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1章
9間奏-謝罪
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その顔は要塞に居たときの人を威嚇するような表情とは事なり、まるで憑き物が取れたように爽やかなエルフの顔だった。
「俺は皆を守りたくて村を出た。それなのに俺は魔族の残り香にやられ、身も心も穢れて皆を苦しめてしまった……。
弱かったのは皆ではなく、俺の心だった……! 本当にすまない!」
他のダークエルフ(だったと思われる者)達も、ラドウィグに続いて頭を下げた。
その真摯な姿に、エルフ(だったと思われる者)達は、なんと返事をすればいいのか分からず、お互いに気まずい顔で見合わせた。
無理もない。長い間決別し、ラドウィグには殺戮の意図はなかったにせよ、先ほどまでは容赦ない攻撃を受け、村は壊滅的に破壊されてしまったのだ。
いくら両者が同じ姿になり改心したからといって、そう都合よく許せるものではないだろう。
エルフ達が静まり返る中、パウルが代表するように皆の前に出た。
「頭を上げるんだ、ラドウィグ」
パウルが静かに語り掛けると、ラドウィグが申し訳なさそうに顔を上げた。
「誰よりも仲間想いなお前があのような姿になってしまったのは、全て私がお前の父親として、そしてエルフの長として不甲斐なかったせいだ。
私は平和的な解決法ばかりを選んで、種族を引き連れてここまで逃げ延びてきたが、それは死んだ仲間達の弔いや、来る脅威への備えとしては十分なものではなかっただろう。
残された我々が平和な道を歩むためにはそれも致し方ないと思っていたが、今日お前達のお陰で、強く立ち向かわねばまたやがて別の者達によって平穏を脅かされるという事に気付かされた。
お前は見た目や口ぶりは荒々しくなり、かつての仲間を汚く罵るようになっていたが、それでいていつもエルフ族の未来を憂いでいた。
お前は私達を、エルフを本当に滅ぼすつもりはなかったのだろう?」
「そ、それは……」
自分の父親に全てを見透かされていたことに、ラドウィグは動揺する。
それは他のエルフ達も同じだった。
心を闇に犯されたラドウィグは、自分に従わない者達を殺すつもりだと誰もが考えていた。
現にラドウィグはそのような発言を繰り返していたが、たとえ闇に蝕まれようとも、内に宿るエルフの誇りは失っていなかったのだ。
「だが俺は皆が必死に守ろうとしていた村を壊してしまった。それは許されることじゃない……」
ラドウィグはなおも自分が犯してしまった罪を責める。だがーー
「村はまた造り直せばいいんですよ、ラドウィグ。
それよりも、あなた達がまた優しかった頃に戻ってくれて本当によかったわ」
「お袋……」
パイスの優しい言葉に、ラドウィグは目に涙を浮かべた。
「あら、お袋だなんて……その口調はあんまり戻ってないようね。
でもそうね……なんだか私も随分変わったみたい。
まるで幼い頃に戻った気分だわ!
