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2章 命にふさわしい
辺境伯令嬢③
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話は1ヶ月前に遡る。
包帯姿の眠り姫の部屋に、4人の男女が集まっていた。
アイゼンヴァルト領主『筋肉魔導士』バルディアス・バルガ・フォン・アイゼンヴァルト。
オリジナルの【筋肉魔法】で戦線を突き崩し、魔力が切れた後もその身一つで敵を討ち取るバ…猛者である。王国にとって重要な拠点を代々預かる大貴族でもあり、その豪胆な性格から「最も貴族らしくない貴族」とも揶揄される。
伝説の傭兵『銀狼』ガルド・ローエン・アイゼンヴァルト。
現領主の叔父にあたる、元冒険者でフリーの傭兵。齢60の大台に乗った今もなお『生涯現役の戦士』を自負しており、数々の逸話を残しつつも世界中に技を伝授していく、生ける伝説である。
町医者『時の囚人』チェルーシル・リシル。
最古の少数民族【エルフーン族】の末裔であり、その中で唯一大陸の人間社会で生きてきた女性。150年生きてきた中で10年以上定住した記録はなく、名を変え職を変え世界を転々としているそうだ。
騎士『斥候王』ファラン・クロムハーツ。
先の大戦時に斥候として最大級の武功を挙げ、見事準貴族の地位を獲得した元冒険者。ガルドの娘を嫁に迎え、その類稀なる諜報能力とフットワークの軽さで王国のパシリとして飛び回っていた。
そんな名だたる大人物4名が、使用人の1人も入れずに令嬢の寝室で密談をしていたのだった。
「ではルイは、ルイジアナはもう・・・・・」
「ええ、もって数ヶ月の命でしょう」
痛みで熱を持った体と、ぼんやりとした意識の中で、ルイジアナは自らの余命宣告を聞いていた。
「以前もお話ししましたが、ご令嬢は【怪力】と【身体強化】の加護を先天的に持っています」
自身の力を底上げする【怪力】と、魔力を使ってパワーアップする【身体強化】。
加護とはカミサマがくださる恩恵であって、この世に生を受けたことを祝福してあらかじめ授けられたものと、己の適性を伸ばしたことに対する褒賞の意味で後から授けられるものとの二つがある。これが世間の常識であった。
元々アイゼンヴァルト辺境伯家は武に関する加護を授かりやすく、それがまた彼らが大貴族たる所以でもある。
しかし、直系の令嬢である彼女が授かった加護は、残酷な結果を生み出していた。
「彼女は生まれつき膨大な魔力と筋力を持っているが、そのどちらも規格から圧倒的に外れたものだ。小さな身体に押し込めようとする力はコントロールが効かず、彼女を内側から押し潰していく」
改めて自らの過去がフラッシュバックする。
指を折られて怯える乳母。砕けたベッドに戦慄するメイド。自らの腕で首を折られ、生き絶えた兎。歪んだスプーン。伸び悩む身体。歩いただけで勝手に折れる脚。
「それで動きのコントロールを学ばせるために儂を呼んだんだったな? 12歳というある程度成長仕切った上で、ギリギリ矯正出来る年齢を狙って」
「ガルド・ローエン殿のおっしゃる通りです。あなたの強さは他に類を見ない身体操作能力にある。
しかし、一歩遅かった」
つい先日見た、自らの四肢を中心に身体が爆ぜる光景。
栄養のほとんどが自然と消費され、ほとんど動いていなかったために痩せ細っていたはずの身体は、少し力んだだけでこうなってしまう。余りに不自然な理不尽だった。
「突然魔力が増大し、比例するように筋肉が骨を砕き、一部の皮膚を突き破った。今後もこのような事態が起こりえる上に、その時は内臓まで無事だとは限らない。
今は寝床に【麻痺】と【筋力低下】の陣を敷いて抑えてはいるが、いつまで保つか・・・・・」
「我々が先祖代々信じてきた筋肉が、まさか我の娘をここまで苦しめるとはな。なんたる皮肉・・・・・」
父が泣いていた。いつも豪快に笑い、病弱な自分を気遣って弱みを見せた事などなかった父が、ここに来て涙を見せていた。大きな肩が、背中が、悔しさで震えている。
ルイジアナにとって、父は憧れの存在だった。その圧倒的な筋肉で敵を押し潰し磨り潰し握り潰し、領地を引っ張りあげて行く姿は物語で見た英雄のようだったのだ。
