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2章 命にふさわしい
バレちった
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更に十数分が経過した頃。自室で待機していたケロックの元に、領主と執事、妹、そしてルイジアナが訪ねてきた。
「気分はどう?」
「ぼちぼち。ルイの方こそ、出歩いて大丈夫?」「うん、まだ身体が突っ張って痛いから松葉杖でだけどね。【手加減EX】が仕事してくれてるみたい」
「そっかそっかーあはははは」
「そうそうーえへへへへ」
互いに夢の中やさっきの事などが気恥ずかしいらしく、目に見えて動揺しまくっていた。
先程の客人の件についてひと通りの説明をした後、領主であるバルディアス・バルガ・フォン・アイゼンヴァルト辺境伯は、大の字で仰向けになり涙ながらに叫ぶ。
「本っ当にすまないケロック君!!! 本来ならまずこれまでの事に礼を言うべきだが、おかしな事に君を巻き込んでしまった!
いっそのこと、もうこの場で婚約を決めて欲しい! そうすれば、君を我々の保護下に置く事が出来る!!! この通りだっ!!!!!」
「ちょっやめてよお父様! ってかこの通りってどの通りだ!」
「アイゼンヴァルト家口伝『五体投地から始める交渉術』っ」
「嘘つけ! 初めて聞いたよそんなの!!
ごめんねケロック。当初の約束通り婚約については君の好きにしてくれてかまわないよ。後は自分で何とか出来る気がするし、ケロックも実はめんどくさかったんでしょ?」
ルイは笑顔でそんな事を言うが、裏を返せば『巻き込まれないうちに早く逃げて』と言ってるようなものだ。
ただ、ケロックはまだ聞きたい事があったようだ。
「フニラン、父さんは?」
「お兄ちゃんが寝込んだけどルシル先生が心配ないって言ったから、次の仕事の前に一回家帰るって。今頃らぶらぶちゅっちゅしてるんじゃない?」
「肝心な時に・・・マリィさんは?」
「知らない、あれからずっと見てないの」
「捕捉させていただきますと、ウチの馬も見当たりませんな。おそらく家出に乗っていったのでしょう」
ケロックとフニランの会話に、執事クリストフの捕捉が入る。どうやら変態メイドのマリィは何かしら性的にやらかした時、必ずスタボロスを勝手に乗って家出していたとのこと。
「あんな馬でも一応、我が領の最高戦力のひとつですからな。勝手に持ち出されると困るのです」
「というより、我の巨体を支える馬が他におらんのだ。残念な事にな」
「うーん・・・・・これはマズイかも。
ルシル先生、あの時の魔力」
「お? 良く気づいたし、良く覚えてたな。多分お前の想像通りだよ」
ケロックとルシルが意味有りげなセリフと視線でウンウン頷きあうのを見て、他の者が訝しむような表情をする。
「ケロック? 何がどうしたの?」
「ルシル先生、一体何が…」
「僕がいっぺん死んで生き返った時に、同じ魔力を感じたんだ。さっきのは一瞬だけだったし、あの頃のは魔力感知も無かったんだけど、かつて自分の身に受けたものだからよくわかった。つまり先生」
「ああ、恐らくーーーーーーーーーーーー」
「・・・・・ウェルムート神官長」
「おや、どうなさいました? アーノルド殿」
屋敷を追い出されたアーノルド一行は、いそいそと帰路についていた。アーノルドの私兵達はまだ気絶からまともに目覚めておらず、ウェルムートを除く神官が各々肩や背中を貸す形で引きずっていく。
明らかに負け犬の様相を見せる集団に、民衆の注目が集まる中、背の低い小太りの男ウェルムートだけは、何か羊皮紙のようなものを見てニヤニヤしていた。
惨めな気持ちになっていたアーノルドには、それが我慢ならない。
「なぜあの場で退いたのですか? その締まらない薄笑いの理由はなんです?」
「ああ、気分を害してしまったようですな。申し訳ありません。
大した事ではないですよ? 領主殿はともかく、渦中の張本人であるご令嬢の意志が硬かったので、一度体勢を立て直すべきと判断したまでです。
それに、なかなかの収穫もありましたからね…」
ルイジアナが奇跡的に回復したという情報を入手した時は、病み上がりの弱った精神につけ込んでその心を揺さぶりをかけ、なし崩し的に教会に入れてしまおうとしたが、想像以上にその精神まで回復していた。
魔力暴走はほぼ不治の病。教会でさえ、進行を遅らせて延命させるにとどまっているのが現状だ。
彼女の希望の裏には、ケロック・クロムハーツという少年が関わっているように思えてならないし、高名な魔導師でもある医師チェルーシルがそれを認めた。
「実は、こんな物を持ち込んでまして」
「それは…【神眼の水晶】? 何でまたそんなものを」
「ルイジアナ嬢をウチで預かる事になれば、どの程度回復してるかをこの目で確認する義務がありましたからね。これをあのケロックという少年に使ってみたんです」
「あの小僧に? 簡易魔法陣を使った一瞬だけでは、大した情報は読み取れないのでは?」
「ええ、二、三秒ぐらいでしたかね? とても有益な情報を入手しましたよ」
ウェルムートは水晶を懐に入れ、逆の手に持っていた羊皮紙をアーノルドに見せる。
名:ケロック・クロムハーツ
種族:ゾンビ(突然変異種)
「ーーーーーーーーーーーーふふっ、ふはははははははははははははははは!!!! あーはははははははははははは!!!!」
狂ったように笑いだすアーノルドと、それに続くように笑みを深めるウェルムート。もはや民衆の目も気にはならなかった。
「素晴らしい! これは素晴らしいですよ神官長!!!」
「ええ、神罰を名目に家宅捜索出来ますし、『神敵』を庇いだてした事を弱みに突きつければ、あらゆる意見か通しやすくなる…!」
「『大貴族に潜む魔物の子、英雄の手によって裁かれる』…! 実に良い! 良いぞぉ! 血湧き肉躍る!!!」
「早速兵と装備を整えましょう。荒事になる可能性もありますから。私からは200余名の神官戦士を出しましょう」
「私もだ! 前々から温めていた計画を実行する! 晴れて私は辺境伯になるのだ!!!」
「てな感じで高笑いしてるんじゃないですかね」
「想像だに難くないな」
軽い感じで言うが、要するにクーデターである。
「風っ不っ不っ不っ不っ、飛んで火に入る夏の虫! 木っ端貴族が分不相応に我の首を狙おうなど片腹痛しよじれんば!! 本物の筋肉を身に纏った屈強な領兵の力、見せつけてくれるわ!!!」
「いえ、勝てると決まったわけじゃないですよ」
雄叫びをあげるかの如く叫ぶ領主に、ケロックは意見を挟んだ。
「何故だ? 代々帝国との最前線として研鑽を積んで来た我が軍が負けると?」
「だからこそきな臭いんですよ。
最前線であるが故に兵士のほとんどを国境付近の見張りに費やしていて、さっきのアーノルドさんと神官が素早く攻めてきたとしても、我々が籠城してしまえば集まってきた領軍に囲まれて終わりの無謀な反乱です。
ならばどうするか? 以前からクーデターを考えていたとして、僕なら事前に切り札を用意するか、領民や関係者を人質にするかしますね」
「…領民はあり得ん。もしそれでクーデターが成功したとしても、そのような行為に及べば王家が認めんだろう・・・・・まさか」
「ええ、マリィさんが危ない」
「ッッツ!!! 今すぐ早馬を手配し、ウチの使用人を迎えに行け!!!!」
「御意っ!」
領主の指示に素早く動くクリストフ。続いて領主も部屋の外に向かう。
「たかが使用人ひとり、本来なら人質にはならん! 切れ物のアーノルドの事だ、ヤツはあらゆる策を講じた上でそのような悪あがきも用意するだろう!
我は出来る限り手近な軍備を整えてくる! ここを絶対に動くな!」
「お父様…」
「ルイよ、今この街に散開している200余名、内50ほどしか屋敷内に手勢は居らん。万が一があれば先生やこの子達と逃げるがいい」
「・・・・・ご武運を」
「有無! 先生! ケロック君! 頼みましたぞ!!!」
返事を待たず扉は乱暴に閉められる。それらを見送った残りの四人は、互いに顔を見合わせる。
「大変な事になったな」
「お父様なら問題ありません。領主になってから2度、帝国軍を退けてますから」
「本来なら医者である私も動かなきゃいけないんだが、まさかここに居ろと言われるとはな」
「ルシルせんせー! 大変そうだったら行っても良いよ! お兄ちゃんもルイねーちゃんも私が守る!!!・・・・・お兄ちゃん?」
愛用の槍をブルンブルン振り回すフニランだったが、ふとケロックがなんの反応も示さないのを見て首を傾げる。
「・・・・・フニラン、ルシル先生、僕ちょっと『眠る』んで、見張りをお願いします」
「どういうことだ?」
「ルイの治療を完了させます」
「気分はどう?」
「ぼちぼち。ルイの方こそ、出歩いて大丈夫?」「うん、まだ身体が突っ張って痛いから松葉杖でだけどね。【手加減EX】が仕事してくれてるみたい」
「そっかそっかーあはははは」
「そうそうーえへへへへ」
互いに夢の中やさっきの事などが気恥ずかしいらしく、目に見えて動揺しまくっていた。
先程の客人の件についてひと通りの説明をした後、領主であるバルディアス・バルガ・フォン・アイゼンヴァルト辺境伯は、大の字で仰向けになり涙ながらに叫ぶ。
「本っ当にすまないケロック君!!! 本来ならまずこれまでの事に礼を言うべきだが、おかしな事に君を巻き込んでしまった!
いっそのこと、もうこの場で婚約を決めて欲しい! そうすれば、君を我々の保護下に置く事が出来る!!! この通りだっ!!!!!」
「ちょっやめてよお父様! ってかこの通りってどの通りだ!」
「アイゼンヴァルト家口伝『五体投地から始める交渉術』っ」
「嘘つけ! 初めて聞いたよそんなの!!
ごめんねケロック。当初の約束通り婚約については君の好きにしてくれてかまわないよ。後は自分で何とか出来る気がするし、ケロックも実はめんどくさかったんでしょ?」
ルイは笑顔でそんな事を言うが、裏を返せば『巻き込まれないうちに早く逃げて』と言ってるようなものだ。
ただ、ケロックはまだ聞きたい事があったようだ。
「フニラン、父さんは?」
「お兄ちゃんが寝込んだけどルシル先生が心配ないって言ったから、次の仕事の前に一回家帰るって。今頃らぶらぶちゅっちゅしてるんじゃない?」
「肝心な時に・・・マリィさんは?」
「知らない、あれからずっと見てないの」
「捕捉させていただきますと、ウチの馬も見当たりませんな。おそらく家出に乗っていったのでしょう」
ケロックとフニランの会話に、執事クリストフの捕捉が入る。どうやら変態メイドのマリィは何かしら性的にやらかした時、必ずスタボロスを勝手に乗って家出していたとのこと。
「あんな馬でも一応、我が領の最高戦力のひとつですからな。勝手に持ち出されると困るのです」
「というより、我の巨体を支える馬が他におらんのだ。残念な事にな」
「うーん・・・・・これはマズイかも。
ルシル先生、あの時の魔力」
「お? 良く気づいたし、良く覚えてたな。多分お前の想像通りだよ」
ケロックとルシルが意味有りげなセリフと視線でウンウン頷きあうのを見て、他の者が訝しむような表情をする。
「ケロック? 何がどうしたの?」
「ルシル先生、一体何が…」
「僕がいっぺん死んで生き返った時に、同じ魔力を感じたんだ。さっきのは一瞬だけだったし、あの頃のは魔力感知も無かったんだけど、かつて自分の身に受けたものだからよくわかった。つまり先生」
「ああ、恐らくーーーーーーーーーーーー」
「・・・・・ウェルムート神官長」
「おや、どうなさいました? アーノルド殿」
屋敷を追い出されたアーノルド一行は、いそいそと帰路についていた。アーノルドの私兵達はまだ気絶からまともに目覚めておらず、ウェルムートを除く神官が各々肩や背中を貸す形で引きずっていく。
明らかに負け犬の様相を見せる集団に、民衆の注目が集まる中、背の低い小太りの男ウェルムートだけは、何か羊皮紙のようなものを見てニヤニヤしていた。
惨めな気持ちになっていたアーノルドには、それが我慢ならない。
「なぜあの場で退いたのですか? その締まらない薄笑いの理由はなんです?」
「ああ、気分を害してしまったようですな。申し訳ありません。
大した事ではないですよ? 領主殿はともかく、渦中の張本人であるご令嬢の意志が硬かったので、一度体勢を立て直すべきと判断したまでです。
それに、なかなかの収穫もありましたからね…」
ルイジアナが奇跡的に回復したという情報を入手した時は、病み上がりの弱った精神につけ込んでその心を揺さぶりをかけ、なし崩し的に教会に入れてしまおうとしたが、想像以上にその精神まで回復していた。
魔力暴走はほぼ不治の病。教会でさえ、進行を遅らせて延命させるにとどまっているのが現状だ。
彼女の希望の裏には、ケロック・クロムハーツという少年が関わっているように思えてならないし、高名な魔導師でもある医師チェルーシルがそれを認めた。
「実は、こんな物を持ち込んでまして」
「それは…【神眼の水晶】? 何でまたそんなものを」
「ルイジアナ嬢をウチで預かる事になれば、どの程度回復してるかをこの目で確認する義務がありましたからね。これをあのケロックという少年に使ってみたんです」
「あの小僧に? 簡易魔法陣を使った一瞬だけでは、大した情報は読み取れないのでは?」
「ええ、二、三秒ぐらいでしたかね? とても有益な情報を入手しましたよ」
ウェルムートは水晶を懐に入れ、逆の手に持っていた羊皮紙をアーノルドに見せる。
名:ケロック・クロムハーツ
種族:ゾンビ(突然変異種)
「ーーーーーーーーーーーーふふっ、ふはははははははははははははははは!!!! あーはははははははははははは!!!!」
狂ったように笑いだすアーノルドと、それに続くように笑みを深めるウェルムート。もはや民衆の目も気にはならなかった。
「素晴らしい! これは素晴らしいですよ神官長!!!」
「ええ、神罰を名目に家宅捜索出来ますし、『神敵』を庇いだてした事を弱みに突きつければ、あらゆる意見か通しやすくなる…!」
「『大貴族に潜む魔物の子、英雄の手によって裁かれる』…! 実に良い! 良いぞぉ! 血湧き肉躍る!!!」
「早速兵と装備を整えましょう。荒事になる可能性もありますから。私からは200余名の神官戦士を出しましょう」
「私もだ! 前々から温めていた計画を実行する! 晴れて私は辺境伯になるのだ!!!」
「てな感じで高笑いしてるんじゃないですかね」
「想像だに難くないな」
軽い感じで言うが、要するにクーデターである。
「風っ不っ不っ不っ不っ、飛んで火に入る夏の虫! 木っ端貴族が分不相応に我の首を狙おうなど片腹痛しよじれんば!! 本物の筋肉を身に纏った屈強な領兵の力、見せつけてくれるわ!!!」
「いえ、勝てると決まったわけじゃないですよ」
雄叫びをあげるかの如く叫ぶ領主に、ケロックは意見を挟んだ。
「何故だ? 代々帝国との最前線として研鑽を積んで来た我が軍が負けると?」
「だからこそきな臭いんですよ。
最前線であるが故に兵士のほとんどを国境付近の見張りに費やしていて、さっきのアーノルドさんと神官が素早く攻めてきたとしても、我々が籠城してしまえば集まってきた領軍に囲まれて終わりの無謀な反乱です。
ならばどうするか? 以前からクーデターを考えていたとして、僕なら事前に切り札を用意するか、領民や関係者を人質にするかしますね」
「…領民はあり得ん。もしそれでクーデターが成功したとしても、そのような行為に及べば王家が認めんだろう・・・・・まさか」
「ええ、マリィさんが危ない」
「ッッツ!!! 今すぐ早馬を手配し、ウチの使用人を迎えに行け!!!!」
「御意っ!」
領主の指示に素早く動くクリストフ。続いて領主も部屋の外に向かう。
「たかが使用人ひとり、本来なら人質にはならん! 切れ物のアーノルドの事だ、ヤツはあらゆる策を講じた上でそのような悪あがきも用意するだろう!
我は出来る限り手近な軍備を整えてくる! ここを絶対に動くな!」
「お父様…」
「ルイよ、今この街に散開している200余名、内50ほどしか屋敷内に手勢は居らん。万が一があれば先生やこの子達と逃げるがいい」
「・・・・・ご武運を」
「有無! 先生! ケロック君! 頼みましたぞ!!!」
返事を待たず扉は乱暴に閉められる。それらを見送った残りの四人は、互いに顔を見合わせる。
「大変な事になったな」
「お父様なら問題ありません。領主になってから2度、帝国軍を退けてますから」
「本来なら医者である私も動かなきゃいけないんだが、まさかここに居ろと言われるとはな」
「ルシルせんせー! 大変そうだったら行っても良いよ! お兄ちゃんもルイねーちゃんも私が守る!!!・・・・・お兄ちゃん?」
愛用の槍をブルンブルン振り回すフニランだったが、ふとケロックがなんの反応も示さないのを見て首を傾げる。
「・・・・・フニラン、ルシル先生、僕ちょっと『眠る』んで、見張りをお願いします」
「どういうことだ?」
「ルイの治療を完了させます」
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