生まれ変わったらしんでました

かんた

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1章 ゾンビになった日

情報多過ぎない?

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『「ゾンビ」』


『この世界において、アンデッド系の最下位モンスターのひとつ』
『放置された人や動物・モンスターなどの遺体に淀んだ魔力が溜まり、人々の負の念や未だ浮かばれぬ魂などが定着する事により発生する動く死体の事を指す』

『定着した霊体は自身の死んだ肉体に引っ張られるせいか、知性に乏しい個体が大半を占める。生に対する執着によってか、それらの個体は総じて動くものに襲い掛かり噛みつく習性がある』

『浄化や火葬など、正しい処理をせずに埋葬すると、数週間から数ヶ月にかけて確率で発生する。そのため、魔術などによって防腐処理が施されてないゾンビの身体は腐りかけが多い』

『なお、衛生的な意味で脅威とされ、見敵必殺が一般的な対処となる』









『以上がこの世界においてゾンビという存在の概要になります』


 スキル【天の声】は頼んでもいないのに彼に情報を送ってくる。情報は声ではなく知識として瞬時にインストールされるようだった。会話も一瞬、この説明も僅か0.5秒。速読王も真っ青である。

 しかし、そんなものを送られても、血が巡らない彼の頭に理解能力はない。



(えーと、つまり?)
『…ハァ、「情報開示/自分」と念じて見てください』
(今あからさまにため息ついたな)


 システムちっくなスキル【天の声】のまさかの人間味に驚きつつ、彼が言われた通りに「情報開示/自分」と念じると、先程と同様に情報が送られて来る。





 名:ケロック・クロムハーツ(享年10)
 種族:ゾンビ(劣等種)

●称号
【フレッシュイモータル】【女神の死徒】【転生者】

●スキル
【鈍感】【天の声】【触覚】【平衡感覚】【深部感覚】【視覚】【聴覚】






(享年て。劣等種て。死徒て。鈍感て)

 突っ込みどころ満載の情報に彼は困惑を抑えきれなかった。さらに続けて声は言う


『年齢表記に関しては実年齢に変換する事は可能です。後ほどお試しください。
 なお、魂が定着したばかりですとゾンビは例外なく劣等種になります。戦闘により階位が上がっていくので是非頑張ってください。
【女神の死徒】という称号名は女神様のヒドいネーミングによるものです。』

(全部応えてくれてありがとう。あと、君って何気に辛辣だよね)

『光栄です。
 次に情報の一部をピックアップし、そこから情報開示をしてみてください』

 感謝を受け取ったのか褒め言葉として受け取ったのか。ともあれ【天の声】に言われた通り念じてみる。
 先程の疑問の中で回答がなかったスキル【鈍感】に「情報開示」を試す。



【鈍感】
 取得者の先天的な特性が技能へと変化したパッシブスキル。
 危機感が弱くなり、物事に動じなくなる。ON/OFFが可能。
 OFFにしたところで、元からの性格は治しようがない。



(良いモンなのかよくわからない上にさりげなくディスられとる)
『あなたは前世との繋がりが強いので、魂自体はある程度成熟してます。その中で最もアクが強いであろう特性がスキルになっています。ブハッ』
(吹き出すなよスキルの癖に・・・ん、前世?)


 ふと、自分の称号欄にあった【転生者】に「情報開示」をかけてみた。



【転生者】
 輪廻の輪を越えて異なる世界に生まれた者に与えられる称号。
 記憶は受け継がれ、成長率に補正がかかる。



(…ほとんど記憶に無いんですケド?)


 彼の思い出には「旅行先で打たせてもらった自分のうどんがめちゃくちゃ美味しかった」記憶しか残されていなかった。

『テキトーを絵に描いたような女神様なので何らかのミスはあると思ってました』
(確信犯じゃないですかやーだー)
『あと、転生先の時間軸が11年ほど遅れてしまい、たまたま死にたての身体に魂が入ってしまったのも女神様のミスです』
(よし、当面の目標は神殺しで。この身体の持ち主である少年のカタキウチも込みで)
『頑張ってください応援しております』

