生まれ変わったらしんでました

かんた

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2章 命にふさわしい

筋肉と胃潰瘍

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 楽園というのは、こんな場所の事を指すのだろうか。

 トッカータは外側が広大な森に囲まれた美しい街だ。


 森には獣や弱い魔物かのんびり暮らしており、基本的に人を襲う事はない。わざわざ狩りをしなくても人々は食べていけるし、森や獣達も初代領主の築き上げた治水の恩恵を受けているからだ。
 どうやら水の浄化作用も森まで流れると薄れるようで、川にはちらちらと小さな銀色の魚影が確認できる。
 綺麗な水で潤った地面は花や木々を育て、木ノ実や柔らかい下草を絶やす事なく、獣達にその糧を与えている。

 やがて石垣の壁が見えてくる。

 東側は比較的綺麗だが、かつて帝国からちょっかいをかけられていた西側の壁は傷や補修の跡が目立つらしい。それでも、初代からずっと街を支えた防衛線だ。威圧感と安心感が同居する見事な壁だった。
 今は森での防衛が基本になって、役目を終えた壁は次あるかもしれない機会に備えて佇んでいる。

 壁の中は外周・内周・中心部に分かれている。

 外周は商店と住宅が混在する居住区。白い壁に赤い屋根の家が多く、どの道にも必ず水路が通っていて、みなそこから水をすくって生活をしていた。大人しい性格ながら領民達の顔は生き活きとしている。

 内周は複数の大きな建物以外、棚田で埋め尽くされた農業区。緩やかな勾配に従って大きな棚田が広がり、イヌイモ・オニワサビ・水麦などの綺麗な水でしか育たない作物が植えられている。


 そして中心部。
 四方に水路が通る小高い丘のてっぺんには、一際大きな建造物がそびえ立つ。石垣に包まれたそれは、もはや小さな城と言っても過言ではない。
 丘を登る途中、黒と白の花畑が足元に広がっているのに気づく。
 闇の瘴気溢れる場所にしか咲かない【黒寿草】コクジュと、光溢れる地でしか咲かない【白麗花】ビャクレイ。交わらないはずのこの二種は、まるで『これこそが本来在るべき姿である』とでも言うように仲良く並んでいた。【トッカータの奇跡】と呼ばれる、唯一無二の光景である。



 丘を登りきると、城の全容が明らかになる。
 こんこんと水をたたえ続ける、広く大きな堀。
 街の外壁同様に無骨ながらも美しい城壁。









 そして入口の大扉の前、今もケロック達の前でポージングを決める毛深めのムキムキマッチョメーンが一人。


「げぼはぁ」
「お兄ちゃん!!?」

 直前まで1時間に渡り美しい街並みを見てきたケロックにとって、目の前の熱苦しい光景は落差が酷過ぎた。この世にを授かって以来、久々の黒い吐血である。
 ちなみに順応力が高いフニランは、先刻のスタボロスブタ馬クソ野朗によって耐性が付いていた。

「カヒュー・・・もう帰りたい・・・・カヒュー」
「しっかりしてお兄ちゃん!!!!」
「耐えるのですケロック君、そんな事ではこの屋敷でお世話になれません」

 どうやらこの光景、一部の草食系男子の胃に穴を開けるらしく、既に経験済みなはずのベントレールも、鳩尾みぞおち辺りを押さえながら白い錠剤のようなものを口に入れていた。

 バルディアス・バルガ・フォン・アイゼンヴァルト辺境伯。身長213cm体重168kg。御歳42の彼は分厚い胸板にモッサリと毛を生やし、眉なし丸坊主の鋭い眼光の下には、どこぞの大海賊も斯くやの立派なカイゼル髭が、顔三つ分左右に広がって天を指していた。
 我らが主人公リーダーにここまでのダメージを与えるとは、なんてでんぢゃらすなじーさ・・・オッさんであろうか。今も左の大胸筋をピクリコさせてプレッシャーを与えているせいか、ケロックの心の野獣ハリネズミは威嚇も出来ず瀕死の重傷である。身体はもう死んでるけど。

武々ムムッ! 我の肉体美、少年には刺激が強かったようだ。アードン! サムスン!」
「「お呼びでしょうかお館様!!」」

 筋肉ダルマの呼びかけに馳せ参じたのは、大扉の横にあった二つの彫像。無機物だと思っていたそれらは、双子の筋肉門番パロズィウス兄弟だ。主人であるアイゼンヴァルト辺境伯よりもふた回りほど小さい(それでも180cm越え)が、ゼクロ◯や松崎し◯るも斯くやの黒光りする筋肉が美しい。あまりの美しさに、ケロック心の野獣ハリネズミの背中の針が抜け落ちていく。

「どうかね今日の我のカラダは、ンッ」
「キレてます仕上がってますよお館様」
「肩にでっかい馬車乗っけてますかお館様」
「よろしい! 客人を案内せよ! ベントレール殿は応接間、子供達はファラン殿の元へ!ワシは正装してくる!」
「「かしこまりましたお館様!!!」」

 右からしげるレシラムしげるの順にダブルバイセップス・モストンマスキュラー・サイドチェストのポージングが並ぶ。やがてケロックの以下略が全身の針を失ったとき・・・・・

「ケポケポケポッ(吐血)」
「お、お兄ちゃーん!!!!」
『さっきの馬車の大きさでも、この3人は乗るでしょうかね。というか何故パンイチ』
「ウグッ! だ、大丈夫です。この屋敷であのような身体は、あと2人だけですから」

 吐血が止まらない兄を心配しながらも頬を赤らめるフニラン、実は筋肉フェチかもしれない。逆に心配である。
【天の声】はやっぱりスキルなのでサポートするべく分析を行っていた。全身脱毛後の精神ハリネズミのケアサポートはしてくれないようだ。
 ベントレールもさすがにダメージがデカいらしく、錠剤をラムネ感覚でポリポリしていた。てかこんなのがあと2人もいるのか。


 少し離れたところでそれらを眺めハァハァ言ってる馬のバケモノに気付いてしまったら、ケロックは今度こそ完全にお陀仏だろう。


 主人公、ここで再び死んでしまうのか! もう死んでるけど!

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