それ故に、たった1人直系の子息である自分が、このような病弱な身体に生まれて来たことを、ルイジアナは恥じていたのだ。
生まれてすぐ母が亡くなった時も、父は笑って見送っていたと、当時を知る執事長と大叔父から聞いている。そんな父を、自分が今初めて泣かしてしまった。
「・・・・・あの、何で僕は呼ばれたんですかね?」
そう疑問を投げかけるのは、自他共に認めるパシリのプロ、ファラン・クロムハーツ。
彼はいつもの通り、帝国に怪しい動きが無いかの調査任務を与えられると思っていたのだが、明らかにそんな雰囲気ではない。
ファランは錆びついた血のにおいがする兜と皮鎧を脱いだ状態で、この3人に対面していた。正直かなり気まずい。穴があったら入りたいし、兜があったら被りたい。
「そうだな、本題に入ろう。
唯一アイゼンヴァルト本家の血統である我が娘だが、この病弱さだ、婿に入って我との繋がりを作ろうとする輩が大勢いる。
一応弟のウィリアム・アイゼンヴァルト男爵が街の代官を務めていてな。同じ血族ならそこの息子と婚約でもと思ったが、これが女好きな上に野心家というとんでもない俗物だった。
娘がこのような姿になった時、見舞いに来たヤツは何と言ったと思う? 『本家の為にも、早急に婿養子を迎えねばなりませんな』だと!!! 婚約者候補の分際で、その相手の目の前で言い放ったのだぞ!!!?? 疾!!!!!」
気合いとともに右手のワインの瓶が、口の根元から切り落とされる。どうやらその右手の親指で断ち切ったらしい。どういう技術だ。
「お、落ち着いてくださいアイゼンヴァルト卿」
「落ち着いてられるか! ルイの事を見ようともしない、家格だけが目的の馬のホネ何ぞに、我のルイを渡せるかぁああ!!!!!」
『吾輩をお呼びかな?』
「お呼びで無いわブタ馬クソ野朗がァア!!!」
突如聞こえた窓の外のバリトンボイスに、領主は足元に落ちた瓶の口を拾い、窓に向かって投げつけた。
パリンという音と『モゥレツゥウウウ!!!!!』という甲高い悲鳴(?)とともに鮮血が飛び、直後ドスンと重い物が落ちたような衝撃が響く。そういえばここ2階だった。
「吹ウゥ、馬の悪口を言うとヤツが来る。なんとも嬉しそうな顔でな」
そう言って一呼吸置き、何事も無かったかのようにワインを飲む。案外ブタ馬クソ野朗の存在が領主の怒りを鎮めているのかもしれない。
「もちろんこの街の教会に預ける事も考えたが、あそこの司祭はそれこそ俗物の代表みたいなものでな。娘を使って中央とのパイプを作り、そこから成り上がりを画策しておる」
大きな街にある太陽信仰の教会には、以前説明した対象の加護を映す『神眼の水晶』の他に、『神託の聖杯』というものがある。定期的に魔力を注ぐ事でその土地に祝福を受ける事が出来ると言われているアイテムで、魔力暴走を起こして身体に影響を受けた人への救済措置にもなっていた。
ただし、どちらのアイテムも使用には多額の寄付が必要であり、さらに『神託の聖杯』により「救済」を受けた者は半強制的に生まれた家と離縁をさせられ、「巫女」と呼ばれ教会預かりの身になる。
司祭はこれを利用し「元辺境伯令嬢」という道具を手に入れ、中央貴族とのパイプを作ろうとしているのだ。
そもそも「救済」は延命という時間稼ぎでしかなく、根本的な解決にはならない。苦しみが長引くだけなのは目に見えていた。
「八方塞がりですね・・・・・」
「うむ、そこでだファラン殿」
「はい」
ひと息ついて、領主の巨体が正面に向き、ファランは背筋を伸ばして身構える。
「貴殿の息子に我の娘と見合いをしてもらいたいのだが」
「・・・・・あ、いや、断れませんし断る理由もないんですけど、良いんですか? ウチの息子は」
「ゾンビなのだろう? 我はそれでも構わない。
そもそも貴殿がその事を律儀に報告した時、我は全力でクロムハーツ家を助ける事を約束したはずだ」
「今回の件も、その内の1つであると?」
「一度でも婚約を交わせば、我がアイゼンヴァルト家の庇護下に入れる事が出来る。例え成婚の前に娘が死んだとしてもだ」
「それはルイジアナ様に失礼では?」
「「婚約」ではなく「見合い」だと言っただろう? 娘には貴族のしがらみがない、同年代のまっさらな子供たちと触れ合って欲しいのだ!
