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2章 命にふさわしい
突然の馬
しおりを挟む「全くもーお兄ちゃんのあほー」
フニランは兄に背を向けて槍を振り回し歩いていた。その後をケロックがとぼとぼ付いていく。
結局あの後、フニランの勢いに恐れをなした悪ガキどもは散りぢりになり、あわれ泥んこケロックは妹に助け起こされる結果になって、こうして家路についている。父ファランと同じく、兄の威厳などどこにもない。
「わたしのお兄ちゃんなんだから、もう少しカッコいいとこ見して欲しいよね!」
「ごめん」
「わかればよろしい」
簡単な言葉を話すようになったケロックの謝罪に、即答で許すフニラン。チョロい。
「だいたいさ、いつも森の中でなにしてるの?」
「本読んでる」
「・・・それ、ルシル先生から借りた魔術書でしよ? よくそんなの読めるね」
本来なら「なぜ家で読まないのか」と聞くとこだろうに、そこはもはや疑わないのもフニランクオリティだろう。
実を言うと音魔法の熟練度はだいぶ上がっているので、流暢な長文も話そうと思えば話せるし、無駄に信頼を寄せてくる妹になら隠す理由もない。
(ぶっちゃけこの設定の方が楽)
『クズ兄極まってますよね』
(二度言うほど悪いことしてないはず)
『そう思うならその「ぶっちゃけ」を口に出しなさい』
(僕の懺悔を聞いてくれるのは君だけだよ)
『クズ兄極まってますね』
スキル【天の声】はさすがに甘くはないようだ。
こうして優しい? 妹と厳しい妹? に囲まれ、のんびりとした生活を送って来たようだ。
「お兄ちゃん、あれ・・・・」
いつもなら、フニランの指差す先には掘っ建て小屋のような自宅があるはずだった。
(家よりデッケエ馬車と馬が立っている・・・改築?)
『家の前に立ってるだけですよ。』
それにしたってデカイ。馬車なんか4人乗りの形状のくせに、大の男が10人は詰め込めるであろう大きさ。馬なんかほぼ怪獣のようで、その気になればケロック達など丸呑みにできそうだ。
あと肩幅がおかしい。馬のくせにバッキバキの大胸筋があってまともに走れるのか心配になる。
『おそらく高位魔獣か魔族です』
(なんでそんな化け物が馬車に繋がれている)
『高位の魔獣か魔族があのような形で従うのは、隷属にしろ服従にしろ何らかの契約があると考えるのが妥当でしょう』
(あの馬車のサイズで持ち主が人間である保証は無いよね?)
最初は本気で自宅が馬車になったと勘違いしていたケロック。この間に【天の声】さんは『称号に【冷静なポンコツ】が追加されました』と告げていた。馬鹿にしてるのかと言われれば、【天の声】に称号を通知する義務はないので確信犯ではある。
「テメエかぁああああ家を丸呑みしやがったのはァアあああ!!!!!!!」
『そしてここに【熱いポンコツ】が1人』
(本当にたくましくなったなぁ)
奇声をあげながら馬らしきものに向かって槍を振り回す妹に、【天の声】は(多分)ため息をついた。
流石にそんなことをすれば対象に気付かれるワケで。
「おや、ファラン殿のご子息であるか」
(めっちゃ良いバリトンボイスで喋った)
『かなり高度な知性はあるようですね』
「ワガハイはかつて変態魔王オパンティに魔将として仕え、今は辺境伯領主の執事兼御者として」
「うるせえ死ねぇえええええ!!!!!!」
紳士的な自己紹介を遮り、問答無用とばかりに馬の尻に向かって槍を突き出すユニランだが、鋭いとはいえ木製の槍。腕が良いとはいえ子供の力。あらゆるステータスの高い高位魔族にまともに通じるはずもない。
プスッ
「んギモッチぃいいいイ!!!!!!」
「んなっ、刺さらないだと!?」
「なるほど、ヒトの子にしては悪くない突きだが、その程度では私を満たすことなど(チクチクプスッ)この物足りない感じサイコぉおおおッ!!!!!!」
(そろそろついてけなくなってきた)
『なぜ御者席があるのかと疑問に思ってましたが、なるほど鞭打ち台でしたか』
物語は次回から加速しますが、きちんと修正もします。
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