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華麗なる少年王の半生

麗しき少年王と美貌の騎士

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この愛の狩人、もとい美貌の騎士様の名は、アルベルト・フォン・ロイエンタール。

先日、第一王子専属の近衛騎士から、国王付きの近衛騎士になった。
つまり、ずっと俺のターン! じゃなかった。俺の騎士である。


十年くらい前から近衛騎士として俺の傍にいるわけだが。
未だに何を考えてるのか、いまいちよくわからない。

名前に”フォン”がつくのはこの国では貴族だけで。さらにロイエンタール家は先祖には王族もいるという、名門中の名門、大貴族。公爵家である。
しかもアルベルトはそのロイエンタール家の長男。嫡子で。次期公爵だというのに。

いくら王族付きの近衛騎士は狭き門、花形職業であり身分も男爵の血族以上の貴族でないとなれず、なれたら箔が付くといっても。本来、ロイエンタール家ほどの大貴族がしなくてもいい仕事だ。

ロイエンタール家なんて、その気になれば何もしなくとも死ぬまで遊んで暮らすのも余裕なくらいの家柄だってのに。わざわざ毎日城に泊まり込みで働いて、苦労したいなんて気持ちは、俺にはこれっぽっちも理解できない。マゾなのだろうか。
それとも逆に、恵まれているがゆえに働きたくなるのだろうか。俺は働きたくないでござる。


アルベルトは16歳の時に自ら望んで騎士になった変わり者だが。
花形職、近衛騎士に配置されるだけあって、顔がやたら良い。何ならこの国で一番といえる。

近衛騎士は王族の一番側につく騎士で、表舞台でも見られることが多い。それにどうせ毎日目にするなら美形なほうがいいよね! ってことで。
近衛騎士になるには、剣の腕はもちろん、顔面偏差値が高くないとなれないのである。
ナイトだけに、顔がよくないと☆

くっ……突っ込み不在のダジャレは虚しい……。

でも、考えずにはいられないの。
悲しきオタクのサガというやつである。


*****


精巧な人形みたいに完璧に整った顔。
灰色がかった金髪……アッシュブロンドに、藤色に青を混ぜたような、何とも不思議な色の目が魅力的で。
背もすらりと高くて、顔だけじゃなくスタイルも良いときた。
鍛え上げられたその肉体を包むのは、金糸に縁どられた白い軍服にロイヤルブルーのマント。
腰には飾りではない剣。そして、剣の腕は国で一番という。

家柄もお育ちも良く。
仲間と歓楽街に繰り出したり陰口も言わず賭け事もしない。メイドにセクハラしたり、下ネタに興じることもない。
よく気が付くし爽やかで、性格も優しいとか。

本当にこいつ、何者なんだ? アンドロイドか完璧超人かよ。


必死にアラを見つけようとして己の心の醜さに落ち込むより、むしろ逆ギレして腹が立ってくるくらい、欠点の見当たらない男だ。
非の打ち所のない、美貌の騎士様である。

もうお前が王子様になれよって感じ。


今や俺は誰もが見惚れる美少年で。異世界の知識もあってか、聡明で一国の王様というオンリーワンでナンバーワンな立場であるのだから。別に、イケメンに対して嫉妬する必要はないのだが。
これは男の本能ともいうべき悲しきサガである。
マウント取りたい病。


だって、自分と比べても、女にもてるのは絶対こっちだろ。ムカつく。
腹立つほどイケメンなんだもん!

とか、美少年らしくかわい子ぶった言い方してみたりなんかして。


*****


「アルベルト。お前もリリエンベルグに行って、試してみないか? 案外、お前が伝説の勇者で。あっさり引き抜いてしまうかもしれないぞ?」
からかうように言ったら。

「私が、ですか?」
アルベルトは、困惑げに首を傾げた。

隠れ見てるメイドとかから、憂い顔も麗しいとか言われてるんだろうな。知ってる。


「万が一にも、そうであろうと。常に陛下のお傍にお仕えし、御身をお護りするのが私の役目ですので」
アルベルトは真顔で答えた。

常に職務に忠実で、生真面目な男である。
こういうところもモテるんだろうな。

メイドたちがアルベルトに憧れの視線を向けているのを良く見る。メイドだけでなく、男の兵士からも憧れの視線を向けられているのだ。
老若男女問わず大人気の騎士様である。


俺も、老若男女問わずからきゃあきゃあ言われるが、意味が決定的に違う気がする。
キャーヤダー愛玩動物カワイー、のキャーだ。

キャーヤダー不快害虫見ちゃったキモーイのキャーよりは断然いいのだが。
ヤダー、の意味が本気の拒絶とか、思い出すだけで泣ける。

……いや、過去の俺は死んだのだ。

前世の記憶を思い出して落ち込んでる場合ではない。
現実を見ろ。

今や俺は、完璧な美少年王じゃないか。
どう考えても勝ち組だ。

ヤッター!


……というか。
本気で何とかしなければいけないのは、こいつの婚活ではなかろうか。

強敵には、消えていただこう。物理的にではなく。


*****


アルベルトは確か、今年25歳になるくらいだ。
この世界においては、いい加減嫁がいてもおかしくない年齢なのに。

嫁も貰わずにずっと俺の傍にいて、何が楽しいんだろうか?
もはや性欲とかを超越して、孫を見守る爺さんの境地にいるのかもしれない。
枯れないで!


生まれ変わっても俺の中身はアレなままなので。相変わらず、リア充を見る度に爆発しろ、とか思ってしまうが。それはサガなので置いといて。
この美貌の近衛騎士にはさっさと所帯を持たせて、いい加減モテ王ナンバーワンの座から退いてもらわなくてはならない。

この国では、不倫は大罪だ。
ナンバーワンが結婚して第一線から離れれば女性たちも諦めて、他を探すだろう。


たとえば、この俺とかな!
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