生まれ変わったらしんでました

かんた

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2章 命にふさわしい

金骨の思い出・名医と変態の衝突

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 翌日からルシル監視のもと、ケロックによるルイの治療が始まった。


 ケロックの話によると、まずは1ヶ月も放置する羽目になった両腕と両足の骨折を治療したいらしい。ある程度修正したとは言え、まともな形でくっついているとは思えないからだ。

「でもどうするんだ? 薬や魔術の力は借りれないぞ?」

 魔法薬などで肉体の再生を早めようとすると、筋肉の更なる活性化につながり、暴走の引き金になりかねない。そもそも筋肉に対して迂闊うかつに魔力で干渉しようものなら、それすら【身体強化】スキルの発動の要因になるかもしれない。
 下手な再生医療はご法度だったのだが、これに対しケロックが答える。

「骨を作るスキルを覚えたんですよ。正確には、素材を骨の形にするスキルです。彼女の腕の中にそのまま残っているので、元の形に整形しちゃいましょう」
「なるほど。魔力を使わず、再生ではなく整形をするんだな?
 確かに直接的な筋肉への影響は無いだろうが、そんなピーキーなスキル、どうやって覚えたんだ?」
「通りすがりの人に教えてもらいました。ほぼ際限なく骨折が治せるから、長旅には重宝すると」
「お前、自動回復持ちだったよな?」
「ええ、なので今回を除けばほぼ死にスキルです」


 ケロックは、当時の情景を思い浮かべてみた。














 ケロックが村はずれの森の中で、武術指南書を読みながら秘密の特訓をしていた時の事。

「み、水・・・・・(ガシャッ)」


▶︎金色ゴールデンなスケルトンが現れた!


「えっ未知との遭遇」
『アンデッドが水って・・・・・』

 なんて事を思ったものの、害はなさそうなので、近くの泉に放り込んでみたのだ。


「(ザバァ)カカカカカー!! 復・骨リ・ボーン!!! あなたが泉に落としたのはこの金の骨ですか?」
「『うわぁウゼェ』」

 初っ端からよく分からないジョークをかまし、そのスケルトンは泉から上がってきた。

「正直なあなたにはこれをあげましょう」
「いや、まだ何も言ってないんだけど」

『おや? スキル【骨生成】を手に入れました』

「いやー助けてくれてあんがとね!!! そのスキルがあれば不意の骨折にも対処出来るよ! オイラはそれで長生きしてるんだ!!!」
「【フレッシュイモータル】って言う称号のおかげで休むと回復するんでいらないです」
「・・・・・マジ?」

『【譲渡】でも【継承】でもない、スキルの【授与】ですね。この骨は魔王か、神に準ずる者のようです』

「えっ魔王? 神?」
「んん~っ惜しいねぇ! 『兵器』の事象存在【機械神マキナ】! オイラはその筆頭眷属【骸骨人形スカルゴーレム】のデウスさ!!! 魔王を名乗ってた事もあるよ!」
「なるほど、アンデッドでは無いのか」
「自分でもよくわかって無いんだけど、水を燃料にして動いてるっぽいよ」


 そこからは骸骨人形デウスの弾丸ワンマントークショー。舌もないのに喋るしゃべる。
 ジョークや余談を除いて要約すると、以下のようになった。

 理由は忘れたが、とある鉱山に立てこもり、長い間帝国に対し戦争を仕掛けていた魔王デウス。
 馬鹿馬鹿しくなったので、【骨生成】で身代わりを作り、穴を掘って1人旅に出た。
 数ヶ月掘り続け、そろそろ帝国から離れたかな? と思い始めたころ、いきなりひらけた空間に飛び込んでしまったのだ。
 そこは帝国の東側、広大な荒野の間に横たわる【大渓谷】。
 凶悪な魔物がひしめき合う深淵の谷の中で、必死に戦って逃げ回って、泣きながら脱出した元魔王。
 ほとんど水のない荒野を彷徨さまよい、ようやく森を見つけるも、そこにいた兵士(恐らくアイゼンヴァルト領の見張り)に追い回され、仕方なくもう一度穴を掘った。
 出てきた森の中で水が切れ、ケロックに拾われ今に至る。


「いやーチミは命の恩人だよ! 見れば武術の練習をしているようだね? オイラも手伝うよ!
 スキル【骨生成:骸骨軍勢スカルレギオン十人隊】!!!!」

 デウスの掛け声と共に土が盛り上がり、土気色の全身骨格模型が10体現れ立ち上がった。

「カカカカカ!!! 驚いたかい? 【骨生成】は【人形生成ゴーレムクリエイト】の類似スキルでね! 周りの素材を使用者の知る骨型に限定して複製するのさ! オイラはその骨を操る事が出来る!!! ・・・・ダメだ、み、水」
「『燃費悪っ』」

 本調子ではないのか、デウスはふらふらと泉に入水し、そこから指示を出し始めた。

「さあチミの実力を見せたまえ! 実戦に勝る経験は無いし、骨格を知れば動きも理解できるはず!! 
 もし有用だと思うなら、も少し匿ってね!!!!」


 このなんとも珍妙な骨魔王は、図々しくも半年間森の中に居座るようになる。










 後でわかった事だが戦争の原因は、魔王デウスがボディを神金オリハルコン製にするため、鉱山のオリハルコンを掘り尽くしたからだった。
 本人が純度100%の最高級素材なので、それが狙われる要因にもなった。完全に自業自得である。

