異世界に奏でる狂騒曲(ロックンロール)~ランク0だけどロックの力で最強パーティに~

伊太利 千重治

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1章

2B-仲間

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 城を出た後、奏太達は街の冒険者ギルドを目指して歩いていた。

「ーーで、その時のシド様のパフォーマンスが凄いんですよ!」

「へ、へぇ~……。」

 あれから奏太は、響子からひたすらセッ◯ス・ピストルズの話を聞かされていた。

「響子さんは、本当にシド・ヴ◯シャスが好きなんですね。」

「シド・ヴ◯シャス"様"です。(殺しますよ?)」

 うっ、また危険な言葉が聞こえた気がするが、気のせい気のせい。
 それにしても、ここまでシド・ヴ◯シャスに陶酔しているなら、もし本物を見たら即倒してしまうのでは……?

 まぁそれは無理な話ではあるが。
 シド・ヴ◯シャスは1979年に21歳という若さで亡くなっている。
 ゆえにこの世界に転生されているなんてこともない筈だし……。
 ーー待てよ?
 もし俺がシド・ヴ◯シャスの霊魂を精霊魔法で呼び寄せられたらーー

「あの~響子さん、も、もしシド・ヴ◯シャス"様"が目の前に現れたら、どうします?」

「それは勿論、この身の全てを捧げます!そしてシド様と一つに……ウヒヒ……。」

 響子は怪しげな顔を浮かべながら、何やら妄想の世界に入り込んでいる。

 イケる!これはイケるぞ!
 精霊魔法を鍛練して、俺がシド・ヴ◯シャスの見た目になれば、響子さんとセッ◯ス&ピストンズ!
 童貞卒業の大チャンス!

 かなり人の道を外れた思い付きだが、自身の閃きに奏太は胸を昂らせた。
 そうこうしているうちに、目の前には市街地が現れたーー


「ーーここがヴィシュガルド王国の城下町か。」

 見ると、多くの店が立ち並び、行き交う人で賑わっている。
 通りは見たこともない動物が馬車を曳き、店では亜人の店主が客引きを行っている。
 見慣れぬ光景、人々に、奏太達は異世界に来たことを改めて実感した。

「おお!猫耳娘でござる!」

 金重が亜人の女性を見付けると、制止する間もなく飛んでいき、女性の周りをぐるぐると囲った。

「ウニャ!? 急になんだニャ!?」

 どうやら猫耳の亜人は言葉も猫っぽく話すようだ。
 なんて呑気に見ている場合じゃない。金重を止めないと。

「落ち着け金重!その人に失礼だろ!
 すみません。俺達先程来たばかりで、目新しいものばかりでして……。」

「ニャ? 君達はひょっとして異世界人なのかニャ?」

「そうですけど……。」

 この世界で異世界人は割と普通に認識されているようだ。それもそうか。異世界人の多くが音楽家として活躍しているみたいだし。

「ニャニャ! ってことは君達は音楽家なのかニャ!?」
 猫耳娘は突然ハイテンションになり、側にいた金重の手を両手で掴んだ。

「おお!? 本物の猫耳娘に手を握ってもらえるなんて、小生感激でござる!」

 自称自分の嫁と手を触れた喜びに、金重がうち震える。

「あ、でも俺達は冒険者になるんだけどーー」

「にゃーんだ。落ちこぼれに興味はないニャ。」

 奏太達が音楽家でない事が分かると、猫耳娘は勢いよく手を振り払い、金重がグルグルと回る。
 そして『パンパン』と手を払うと、早々と奏太達の前から立ち去った。

「お、落ちこぼれとは酷い言い草だな……。
 音楽家とそうじゃない者で、ここまで扱いに差が生まれるとは……。金重もあまり気にするなよ。」

 奏太が倒れる金重に気を使うとーー


「ーーやったでござる!小生の夢が叶ったでござる!
 これで思い残すことなく余生を送れるでござる!」

 金重は落ち込むどころか、歓喜に湧いていた。

「ポ、ポジティブだな……。
 そういえば金重は城でも周りを気にしていないみたいだったけど、ムカついたりしないのか?」

 金重のあまりにも周囲に無関心な様子に疑問を抱き、金重の胸の内を聞いてみる。

「ふーむ……。小生は他人の事はよく分からんでござる。
 小生は猫耳娘のいる世界にいられて、大好きな楽器が弾ければそれで満足でござるよ。」

 実にアッサリした性格だ。それだけ周囲を気にしない性格だからこそ、あれだけギターに集中出来るのかもしれない。
 しかもいざ演奏となると、しっかり周りの音に合わせる。
 これは中々の才能かもしれない。

「じゃあ金重も俺達とバンドをやることに問題はないか?」

「大丈夫でござるよ。
 小生は奏太殿に付いていくでござる。」

 一見なんでもない、金重の軽い言葉に、奏太の心は妙に熱くなった。
 思えば、日本にいた頃はバンドメンバーの誰も奏太に付いてこようとしなかった。
 各々が好き勝手に演奏し、自分達は楽しくイチャ付くばかりで、奏太の事など眼中にもなかった。
 だから初めてこんな風に、しかも出会って間もないにも関わらず、金重が自分に付いていくと言ってくれた事に、嬉しさが込み上げた。

 奏太は照れる気持ちを隠すように視線を逸らしたーー
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