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2章 命にふさわしい
あれから3年が経ち
しおりを挟む『ゾンビが出たぞーっ!』
まだ昼間だというのに、なんとも物騒な叫びが聞こえてくる。
月日は流れ、ケロックがゾンビになってから、すでに三年が経過していた。
いつもケロックの後ろにくっついていたフニラン・クロムハーツは、11才の立派な乙女になっていた。
茶色の長い髪をストレートに伸ばし、同性同年代の子たちよりも少し背が高い彼女は、年齢よりも少し大人っぽく見られていた。
そんな彼女がカゴ編みに使うワラを集める手を止めて、声がしたであろう方向をキッと睨む。
もう一年以上前から、領地の森の外れでそんな叫びが聞こえてくるのだ。原因がフニランの「兄」であることは、領地の誰もが知っていることだった。
「・・・・・お兄ちゃん」
覚悟を決めた顔で槍を握る。練習用のもので穂先まで木製だが、狼よけにも使われているので先端は鋭く殺傷性も低くはない。
しかし、今はそれを向けることにためらいはない。
なぜこんなことになってしまったのか。兄がゾンビになって誰も近寄らない森の中に潜み、このような事態に陥ったのは、妹である自分の責任であると、フニランは思う。いつもひっついていたのに、止めることができなかった。そのことを思うと、今でも胸が痛む。
そうして一年以上が経つ今も、この戦いに決着がついたことはない。
だから今度こそ、本当の意味で兄を救う為に、少女は走る。
「おいクラァあああああ!!!お兄ちゃんをいじめんぢゃねぇええええ!!!!!」
「出たぞ! 妹ゾンビだ!!!」
「石投げろ石!!!」
(はいっ、『ガキ大将に踏まれる兄を救う妹』の図)
『情けないことこの上ないですね』
(いつものことなのに未だ辛辣なコメント、恐れ入ります)
ちなみにケロックは13才になっていた。
もともと背が低い上に成長まで止まり、ついには背がぐーんと伸びた妹にまで抜かされた。さらに顔色の悪さも無口さも悪化し、周囲を見るその目はまるで死人。その不気味さのせいで、他の子からは忌み嫌われていた。
その様子をくっついて見ていたフニランは憤慨やるせない面持ちで、何を思ったのか急に槍の訓練を始め、たまにこうやって駆けつけてくるようになるまでたくましくなってしまった。
(妹の目覚ましい成長に、我輩感動)
『そう思うのならあなたも頑張ってください』
(こうやって妹の勇姿を眺めていたい。どうせ痛覚も感じないし)
『クズ兄極まってますね』
「ウワァアあこの女飛んできた石弾いた!」
「盾持ち早く前立て!」
「あいつ本気で突いてくるんだよ、お前からもなんとか言ってくれ」
妹の本気度が増してくるに連れて、悪ガキ達もだいぶ本気で困り始めている。いじめ相手であるケロックに対して、なぜかこのように頼んでくるようにもなった。
話し方がフランクになり態度が軟化したのは、ある意味フニランの功績かもしれないと、ケロックは思うのであった。
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