 なんともお間抜けな金骨だったなぁと、ケロックはスキルを使いながらしみじみ思うのであった。


「痛かったら言ってね」
「いたくない、よ。けど、なんかむずむず、する」
「麻酔かけてるとはいえ、器用だよなぁ」
『散々仕込まれましたからねぇ』

 自分のはやらなくても誰かのはやるだろうと、彼の作った骨たちや怪我した動物達で練習させられた。
 スキル【視覚】の熟練度が上がったおかげで、対象の骨格や筋肉も見ただけでわかるようになった。

(人生何が役に立つかわからないもんだなぁ、もう死んでるけど)
『一度は【超高速脳内会議】にも入れましたからね、良い縁を持ったものです』

「はい終わり」
「・・・・・!  あんまり、いたくない」
「まだ麻酔が効いてるからね。くっついたばかりだから3日ほど安静にしてて、固定しとくから。傷は治せないし、神経は元の位置に戻しただけだけど、我慢できる?」
「うん、ありがとう」

 骨折の腫れなどもありいびつだった手足が、まっすぐになっただけでまともに見えた。痛くないわけないが、文字通りの骨身にしみる痛みが和らいだだけでも嬉しいらしい。お嬢様は眼をキラキラさせて自分の腕を見下ろしていた。


「さてルシル先生、こっからなんですけど」
「30分間無防備になるんだったか? その間襲われないよう見張ってくれとか言われても、領主邸でそんな暴漢出るわけないだろう」
「でも、昨日のメイドさんとか」
「あー、あれはまあ、怖いよなぁ」
「マリィは、ほんとは、いい子です」
「愛が深過ぎるというか何というか・・・」

 3人は先日のメイドの鬼気迫る表情般若面を思い返し、背筋をぶるりと震わせた。今後治療にかかる期間の中で、彼女が寝込みを襲わないとは限らない。
 30分間自分らを守る事をルシルに約束させ、ケロックはルイと向かい合わせに座り両手を繋いだ。

「スキル【天の声】」
『派生スキル発動条件のクリアを確認。
 以前ログインしたユーザーを認証、履歴からルームを作成しました。
 このまま起動する場合はパスワードを入力してください』
「【超高速脳内会議】起動」
『認証しました。ルーム【超高速脳内会議】に入室します』
















「・・・・・行ったか」

 手を繋いだまま眠りにつく2人を見送り、ルシルはぽつりと呟いた。

「事前に聞かされてはいたが、なるほど。繋いだ両手を円環にし、回路パスのようなものを通してるのか。古代遺跡の【魂の回廊】によく似ている」
「あの、先生、これは一体」
「夢を共有するスキルだそうだ。ケロックの夢にルイジアナ嬢の意識を送り込み、治療のため検体の情報を収集するんだと。ようは新しい形式の検査だと思えば良い。
 さて、それはそうと・・・・・」


 説明を一区切りさせ後ろを振り向けば、ドス黒いオーラを纏い笑顔でたたずむメイドマリィがいた。その手にはなぜかククリ刀が握られており、ヒュンヒュンと軽快な音を立てて高速回転していた。


「なぜ貴様がここにいる」
「担当医以外立ち入り禁止との御触れが出た時は、まあルシル先生が監視してくださるならと思って待っていましたが。
 聞けば彼、お嬢様の艶めかしい手足を根元まで堪能し、その超絶テクでお嬢様に「むずむずする」とまで言わせてイケないスイッチを押したそうじゃないですか?」
「割と始めから聞いてたんだな・・・」
「その上クソガキの夢精の中で30分間2人きりですって!? 30分で子供が何人出来るか、先生ならご存知でしょう!!!」
「医者に向かって答えるのが馬鹿らしくなる質問はやめてくれないか?」
「夢の中なら分身も触手もボテ腹も思いのまま! そんなところに30分!!! 先生は思春期男児の性欲の恐ろしさを知らないのですか!!? 」
「30分とは言ったけど、夢の中では12倍の速さで時間が流れるらしいな」
「6時間!!!?? 子ども騎士団が6団体デキちゃうじゃないですか!!!!!」
「どっから出た計算だよ・・・」
「こうしてはいられません! 今すぐソイツの腕を切り落とすか、夢に乱入して私が陵辱の限りを尽くすかせねば!!!」


「残念だがここで止めさせてもらう。貴様の存在は精神衛生上よろしくない」
「そうでしたか、ロリババァもソイツの毒牙にかかってしまったのですね・・・・・」
「あ? 今なんつった猥褻わいせつ物」
「150年も生きててまだ気づかないんですか? ロリどころかペドババァでもいいくらいですよ」

「「・・・・・・・・・。」」


 ルシルの緑の巻き角から紫電がほとばしり、杖の先端から陽炎が揺らめく。
 マリィの顔面が般若のそれへと変化し、ククリ刀が音を立てて振り回される。


「「死ね」」


 轟音が鳴り響いた。















「今、なんか揺れたような・・・」
『そういえば、無理に起こされると脳にダメージがいくかもしれませんね』
「それ早く言ってくれない?」
『微々たるものですから、問題ありません』
「まあいいか、とりあえず今は」


「「「「「この子の本気を引き出さないとね」」」」」
「・・・・いやいや、どうしろと」




 今、1人の少女の前に、100が立ち塞がった。
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