頼むファラン殿!!! ケロックとフニランをここに連れて来てくれ!!!!」
そう叫びスキンヘッドを床に叩きつける領主。バコン!! という音と共に床板が爆ぜた。
ファランやルシルからケロックの人となりを聞いた時、あるいはその子なら、自分の娘の心だけでも救えるのではないかと考えた。
神から使命を授かり、異なる世界から呼ばれた魂。亡くなった少年の身体に降り立ち、この世界で忌み嫌われる『ゾンビ』という存在に成り果てても、新しい家族と思いやりを持って接する事が出来るその心に、領主は可能性を見出していた。
その土下座が五体投地レベルにまで達する父を見て、ルイジアナは困惑していた。
見た事のない父の姿にではなく、その話の内容にだ。
高名な騎士ファランの息子で、自分にとっては遠い親戚である、自分の婚約者になるかもしれない少年。
どんな人なのかと胸が弾んだ。
失望されるだろうと心が痛んだ。
そして、返事が出来るなら、そこまでその少年を信用する父のために、婚約を承諾したいと思ったのだった。
「というわけなんですけど」
「謀りやがったあの大人ども・・・・・」
包帯姿の眠り姫の部屋に、4人の男女が集まっていた。
アイゼンヴァルト領主『筋肉魔導士』バルディアス・バルガ・フォン・アイゼンヴァルト。
オリジナルの【筋肉魔法】で戦線を突き崩し、魔力が切れた後もその身一つで敵を討ち取るバ…猛者である。王国にとって重要な拠点を代々預かる大貴族でもあり、その豪胆な性格から「最も貴族らしくない貴族」とも揶揄される。
伝説の傭兵『銀狼』ガルド・ローエン・アイゼンヴァルト。
現領主の叔父にあたる、元冒険者でフリーの傭兵。齢60の大台に乗った今もなお『生涯現役の戦士』を自負しており、数々の逸話を残しつつも世界中に技を伝授していく、生ける伝説である。
町医者『時の囚人』チェルーシル・リシル。
最古の少数民族【エルフーン族】の末裔であり、その中で唯一大陸の人間社会で生きてきた女性。150年生きてきた中で10年以上定住した記録はなく、名を変え職を変え世界を転々としているそうだ。
騎士『斥候王』ファラン・クロムハーツ。
先の大戦時に斥候として最大級の武功を挙げ、見事準貴族の地位を獲得した元冒険者。ガルドの娘を嫁に迎え、その類稀なる諜報能力とフットワークの軽さで王国のパシリとして飛び回っていた。
そんな名だたる大人物4名が、使用人の1人も入れずに令嬢の寝室で密談をしていたのだった。
「ではルイは、ルイジアナはもう・・・・・」
「ええ、もって数ヶ月の命でしょう」
痛みで熱を持った体と、ぼんやりとした意識の中で、ルイジアナは自らの余命宣告を聞いていた。
「以前もお話ししましたが、ご令嬢は【怪力】と【身体強化】の加護を先天的に持っています」
自身の力を底上げする【怪力】と、魔力を使ってパワーアップする【身体強化】。
加護とはカミサマがくださる恩恵であって、この世に生を受けたことを祝福してあらかじめ授けられたものと、己の適性を伸ばしたことに対する褒賞の意味で後から授けられるものとの二つがある。これが世間の常識であった。
元々アイゼンヴァルト辺境伯家は武に関する加護を授かりやすく、それがまた彼らが大貴族たる所以でもある。
しかし、直系の令嬢である彼女が授かった加護は、残酷な結果を生み出していた。
「彼女は生まれつき膨大な魔力と筋力を持っているが、そのどちらも規格から圧倒的に外れたものだ。小さな身体に押し込めようとする力はコントロールが効かず、彼女を内側から押し潰していく」
