生まれ変わったらしんでました

かんた

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2章 命にふさわしい

腐った頭の住人たち

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「えー、そんなわけで、第1回『超高速脳内会議~僕の頭の住人たちEdition~』開催します」

「「「わーパチパチパチパチ」」」



 スキル【天の声】の派生【超高速脳内会議】。

 いつもの白い空間に、木製の円卓。違うのはメンバーだった。

 その見た目は、53姿



「今回議長を務めさせていただきます。性悪コピックこと【ワルック】です。どうぞよろしく」
『司会進行を務めます、サポートスキルの【天の声】です』

 最初に名乗りを上げたのは、読者の皆さんご存知ワルックである。ケロックの脳内でのみ存在出来る分身コピーであり、彼の性悪な面が色濃く表に出てきた個体だ。
 その性格は冷徹なサディスト。ルイジアナをイジメた光景なんかは、完全に事案だったと記憶している。



「まず出欠を取ります。天さんどぞっ」
『ハイ、オリジナルのケロックこと【オリック】さん』
「はーい」

 声だけで応えるのは我らが主人公主人格【オリケロック】である。なぜ彼が議長ではないのかと言うと、小さな紙に無数の魔法陣を描いているからだ。
 彼の席の周りには、記憶の【書庫】から引っ張り出した本が砦のように積まれており、本人は書き殴っては丸め書き殴っては重ねてと忙しそうであった。



『続いて、怠惰なコピックこと【ダルック】さん』
「・・・・・・・・・・あ゛?」
「コイツいらなくね?」

 ここからが新キャラ。椅子に腰かけず、円卓の上で寝そべってヨダレを垂らすのは【ダルック】と呼ばれる分身コピーである。
 本人の面倒くさがりな性格が前面に押し出されており、働かないが故に合理的かつ最短距離の意見を出してくれる。稀にだが。




『病んだコピックこと【ヤミック】さん』
「どうせみんな死ぬんだ…もう死んでるけど…」
「え? 何? まともなヤツいないの?」

 椅子の上で体育座りをして俯いているのは、影のように真っ黒なシルエットの【ヤミック】。
 彼の卑屈な部分が前面に押し出されており、正直数合わせで分離してもらった感が否めない役立たずである。



『最後に、ビビり屋コピックこと【ヘッジホック】さん』
「怖いから帰っていいですか!」
「帰して良いと思う。見ててかわいそう」

 涙目になりながらも潔く逃亡宣言をするのは、ケロックの心の野獣ハリネズミ【ヘッジホック】である。
 あらゆる場面において逃げ腰であり、卓越した危険察知能力を持つ。今もこの状況がすっごいストレスなのか、その針は1本、また1本と抜け落ちていく。



「・・・・・なんでこんな負の感情ばっかなの」
『基本的にネガティヴ過ぎるんですよ』

「まあ良いや、全部『僕』だし。
 えーと今回の議題は『ルイジアナ魔改造計画』です。事の経緯をどうぞ」
『ハイ。対象はルイジアナ・トッカータ・アイゼンヴァルト12才女性。魔力を力に変換するスキル【身体強化】が魔力暴走により暴発。スキル【怪力】も相まって一時的に半身不随状態に。
 その後【ワルック】さんにより荒療治ではありますが応急処置が完了。このままゆっくり回復させたかったところを、どこぞの馬鹿貴族が攻め込むという状況によって急がざるを得なくなり、緊急ではありますが『最終段階』に移行すべきと判断しました。
 現在【超高速脳内会議】により思考の高速化と並列処理を進行中、このように会談の場を設けた次第です』

「とまぁこのように一刻の予断も許さない状況ですが、『むしろ何故この状況下で治療を進めるの?』という疑問が湧いた事かと思います。えっと、わかる人いる?」

「ルイちゃんを最強にして僕が逃げるため!!!」
「【ヘッジホッグ】君、半分正解です。
 この治療には、敵の目的の1つであるルイを強化する目的もあります。
 何度も帝国を退けた救国の英雄:バルディアス・バルガ・フォン・アイゼンヴァルトや、
 元Sランクで伝説の冒険者だった、ガルド・ローエン・アイゼンヴァルトに次ぐ実力者になれば、ルイを狙ってる連中を撃沈させる事が可能になる。彼女にはそれだけのポテンシャルがあります」

「くっつけたい魔法陣は決まってるのに…どうせ何か問題があるんでしょ…こうやって会議するくらいだし…」
「それについては、オリジナル?」

、キャンバスが圧倒的に足りないんだ」
「ほらダメじゃん…時間無いし…もう潔く死のう…」

表面皮膚じゃなくて体内に書き込めば良いんじゃない?」
「入れ墨でやるのにどうやって書き込むんだよ、物理的に無理だろ」

「良い事考えた…命がけでルイを守れば…死んでも文句言わないでしょ…」
「お前は死ぬ理由が欲しいだけだろ」
「僕はゾンビだから…存在しちゃいけない…せめて有効活用…」
「やだ死にたくないよー! うえ~ん!」
「泣くな【ヘッジホッグ】、怖がらせるんじゃない【ヤミック】」

「あのさぁ、作業の邪魔すんなら、まとまってから来てくんない?」
「うるせえしだりぃ」
「「「『僕』の為に考えてんだよ!!! あと【ダルック】も少しは考えろ!!!!」」」