イタズラばっかりしてお父様とお母様を困らせていた頃みたいに!」
そういうと、エルフ達が自分の体を見回した。
先ほどまでの騒ぎで髪や服は乱れ、皆泥だらけになっている。
そしてなにより肌の色がエルフとダークエルフの中間になっただけでなく、心までもが純粋な心に程よいワイルドさを兼ね備え、皆ヤンチャ小僧のようなはにかんだ笑顔を浮かべている。
「ーー兄貴!」
そしてセイビアがラドウィグに声をかける。
「あ、兄貴!?」
今まで呼ばれたことのない呼び名に、ラドウィグは驚いた表情を浮かべる。
「私は兄貴が村をこんな風にしたこと、絶対許さないからな!」
セイビアの怒りに、ラドウィグがシュンと沈む。
「でも、確かにこの村の守りは脆弱だった。このままでは兄貴達が壊さずとも、また他の種族に襲われていたかもしれない。
だからーー
皆であの要塞に移り住もう!」
「「「えええ!?」」」
その場にいる全員が、セイビアの提案に驚愕する。
「い、いやちょっと待てセイビア。確かに俺はお前達をあの要塞に率いれようとしていたが、あそこにいたらまた元のダークエルフに逆戻りだ。
俺はもうあの時の俺には戻りたくないし、お前達を俺と同じようにはしたくない。」
「確かにあのままだと日の光もなく、魔素に毒されてしまうだろう。
だからあの屋根を壊して、あそこに母なる大樹の種を植えよう!」
「「「えええ!?」」」
セイビアの口から次々と突拍子もない提案が舞い込み、エルフ達はザワザワと慌てふためく。
「セイビア、気は確かか? 確かに母なる大樹があればあそこの魔素も浄化してくれるだろうが、あれは魔族達に燃やされてしまっただろう。
そのせいで俺達エルフはドラゴンなんぞに棲み家を追われる程に弱体化してしまったんだ。」
「ああ、分かってる。だが私は兄貴達が村を去ってから、再びエルフの森を再建しようと、かつての森の跡で必死に探し続けたんだ。
確かに魔族達の襲撃で焼かれてしまったが、必ず見つかると信じて。
そして見つけたんだ! 母なる大樹の種を!」
そう言って、セイビアは胸に下げる首飾りの中から、一つの種を取り出した。
「なんと……これを一人で見つけたのか……」
「ああ、セイビア。あなたは本当に素晴らしい娘だわ……」
エルフ達がその小さな種を見て、感激の涙を流した。
「今は砂嵐の吹き荒れる荒野だが、エルフの魔力によって育てれば、母なる大樹の種子は必ず芽生える。
そして大樹は新たな森を作る。
今度は兄貴達の造った要塞の中で、強く大きなエルフの森を育むんだ!」
セイビアが高々と宣言すると、灰色のエルフ達は歓喜に湧いた。
「だからその時までしっかり森を育てるんだ、兄貴!
もしそれが叶ったら、兄貴のことを許してやる!」
「ああ、約束するよ……セイビア。」
2人の兄弟が固く握手を交わすと、場は盛大な拍手と歓声に包まれた。
エルフとダークエルフは共に灰色のエルフという新たな種族として、今ここに和解が成立したーー
「俺は皆を守りたくて村を出た。それなのに俺は魔族の残り香にやられ、身も心も穢れて皆を苦しめてしまった……。
弱かったのは皆ではなく、俺の心だった……! 本当にすまない!」
他のダークエルフ(だったと思われる者)達も、ラドウィグに続いて頭を下げた。
その真摯な姿に、エルフ(だったと思われる者)達は、なんと返事をすればいいのか分からず、お互いに気まずい顔で見合わせた。
無理もない。長い間決別し、ラドウィグには殺戮の意図はなかったにせよ、先ほどまでは容赦ない攻撃を受け、村は壊滅的に破壊されてしまったのだ。
いくら両者が同じ姿になり改心したからといって、そう都合よく許せるものではないだろう。
エルフ達が静まり返る中、パウルが代表するように皆の前に出た。
「頭を上げるんだ、ラドウィグ」
パウルが静かに語り掛けると、ラドウィグが申し訳なさそうに顔を上げた。
「誰よりも仲間想いなお前があのような姿になってしまったのは、全て私がお前の父親として、そしてエルフの長として不甲斐なかったせいだ。
私は平和的な解決法ばかりを選んで、種族を引き連れてここまで逃げ延びてきたが、それは死んだ仲間達の弔いや、来る脅威への備えとしては十分なものではなかっただろう。
残された我々が平和な道を歩むためにはそれも致し方ないと思っていたが、今日お前達のお陰で、強く立ち向かわねばまたやがて別の者達によって平穏を脅かされるという事に気付かされた。
お前は見た目や口ぶりは荒々しくなり、かつての仲間を汚く罵るようになっていたが、それでいていつもエルフ族の未来を憂いでいた。
お前は私達を、エルフを本当に滅ぼすつもりはなかったのだろう?」
「そ、それは……」
自分の父親に全てを見透かされていたことに、ラドウィグは動揺する。
それは他のエルフ達も同じだった。
心を闇に犯されたラドウィグは、自分に従わない者達を殺すつもりだと誰もが考えていた。
現にラドウィグはそのような発言を繰り返していたが、たとえ闇に蝕まれようとも、内に宿るエルフの誇りは失っていなかったのだ。
「だが俺は皆が必死に守ろうとしていた村を壊してしまった。それは許されることじゃない……」
ラドウィグはなおも自分が犯してしまった罪を責める。だがーー
「村はまた造り直せばいいんですよ、ラドウィグ。
それよりも、あなた達がまた優しかった頃に戻ってくれて本当によかったわ」
「お袋……」
パイスの優しい言葉に、ラドウィグは目に涙を浮かべた。
「あら、お袋だなんて……その口調はあんまり戻ってないようね。
でもそうね……なんだか私も随分変わったみたい。
まるで幼い頃に戻った気分だわ!
