異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

文字の大きさ
5 / 78
1章

1B-嘲笑

しおりを挟む
 なんだ。この世界にもギターはあるのか。なら話は早いと思っているとーー

 周りの群衆がクスクスと笑みを浮かべている。

 なんだ? こいつらは何がおかしいんだ?

「一体どのような才能を見せてくれるかと思えば、低俗なギターなどとは。」

「農夫や冒険者が気休めに興じるものを、崇高な芸術と同等に扱える筈もない。」

「いっそ農夫になった方がその者の身の丈に合っているのでは?」

 皆が一様に嘲笑の言葉を投げる。

 全く理解が追い付かない。
 何故ギターがここまで馬鹿にされなければならないのか。
 ギターと言えばバンドの花形、ロックスターは誰もが憧れる存在ではないのか?

 奏太は圧倒的な価値観の違いを突き付けられたショックと、自分が信じてきたものを嘲笑された事への怒りに言葉も出ず、ただ呆然と立ち尽くした。

「まあよい。ミューサ神の選定に楽器の優劣はない。ゆえに時折その者のように、我らの意向にそぐわぬ者も召喚される。
 人には向き不向きもあるゆえ、他の道に進むもよかろう。どれ、冒険者の適性があるか、そなたの魔力を見てやろう。」

 国王は群衆をなだめるように場を鎮めると、演奏を再開させるでもなく、別の話に舵を切り替え始めた。


「……ざけるな。」


「ん? 何か申したかな?」


「ふざけるな! 俺はギターを信じてここまで必死に打ち込んで来たんだ! 
 それを低俗だなんだと好き勝手言いやがって!」


 奏太が突然上げた怒声に、場は騒然と静まり返る。

「それについてはこちらの無礼を詫びよう。皆の者も我らの常識で召喚者を誹謗するでない。余も、そなたの信ずるものを卑下するつもりは毛頭ない。
 しかしながら、それは我が国の意向にそぐわぬのもまた事実。ゆえに別の道を示した訳であるが。」

 国王は粛々と群衆の非を諭し、自身の心中を語った。
 その姿には国王の聡明な見識が垣間見えるが、常に沈着と語る様子はやや冷酷にも映る。
 しかし、国王のなだめにも奏太の怒りは収まらなかった。

「勝手に才能を買って一方的に召喚しておいて、自分達が望む人間じゃなければ不良品扱いで、元の世界にも戻せないだとか、そんな無茶苦茶な話があるかよ!」

「確かにそなたの言い分は最もであるが、そもそもそなたらが選ばれたのにはもう一つ大きな要因がある。」

 なんだよもう一つの要因って。音楽の才能を買われて召喚されたんじゃなかったのかよ。

「ミューサ神によって選ばれ召喚された者は、皆共通して元居た世界に強い不満を抱いておる。その不満に呼応し、ミューサ神の慈悲により、我々の世界へと導かれるのだ。
 そなたも元の世界には何か強い不満を感じていたのではあるまいか?」

 ドキリとした。
 確かに奏太はどれだけバンドを頑張っても、見た目でモテない、もとい評価されない現状に不平を漏らしていた。だがーー

「だ、だからと言って勝手に連れてこられて納得出来るかよ!」


「それには我々にもやむにやまれぬ事情があるのだ。理解してくれとは言わぬ。
 ただ我々もそなたらを一方的に召喚したからには、その才能を開花し、我が国に大きな利益をもたらせば、それ相応の待遇を用意する。
 そして本来はそれが叶うであろう人物を、ミューサ神の選定によって召喚しておるのだ。
 勿論そなたのように、たとえ我々の望みに叶わぬ者だったとしても、その者がここで生きるに足るだけの道を、我々は指し示すつもりである。」

 それが農夫や冒険者ってことか。
 要するに俺は滅多に出ないハズレクジだったわけだ。
 滅多にハズレは出ないから、滅多に不満が出るような状況にもならない。
 そうやってこの国は正常に回り、弾かれた者が他の道を歩む。
 どこの世界でも同じだ。

 結局世界が変わろうが、奏太の置かれる状況は何も変わらなかった。
 世界が変わっても何も変わらなかった男が、一体どうやって音楽で世界を変えるというのか。

 全く、泣けてくるぜ。

「一つよろしいでござるか?」

 奏太が打ちのめされているのを他所に、オタクが空気を読まず手を挙げたーー
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

処理中です...