 直接でも間接でも関わって来た人にここまで嫌われる女神様、ある意味才能である。









 さて、主人公確定なケロック・クロムハーツが超高速脳内会議でぼけーっとしてる間にも、目の前にいた町医者のルシルは診察を続けていた。


 いや、診察自体は既に終わっているのだ。

 目の前の存在はゾンビ、生きとし生けるもの全てにおいて害悪なる存在。本能のまま動くものに襲いかかり、腐肉と疫病を撒き散らす。

 だからこそ、この場では慎重な判断が必要になる。
 死んでいるとは言え、少年の目には知性のようなものが宿っているのをルシルは直感した。今はボーっとルシルの首あたりを見ているようだが、少なくとも先程の目は生者を追うゾンビのものとは異なる、周囲の景色を見て学習する動きだった。
 まあ実際は、手に入ったばかりの視覚の眩しさに右往左往してただけだったが。

 現在の季節は冬、そもそもの死因が病原菌によるものではなく、死後も数時間しか経過していないため、今のところ衛生的な問題はクリアしているように思える。
 しかし相手はゾンビ、この世のあらゆる生物にとって害悪そのものである。いずれ腐肉となる身体は毒そのもの。生かすも殺すも良いことはない。

 それゆえに、まず話の通じる相手かどうかをルシルは見極める必要があった。
 垣間見せる知性の眼、それに賭けてコミュニケーションをとる。必要以上の混乱を避けるために人(バカ親)払いは済ませてあった。




「…調子はどうかな、ケロックくん」




『お呼びみたいですよ、「摂理」』
(だから「り」攻めはやめてって・・・・・ん?)

 そんなルシルのハラハラドキドキなど露知らず、ケロックは「脳内しりとり」で【天の声】と戦っていた。脳の血が止まって機能していないのを魔力で無理矢理動かしてるのに対し、使用者をサポートする存在であるスキルと戦って勝てるわけがない。まあそれ以前に、スキルとしりとりが成立すること自体この世界では異常なのだが。

 そんなこんなでケロックの目は初めてルシルに焦点が合う。
 ボサボサした白髪から緑の巻きヅノが生えているので、自然とヤギか羊が連想される。いずれにしろ、人間でないのは明らかだった。瞳はツノと同じく緑色で、ねむそうなまぶたで半分隠れている。
 やや幼い外見ながらも白衣を着ているので、もしかしたら自分を診てくれるお医者さんかもしれないなーと考えつつも、先程、自身の母親らしき長い金髪の女性と話しているのをなんとなく横で聞いて、母親とは親しい仲なのだと、ケロックは大体のあたりをつけていた。


『どうしました? まだいくらでも反撃のしようはあるでしょう? 「理」「料理」「倫理」「理科室の鉛筆削り」などでやり返せば良いじゃないですか』
(今しりとりどころじゃないのわかって言ってるよね。あと最後のは絶対無い)
『…なるほど、確かにそれどころじゃなさそうです。目の前の人物は確かに医師ですが、魔力や戦闘力も高いと思われます』
(…なるほど! つまり?)



『……………………少しは自分で考えてください。もうお忘れですか? この世界でゾンビは最優先討伐対象になります』

(あっ)



 高速化された意識の外、この間わずか3秒。

 ヤヴァい殺されるいやもう死んでるとケロックが思ったのも束の間、動揺を見て取ったルシルは右手の杖をケロックに向けた。









 他称号とスキルの説明

●称号

【フレッシュイモータル】
 死んですぐアンデッド化した者に与えられる称号。
 自己再生能力に補正がかかり、腐食に対して無効になる。

【女神の死徒】
 使徒として遣わしたつもりがすでに死んでいたため、悩んだ末に女神がテキトーにつけた称号。
 スキル【天の声】を得る


●スキル

【天の声】
 女神がつけたサポートスキル。なぜか自律思考し、学習しながら所持者を支えていく。

【触覚】
 死体ゆえに本来得られない能力がパッシブスキルとして発生。
 皮膚で触れたときに反応する。ON/OFFが可能。 状態⇒ほぼ完璧

【平衡感覚】
 三半規管により平衡に対して反応する。
 状態⇒まっすぐ歩けない

【深部感覚】
 筋・腱・関節などで重量や抵抗に反応する。
 状態⇒ほぼ完璧

【視覚】
 視神経により光に反応する。
 状態⇒ピント合わせるのに時間がかかる

【聴覚】
 鼓膜の振動に反応する。
 状態⇒ほぼ完璧だが、気を抜くとON/OFFが安定しない



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