イタズラばっかりしてお父様とお母様を困らせていた頃みたいに!」
そういうと、エルフ達が自分の体を見回した。
先ほどまでの騒ぎで髪や服は乱れ、皆泥だらけになっている。
そしてなにより肌の色がエルフとダークエルフの中間になっただけでなく、心までもが純粋な心に程よいワイルドさを兼ね備え、皆ヤンチャ小僧のようなはにかんだ笑顔を浮かべている。
「ーー兄貴!」
そしてセイビアがラドウィグに声をかける。
「あ、兄貴!?」
今まで呼ばれたことのない呼び名に、ラドウィグは驚いた表情を浮かべる。
「私は兄貴が村をこんな風にしたこと、絶対許さないからな!」
セイビアの怒りに、ラドウィグがシュンと沈む。
「でも、確かにこの村の守りは脆弱だった。このままでは兄貴達が壊さずとも、また他の種族に襲われていたかもしれない。
だからーー
皆であの要塞に移り住もう!」
「「「えええ!?」」」
その場にいる全員が、セイビアの提案に驚愕する。
「い、いやちょっと待てセイビア。確かに俺はお前達をあの要塞に率いれようとしていたが、あそこにいたらまた元のダークエルフに逆戻りだ。
俺はもうあの時の俺には戻りたくないし、お前達を俺と同じようにはしたくない。」
「確かにあのままだと日の光もなく、魔素に毒されてしまうだろう。
だからあの屋根を壊して、あそこに母なる大樹の種を植えよう!」
「「「えええ!?」」」
セイビアの口から次々と突拍子もない提案が舞い込み、エルフ達はザワザワと慌てふためく。
「セイビア、気は確かか? 確かに母なる大樹があればあそこの魔素も浄化してくれるだろうが、あれは魔族達に燃やされてしまっただろう。
そのせいで俺達エルフはドラゴンなんぞに棲み家を追われる程に弱体化してしまったんだ。」
「ああ、分かってる。だが私は兄貴達が村を去ってから、再びエルフの森を再建しようと、かつての森の跡で必死に探し続けたんだ。
確かに魔族達の襲撃で焼かれてしまったが、必ず見つかると信じて。
そして見つけたんだ! 母なる大樹の種を!」
そう言って、セイビアは胸に下げる首飾りの中から、一つの種を取り出した。
「なんと……これを一人で見つけたのか……」
「ああ、セイビア。あなたは本当に素晴らしい娘だわ……」
エルフ達がその小さな種を見て、感激の涙を流した。
「今は砂嵐の吹き荒れる荒野だが、エルフの魔力によって育てれば、母なる大樹の種子は必ず芽生える。
そして大樹は新たな森を作る。
今度は兄貴達の造った要塞の中で、強く大きなエルフの森を育むんだ!」
セイビアが高々と宣言すると、灰色のエルフ達は歓喜に湧いた。
「だからその時までしっかり森を育てるんだ、兄貴!
もしそれが叶ったら、兄貴のことを許してやる!」
「ああ、約束するよ……セイビア。」
2人の兄弟が固く握手を交わすと、場は盛大な拍手と歓声に包まれた。
エルフとダークエルフは共に灰色のエルフという新たな種族として、今ここに和解が成立したーー
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