1 / 78
1章
イントロ
しおりを挟む「ーーこんな筈じゃなかった。」
石巻 奏太は、とぼとぼ大学構内を歩きながら呟いた。
項垂れる奏太の背には、ギターケースがのし掛かり、右手には重厚なアルミケース、左手には四角い箱のようなものをぶら下げ、その大荷物が、奏太の醸し出す重々しい空気に拍車を掛けていた。
「なぜ彼女が出来ないんだ。」
まるでご都合主義な不満を漏らすのには、ひとつの目論見があったからだ。
『ロックバンドをやればモテる。』
誰が言い出したのかは分からない、その定番とも呼べるシナリオを、奏太は確かな真実と確信し、実行したのであった。
童貞卒業という夢を果たすためにーー
大学に入学後即、軽音楽サークルに入部し早一年。童貞卒業はおろか、彼女すら一向に出来る気配はない。
サークル内では、奏太を含む数人を残し、既にカップルの成立がほぼ完了している。
現に奏太がギターボーカルとして所属するバンドも、リードギターはキーボードと付き合い、ドラムはベースと付き合うという、奏太を除くメンバー全員がバンド内カップルだ。
それでも奏太は、バンド内でイチャ付くメンバー達を他所に、モテるため、もといバンドの為に必死に努力してきた。
それなのに、バンドはまさかの空中崩壊。
練習には自分以外誰もこない。
理由は言わずもがな、定番の痴話喧嘩。『バンド内恋愛は必ずバンドを崩壊に追い込む』という、これも誰が言い出したのかは分からないシナリオの一つ。
奏太はそのいざこざに巻き込まれ、もはやモテる為の唯一の手段であったバンドすらも失ってしまったーー
そういったわけで、奏太はバンドの道具を抱えて、一人孤独に歩いている。
ここまで不遇な扱いを受ける全ての要因は、奏太に一つの誤算があったからに他ならない。
『バンドをやればモテる。』
そこに重大な思い違いが存在した。
「結局顔が全てか……。」
奏太はここにきてようやく、その残酷なこの世の真理を悟った。奏太の見た目は中肉中背の、言わば普通。良くもなければ悪くもない。しかも周りのサークルメンバーは全員バンドをやっている。
そう、バンドをやっている事は軽音楽サークルでは当たり前。アドバンテージとならないのだ。
更に大学の出会いはサークルが全てと言っても過言ではない。その中では結局、見た目の良い奴がモテるのだ。
自分の方が上手いのに、誰よりもステージを湧かせられるのに、チヤホヤされるのはイケメンばかり。
結局、バンドはイケメンが更にモテる為の付加価値でしかなかったという現実に、奏太は絶望した。
『ドサッ』
奏太はおもむろに荷物を足元に投げ捨てた。
背中のギターケースを下ろし、中から乱暴にエレキギターを取り出す。
そしてそれを担ぐと、人目もはばからず掻き鳴らし始めた。
『チャカチャカチャンチャカ』
アンプに繋がれないエレキギターの乾いた音が、構内に哀しく鳴り響く。
「ーーちくしょう……やってやる……いつかロックスターになって、こんな世界ぶっ壊してやる……! そんでもって世界中の女を手籠めにしてやるううううう!!」
そう叫ぶと、頭上から光が差し込み、眩い光と共に奏太の体は音もなく消え去ったーー
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら
リヒト
ファンタジー
現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。
そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。
その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。
お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。
ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。
お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる