生まれ変わったらしんでました

かんた

文字の大きさ
35 / 37
2章 命にふさわしい

バレちった

しおりを挟む
 更に十数分が経過した頃。自室で待機していたケロックの元に、領主と執事、妹、そしてルイジアナが訪ねてきた。

「気分はどう?」
「ぼちぼち。ルイの方こそ、出歩いて大丈夫?」「うん、まだ身体が突っ張って痛いから松葉杖でだけどね。【手加減EX】が仕事してくれてるみたい」
「そっかそっかーあはははは」
「そうそうーえへへへへ」


 互いに夢の中やさっきの事などが気恥ずかしいらしく、目に見えて動揺しまくっていた。




 先程の客人の件についてひと通りの説明をした後、領主であるバルディアス・バルガ・フォン・アイゼンヴァルト辺境伯は、大の字で仰向けになり涙ながらに叫ぶ。

「本っ当にすまないケロック君!!! 本来ならまずこれまでの事に礼を言うべきだが、おかしな事に君を巻き込んでしまった! 
 いっそのこと、もうこの場で婚約を決めて欲しい! そうすれば、君を我々の保護下に置く事が出来る!!! この通りだっ!!!!!」
「ちょっやめてよお父様! ってかこの通りってどの通りだ!」
「アイゼンヴァルト家口伝『五体投地から始める交渉術アントニオ猪木VSモハメド・アリ』っ」
「嘘つけ! 初めて聞いたよそんなの!!
 ごめんねケロック。当初の約束通り婚約については君の好きにしてくれてかまわないよ。後は自分で何とか出来る気がするし、ケロックも実はめんどくさかったんでしょ?」

 ルイは笑顔でそんな事を言うが、裏を返せば『巻き込まれないうちに早く逃げて』と言ってるようなものだ。

 ただ、ケロックはまだ聞きたい事があったようだ。


「フニラン、父さんは?」
「お兄ちゃんが寝込んだけどルシル先生が心配ないって言ったから、次の仕事の前に一回家帰るって。今頃らぶらぶちゅっちゅしてるんじゃない?」
「肝心な時に・・・マリィさんは?」
「知らない、あれからずっと見てないの」
「捕捉させていただきますと、ウチのスタボロスも見当たりませんな。おそらく家出に乗っていったのでしょう」

 ケロックとフニランの会話に、執事クリストフの捕捉が入る。どうやら変態メイドのマリィは何かしら性的にやらかした時、必ずスタボロスを勝手に乗って家出していたとのこと。

「あんな馬でも一応、我が領の最高戦力のひとつですからな。勝手に持ち出されると困るのです」
「というより、我の巨体を支える馬が他におらんのだ。残念な事にな」



「うーん・・・・・これはマズイかも。
 ルシル先生、あの時の魔力」
「お? 良く気づいたし、良く覚えてたな。多分お前の想像通りだよ」

 ケロックとルシルが意味有りげなセリフと視線でウンウン頷きあうのを見て、他の者が訝しむような表情をする。



「ケロック? 何がどうしたの?」
「ルシル先生、一体何が…」



「僕がいっぺん死んで生き返った時に、同じ魔力を感じたんだ。さっきのは一瞬だけだったし、あの頃のは魔力感知も無かったんだけど、かつて自分の身に受けたものだからよくわかった。つまり先生」
「ああ、恐らくーーーーーーーーーーーー」
















「・・・・・ウェルムート神官長」
「おや、どうなさいました? アーノルド殿」

 屋敷を追い出されたアーノルド一行は、いそいそと帰路についていた。アーノルドの私兵達はまだ気絶からまともに目覚めておらず、ウェルムートを除く神官が各々肩や背中を貸す形で引きずっていく。
 明らかに負け犬の様相を見せる集団に、民衆の注目が集まる中、背の低い小太りの男ウェルムートだけは、何か羊皮紙のようなものを見てニヤニヤしていた。
 惨めな気持ちになっていたアーノルドには、それが我慢ならない。

「なぜあの場で退いたのですか? その締まらない薄笑いの理由はなんです?」
「ああ、気分を害してしまったようですな。申し訳ありません。
 大した事ではないですよ? 領主殿はともかく、渦中の張本人であるご令嬢の意志が硬かったので、一度体勢を立て直すべきと判断したまでです。
 それに、なかなかの収穫もありましたからね…」

