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はじめの夏の国

情熱的な王様に絆されて

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「んん、」

甘い舌が。
口の中に、入ってくる。

こんなの、味見じゃないだろ。

後頭部を支える手が。耳の下をくすぐって。ぞくぞくする。
吐息も甘い。

抵抗する気が、なくなってくる。


『王よ、御戯れは、その辺りでおやめ下さい』
ラクさんの鋭い声に。

状況を思い出した。

みんな、いるんだった。

みんな、びっくりした目で、こっちを見てた。


恥ずかしくて。
慌ててウルジュワーンから離れて。思わず、ハルさんの背後に回った。ここはセーフティーゾーン!

『あらあら、油断も隙もないね。ウーさんったら』
よしよし、と頭を撫でられる。


『ごちそーさまでーす』
ダルさんが言って。ダッシュで調理場を出て行った。

どうしたんだろ?

『あっ、貴様! 私はまだ、一口も食べてなかったというのに!!!』
ラクさんがマジ切れして、それを追い掛けて行った。


あらら。
そんなに怒らなくても。

アイスくらい、言ってくれれば、また作るのに。


◆◇◆


アイスの試食会も終わり、部屋に戻った。
というか、逃げ帰ったようなものだ。

人前でベロチューかまされて平気でいられるほど、俺の面の皮は厚くないのだ。


お風呂に入ってたら。
ウルジュワーンが風呂場に乱入してきた。

堂々と、全裸のまま。自分の部屋からここに来たようだ。
唖然としてたら。

湯船にまで、一緒に入って来て。


『もう、痛くはないだろう?』
と、甘く囁かれて。

抱き締められながら、キスをされてしまったら。
もう、駄目だった。

抵抗なんて、できない。

見てると正気を失いかねないレベルの超絶美形な上に、腰が抜けそうになる美声とか、ずるすぎる。

そっちこそ、戦略兵器だよ。
こっちはその顔、当たり前でもなんでもないし、耐性もないんだからな!?

なんか、やたら手馴れた感じがして、上手いし。


右手だけが恋人だった俺なんて、勝ち目はなかった。
完全白旗だ。


◆◇◆


風呂で、散々イタズラされた後。
ぐったりしてるのを、王の寝室に連れ込まれて。

香油をたっぷり使われて、あそこを慣らされて。


うつ伏せで、腰だけ高く上げさせられた状態で。
後ろから、一気に貫かれた。

「う……っく、ああっ、」

腹を突き上げられた衝撃で、イってしまった。
これって。

話に聞く、トコロテンってやつじゃないのか……?


俺、後ろでこんなに感じるようにされちゃったんだ。

ごく普通の、男子高校生だったのに。
それなりに夢を持ってたファーストキスも、初めてのエッチも。

異世界の王様に、持ってかれてしまうなんて。


その上、めちゃくちゃ求愛されてるし。
俺、そんな魅力ないだろ?

こんなの、絶対おかしいだろ。
何でこんなことになっちゃってんの!?


『イチ。……余の名を、呼んでおくれ。ウージュ、と』
甘い声で囁かれて、ぞくぞくする。

「ひゃぅ、」
ぐい、と腰を押し付けられて。

お尻に、陰毛が触れて、くすぐったい。根元まで、入れられちゃってるんだ。
ウルジュワーンの、大きいのを。


中から胃を圧迫されてるみたいで、息苦しい感じがする。
確かに、俺の中に、入ってるんだ。

他人の脈動を、こんな風に感じるなんて。


『イチ、』

猫にするみたいに、喉元をくすぐられて。
懇願される。

「う、……ウージュ……?」
『ああ、これが、幸福というものか。愛しい者から名を呼ばれる、この高揚が』

ぎゅうっと抱き締められて。
中のものが、更に大きくなった気がした。


◆◇◆


「あ……、ぁう、」

腹の中に、ウルジュワーンの精液を出されてるのがわかった。
熱いのが、いっぱい出てる。


『子をたくさんもうければ、イチは珍しくなくなる。外にも出られるぞ?』

だから。
自分を愛して、いっぱい子供を作ろうって言いたいのか?

何だよ、その口説き文句。
普通に言えよ。

『……愛している、イチ。たとえ子を授からなくとも、生涯、離しはしない』

うわあ。
普通に言われても、めちゃくちゃ恥ずかしい。


耳まで真っ赤になってるのが、自分でもわかる。
顔全体、熱くなってるし。

身体をひっくり返されて。
正面から、抱かれる。ウルジュワーンはまだまだ元気なようだ。


『ふふ、可愛いな』

かわいくない。
俺は、普通だっての。


ウルジュワーンは別の意味でのヤる気に満ち溢れていて。
今夜も、当分終わらせてくれそうにない。

また、筋肉痛になっちゃいそうだ。


こんな困った王様。
……もう、受け入れるしか、ないか。


「……ウージュ。もっと、」
逞しい背に、手を回して。王様の寵愛をねだった。

元気すぎる王様は、俺が気を失うように眠りに落ちるまで。
俺のことをぎゅっと抱き締めて。精を注いでいた。


夢うつつに。

二人の間に。
赤ん坊がいたのを、見たような気がしたけど。


◆◇◆


……ここ、どこだ?


森の中か?
木立を吹き抜ける、爽やかな風。

足下には、朝露に濡れたような、芝生のような草が生えている。

朝だろうか?
小鳥が鳴いてて。木の間から、やわらかな日差しが降り注いでる。


あれ? ウルジュワーンは?

額に触れてみると。……印が、消えてる。


どういうことだ?
自分の姿を見下ろせば、ちゃんと服を着ていた。

夏期講習に出かけた、あの時と同じ格好。

あれは。
あの世界は。



……夢、だったのか?
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