「さっきから黙って聞いてればさ、揃いも揃って頭硬いんでない?」
「「「え?」」」


「かったるいからヒントだけあげる。
 まず1つ目、魔法陣学者クリストファー・マーベリック著【魔法陣の基礎】あとがき」
『『この世界は全て【魔法構築式】で説明できる』でしたか? 理論上、それさえ紐解けばもう一つの世界が創造可能だと』

「・・・これって前世の何かに似てるような」
「…前世の記憶…曖昧…死にてえ…」
「あっ、【アカシックレコード】だよ。確か都市伝説の」
「宇宙を構成する情報? 記録? まあプログラム的なやつで、そこに至れる人は全ての答えを知ってる的な都市伝説か」
「それがこの世界の【魔法構築式】? 
 それってどうやって知るの? 探すの時間足りないよぅ」

「そこで2つ目、そこのクシャクシャに丸めたり重ねたりしたメモ」
『「「「え?」」」』


「・・・・・失敗した魔法陣の山? これがなんの役に立つの?」
「…なるほど、これを書き込んで無理心中…信じてくれるあの子殺して…『僕』も死のう…」

「これだけ丸めて小さくなれば、魔法陣書き込めるかなぁ」
「折り曲げたら使い物にならないだろ・・・・・ん? ?」


「都市伝説で思い出したけど、次元の話あるじゃん。
ゼロ次元】の『点』から始まり
【一次元】は『線』の世界
【二次元】は『面』の世界
【三次元】は『立体』の世界
【四次元】から先は…忘れた」

「立体は面の集まり
 面は線の集まり
 線は点の集まり…って考えたら、あらゆる物は全て無数の点で出来てるとも言えるんじゃ?」
「それは【分子】【原子】【素粒子】の考え方とも言えるでしょ、物理学かなんかの」



「・・・・・そっか、!!! 
 限りなくゼロに近い小さな点が、線になって式を書き、魔法陣を作り、重なり、それをまとめて点に集めて線を引く・・・・ちょうどあの積み上がったボツ魔法陣みたいに!!!!」

「でも入れ墨じゃ書けないよね?」
「前世のアカシックレコードのように魔法構築式として記録が残ってるなら、?」


「…魔力で出来ない?」
「なるほどね。透明でも良いけど、ちょっと光らせながら空中で線を引いてみよう」
「これ自体魔力操作の訓練にしかならないんだよねー。魔力単体だと透過しちゃうから」
「だからこそ、!!!! あとは実践だよ!」

「この魔法陣と、この魔法陣を重ねて…いや、平行じゃなくて交差させよう」
「この魔法陣の寄せ集め、いっぱいになれば球体に近くなるよね」
「そうだね、球体になったよ。これをググッと縮めると・・・・・・・・・・・・出来た、あっさりと。

「別に平面図形にする必要なくない? 遺伝子みたいに螺旋状に描いてそれを輪っかにして縮めるとかもできるしさ」
「そっちの方がバランスが良い!!!! あらゆる形を試してみよう!!! 最終的に安定させなきゃだからさ!!!」

「【天の声】! 至急ルイの身体の情報を! 出来るだけ精密に!」
『かしこまりました』





 各々が違った性格の彼らだったが、話がまとまってくるにつれ、その境界は曖昧なものになっていく。

(あなた達は気づいてないのでしょうね。いまやってる事が、だという事を)

 次々と色んな案をひねり出し実践していく、ケロックとそのコピー達を見て、【天の声】は静かに告げるのだった。






『スキル【創造魔法の基礎】を取得しました』
















「・・・・・綺麗」


『天の声』派生スキル『超高速脳内会議』は、現実の12倍の速度で時間が流れる、5分が1時間の世界。



 現実で眠っているケロックの背には、脳内で描く12倍の速度で、

 

 極細の線が小円の魔方陣を作り、そこに複数の魔方陣があらゆる角度で重なって、球体になり、収縮する。その点が再び極細の線を引き、魔方陣を形成する。
 また、それらの点が螺旋らせんを描き、それらも収縮して極細の線に変わり、魔方陣を形成する。

 そんな小規模の形成が一度に数セット発生し、互いにぶつかり合い揉み合い吸収しあって、流動的に形を変えていく。
 最終的に、それらは幾何学的な繋がりをもって、巨大な光の翼をかたどっていた。




 ルイジアナとフニランの二人はその美しさにぼんやりと見上げる事しか出来なかったが、ルシルだけは別段驚きもせず杖を振り、何かしらのサポートをしているようだった。

「ったく、ぶっつけでなんちゅー悪魔的な発想だよ。誰にも追いつかないスピードで陣を組んで、それらを無理のない範囲で変形と連結を繰り返す。私でもこれで何をしようとしてるのか読めんわな」

 せいぜい追いつく範囲で援護する程度か? そう呟きふと、ルシルは出会った頃を思い出した。


 ぼんやりとしながらもここではない何処かを見つめるような眼差し。
 研究者肌だと感じたし、学びの意志があったからこそ本を貸したりもしたが、ろくに教えたりもしていない。
 それなのに、ここに来て彼の魔法は大幅な上達を得て、魔方陣だけで言うなら長年研鑽を積んできたはずのルシルさえあっさりと越えてくる。

 転生者の記憶? 加護や祝福スキル? 思えば、それだけでは説明出来ない何かを、あの診察ファーストコンタクトから感じていた。


「・・・・・こんな事が繰り返されるなら、長生きしても良いかもしれないな」

「「ルシル先生!!!!」」
「ん?」



 150年生きてきて、ここまで物思いにふける事は相当珍しいのだろう。





 その時、自らに迫る凶刃に、ルシルは気付く事が出来なかった。
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