改めて自らの過去がフラッシュバックする。
指を折られて怯える乳母。砕けたベッドに戦慄するメイド。自らの腕で首を折られ、生き絶えた兎。歪んだスプーン。伸び悩む身体。歩いただけで勝手に折れる脚。
「それで動きのコントロールを学ばせるために儂を呼んだんだったな? 12歳というある程度成長仕切った上で、ギリギリ矯正出来る年齢を狙って」
「ガルド・ローエン殿のおっしゃる通りです。あなたの強さは他に類を見ない身体操作能力にある。
しかし、一歩遅かった」
つい先日見た、自らの四肢を中心に身体が爆ぜる光景。
栄養のほとんどが自然と消費され、ほとんど動いていなかったために痩せ細っていたはずの身体は、少し力んだだけでこうなってしまう。余りに不自然な理不尽だった。
「突然魔力が増大し、比例するように筋肉が骨を砕き、一部の皮膚を突き破った。今後もこのような事態が起こりえる上に、その時は内臓まで無事だとは限らない。
今は寝床に【麻痺】と【筋力低下】の陣を敷いて抑えてはいるが、いつまで保つか・・・・・」
「我々が先祖代々信じてきた筋肉が、まさか我の娘をここまで苦しめるとはな。なんたる皮肉・・・・・」
父が泣いていた。いつも豪快に笑い、病弱な自分を気遣って弱みを見せた事などなかった父が、ここに来て涙を見せていた。大きな肩が、背中が、悔しさで震えている。
ルイジアナにとって、父は憧れの存在だった。その圧倒的な筋肉で敵を押し潰し磨り潰し握り潰し、領地を引っ張りあげて行く姿は物語で見た英雄のようだったのだ。
それ故に、たった1人直系の子息である自分が、このような病弱な身体に生まれて来たことを、ルイジアナは恥じていたのだ。
生まれてすぐ母が亡くなった時も、父は笑って見送っていたと、当時を知る執事長と大叔父から聞いている。そんな父を、自分が今初めて泣かしてしまった。
「・・・・・あの、何で僕は呼ばれたんですかね?」
そう疑問を投げかけるのは、自他共に認めるパシリのプロ、ファラン・クロムハーツ。
彼はいつもの通り、帝国に怪しい動きが無いかの調査任務を与えられると思っていたのだが、明らかにそんな雰囲気ではない。
ファランは錆びついた血のにおいがする兜と皮鎧を脱いだ状態で、この3人に対面していた。正直かなり気まずい。穴があったら入りたいし、兜があったら被りたい。
「そうだな、本題に入ろう。
唯一アイゼンヴァルト本家の血統である我が娘だが、この病弱さだ、婿に入って我との繋がりを作ろうとする輩が大勢いる。
一応弟のウィリアム・アイゼンヴァルト男爵が街の代官を務めていてな。同じ血族ならそこの息子と婚約でもと思ったが、これが女好きな上に野心家というとんでもない俗物だった。
娘がこのような姿になった時、見舞いに来たヤツは何と言ったと思う? 『本家の為にも、早急に婿養子を迎えねばなりませんな』だと!!! 婚約者候補の分際で、その相手の目の前で言い放ったのだぞ!!!?? 疾!!!!!」
気合いとともに右手のワインの瓶が、口の根元から切り落とされる。どうやらその右手の親指で断ち切ったらしい。どういう技術だ。
「お、落ち着いてくださいアイゼンヴァルト卿」
「落ち着いてられるか! ルイの事を見ようともしない、家格だけが目的の馬のホネ何ぞに、我のルイを渡せるかぁああ!!!!!」
『吾輩をお呼びかな?』
「お呼びで無いわブタ馬クソ野朗がァア!!!」
突如聞こえた窓の外のバリトンボイスに、領主は足元に落ちた瓶の口を拾い、窓に向かって投げつけた。