 ルイジアナが奇跡的に回復したという情報を入手した時は、病み上がりの弱った精神につけ込んでその心を揺さぶりをかけ、なし崩し的に教会に入れてしまおうとしたが、想像以上にその精神まで回復していた。
 魔力暴走はほぼ不治の病。教会でさえ、進行を遅らせて延命させるにとどまっているのが現状だ。
 彼女の希望の裏には、ケロック・クロムハーツという少年が関わっているように思えてならないし、高名な魔導師でもある医師チェルーシルがそれを認めた。

「実は、こんな物を持ち込んでまして」
「それは…【神眼の水晶】? 何でまたそんなものを」
「ルイジアナ嬢をウチで預かる事になれば、どの程度回復してるかをこの目で確認する義務がありましたからね。使
「あの小僧に? 簡易魔法陣を使った一瞬だけでは、大した情報は読み取れないのでは?」
「ええ、二、三秒ぐらいでしたかね? とても有益な情報を入手しましたよ」

 ウェルムートは水晶を懐に入れ、逆の手に持っていた羊皮紙をアーノルドに見せる。









 名:ケロック・クロムハーツ
 種族:ゾンビ(突然変異種)









「ーーーーーーーーーーーーふふっ、ふはははははははははははははははは!!!! あーはははははははははははは!!!!」


 狂ったように笑いだすアーノルドと、それに続くように笑みを深めるウェルムート。もはや民衆の目も気にはならなかった。


「素晴らしい! これは素晴らしいですよ神官長!!!」
「ええ、神罰を名目に家宅捜索出来ますし、『神敵』を庇いだてした事を弱みに突きつければ、あらゆる意見か通しやすくなる…!」
「『大貴族に潜む魔物の子、英雄の手によって裁かれる』…! 実に良い! 良いぞぉ! 血湧き肉躍る!!!」
「早速兵と装備を整えましょう。荒事になる可能性もありますから。私からは200余名の神官戦士を出しましょう」
「私もだ! ! 晴れて私は辺境伯になるのだ!!!」














「てな感じで高笑いしてるんじゃないですかね」
「想像だにかたくないな」


 軽い感じで言うが、要するにクーデターである。



ふうっ、飛んで火に入る夏の虫! 木っ端貴族が分不相応に我の首を狙おうなど片腹痛しよじれんば!! 本物の筋肉を身に纏った屈強な領兵の力、見せつけてくれるわ!!!」
「いえ、勝てると決まったわけじゃないですよ」

 雄叫びをあげるかの如く叫ぶ領主に、ケロックは意見を挟んだ。


「何故だ? 代々帝国との最前線として研鑽を積んで来た我が軍が負けると?」
「だからこそきな臭いんですよ。
 最前線であるが故に兵士のほとんどを国境付近の見張りに費やしていて、さっきのアーノルドさんと神官が素早く攻めてきたとしても、我々が籠城してしまえば集まってきた領軍に囲まれて終わりの無謀な反乱です。
 ならばどうするか? 以前からクーデターを考えていたとして、僕なら事前に切り札を用意するか、
「…領民はあり得ん。もしそれでクーデターが成功したとしても、そのような行為に及べば王家が認めんだろう・・・・・まさか」


「ええ、




「ッッツ!!!  今すぐ早馬を手配し、ウチの使用人を迎えに行け!!!!」
「御意っ!」

 領主の指示に素早く動くクリストフ。続いて領主も部屋の外に向かう。

「たかが使用人ひとり、本来なら人質にはならん! 切れ物のアーノルドの事だ、ヤツはあらゆる策を講じた上でそのような悪あがきも用意するだろう!
 我は出来る限り手近な軍備を整えてくる! ここを絶対に動くな!」

「お父様…」
「ルイよ、今この街に散開している200余名、内50ほどしか屋敷内に手勢はらん。万が一があれば先生やこの子達と逃げるがいい」
「・・・・・ご武運を」
有無ウム! 先生! ケロック君! 頼みましたぞ!!!」

 返事を待たず扉は乱暴に閉められる。それらを見送った残りの四人は、互いに顔を見合わせる。


「大変な事になったな」
「お父様なら問題ありません。領主になってから2度、帝国軍を退けてますから」
「本来なら医者である私も動かなきゃいけないんだが、まさかここに居ろと言われるとはな」
「ルシルせんせー! 大変そうだったら行っても良いよ! お兄ちゃんもルイねーちゃんも私が守る!!!・・・・・お兄ちゃん?」

 愛用の槍をブルンブルン振り回すフニランだったが、ふとケロックがなんの反応も示さないのを見て首を傾げる。


「・・・・・フニラン、ルシル先生、僕ちょっと『眠る』んで、見張りをお願いします」
「どういうことだ?」







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...