自分のしでかした行いが怖くなってきました。
とはいえ、もう後戻りは出来ません。
「サディアスに裏で手を回されて、まともな職に就けないかもしれませんし……そうでなくとも、この国にはあまりいい思い出はありません。セレスティアで生きていくのは、厳しいでしょうか?」
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前々から考えてきたことを、私は実行に移すことにしました──。
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