パリンという音と『モゥレツゥウウウ!!!!!』という甲高い悲鳴(?)とともに鮮血が飛び、直後ドスンと重い物が落ちたような衝撃が響く。そういえばここ2階だった。
「吹ウゥ、馬の悪口を言うとヤツが来る。なんとも嬉しそうな顔でな」
そう言って一呼吸置き、何事も無かったかのようにワインを飲む。案外ブタ馬クソ野朗の存在が領主の怒りを鎮めているのかもしれない。
「もちろんこの街の教会に預ける事も考えたが、あそこの司祭はそれこそ俗物の代表みたいなものでな。娘を使って中央とのパイプを作り、そこから成り上がりを画策しておる」
大きな街にある太陽信仰の教会には、以前説明した対象の加護を映す『神眼の水晶』の他に、『神託の聖杯』というものがある。定期的に魔力を注ぐ事でその土地に祝福を受ける事が出来ると言われているアイテムで、魔力暴走を起こして身体に影響を受けた人への救済措置にもなっていた。
ただし、どちらのアイテムも使用には多額の寄付が必要であり、さらに『神託の聖杯』により「救済」を受けた者は半強制的に生まれた家と離縁をさせられ、「巫女」と呼ばれ教会預かりの身になる。
司祭はこれを利用し「元辺境伯令嬢」という道具を手に入れ、中央貴族とのパイプを作ろうとしているのだ。
そもそも「救済」は延命という時間稼ぎでしかなく、根本的な解決にはならない。苦しみが長引くだけなのは目に見えていた。
「八方塞がりですね・・・・・」
「うむ、そこでだファラン殿」
「はい」
ひと息ついて、領主の巨体が正面に向き、ファランは背筋を伸ばして身構える。
「貴殿の息子に我の娘と見合いをしてもらいたいのだが」
「・・・・・あ、いや、断れませんし断る理由もないんですけど、良いんですか? ウチの息子は」
「ゾンビなのだろう? 我はそれでも構わない。
そもそも貴殿がその事を律儀に報告した時、我は全力でクロムハーツ家を助ける事を約束したはずだ」
「今回の件も、その内の1つであると?」
「一度でも婚約を交わせば、我がアイゼンヴァルト家の庇護下に入れる事が出来る。例え成婚の前に娘が死んだとしてもだ」
「それはルイジアナ様に失礼では?」
「「婚約」ではなく「見合い」だと言っただろう? 娘には貴族のしがらみがない、同年代のまっさらな子供たちと触れ合って欲しいのだ!
頼むファラン殿!!! ケロックとフニランをここに連れて来てくれ!!!!」
そう叫びスキンヘッドを床に叩きつける領主。バコン!! という音と共に床板が爆ぜた。
ファランやルシルからケロックの人となりを聞いた時、あるいはその子なら、自分の娘の心だけでも救えるのではないかと考えた。
神から使命を授かり、異なる世界から呼ばれた魂。亡くなった少年の身体に降り立ち、この世界で忌み嫌われる『ゾンビ』という存在に成り果てても、新しい家族と思いやりを持って接する事が出来るその心に、領主は可能性を見出していた。
その土下座が五体投地レベルにまで達する父を見て、ルイジアナは困惑していた。
見た事のない父の姿にではなく、その話の内容にだ。
高名な騎士ファランの息子で、自分にとっては遠い親戚である、自分の婚約者になるかもしれない少年。
どんな人なのかと胸が弾んだ。
失望されるだろうと心が痛んだ。
そして、返事が出来るなら、そこまでその少年を信用する父のために、婚約を承諾したいと思ったのだった。
「というわけなんですけど」
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