黒髪黒目が希少な異世界で神使になって、四人の王様から求愛されました。

篠崎笙

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砂漠にて

黒ポメの背に乗って

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「え、何、今のなんの音!?」

周囲を見回しても、何もなかった。


視線を黒ポメに戻すと。
見るからにへばっていたのが、すっかり元気になっていた。

目は輝いてるし、鼻も湿った感じで。毛もつやつやして。
めっちゃ嬉しそうにしっぽを振っている。

まるで状態異常及びヒットポイント全回復でもしたかのような回復っぷりだ。


……何らかのイベントでもクリアした感じ? ゲーム仕立ての夢だったのか?
変な夢だな……。


†††


「まあとにかく、元気になって良かっ……うひゃ、へあああっ!?」

いきなり身体が宙に浮かび上がった、と思ったら。
ぽすん、とやわらかな毛に包まれた。

黒ポメが俺の襟首に噛み付いて、自分の背中へ放り投げたのだ。


「せめて何か、前フリのアクション起こしてくれよ。超情けない声だしちゃっただろ~」
痛くはなかったけど。めっちゃびびった。

「くぅん」
ごめんね、と言ってるようだ。しっぽも下がってる。

「もういいよ、びっくりしただけだよ。よしよし」
頭を撫でてやる。


ふあああ!?

……なんだ、この手触り。
今まで触った犬毛の中でも、最上級といえよう。

いつまでも撫でていたい、この撫で心地。
あ~、もふもふ。しあわせ。

俺、わんこの背中に乗るの夢だったんだよな。
いやこれ夢なんだけど。


この世の至福を味わっていたら。

いつの間にか、黒ポメは走り出していたようだ。
結構なスピードで走ってるっぽいのに、背中は全然揺れてないし、風圧も感じない。

どうなってるんだ?
って。
これ、夢だった。

ま、夢なら何でもアリだよな。


†††


しばらくして。

ずっとパステルブルーの砂だらけだった地面が、グラデーションみたいに薄くなってきてるな、と思ったら。
今は、紫色の草っぽいところを走っているんだけど。……これ、草だよな?

もしかして、これ、草原なのかな? オアシスとかだったり?


あまりにも見慣れた景色とは違い過ぎるんで、あの物体は何なのか、ちょっと悩んだけど。
周囲には森っぽいものがあって。そこには赤っぽい紫や青っぽい紫の葉っぱの、木だと思われるものが生えている。
木の幹がターコイズブルーだったり群青色のツタが這ってたりしてるんで、自分の目を疑ったよ。

でたらめなカラーリング過ぎる。
まるで、幼稚園くらいの子供が色を塗った絵本の中みたいだ。

ピンクとパステルブルーの砂漠よりも目がチカチカしそう。


森の向こうに見える緑色は、海だろうか? 波が空の色を反射して、キラキラ光ってる。……太陽無いのに、反射はするんだ。空自体が発光してるのかな?

潮風のにおいがしてきた。
やっぱり海だった。


砂はパステルブルーで、空はパステルピンク。草原は鮮やかな紫色。海は緑色。

世にもキテレツな色彩なのに。
どうしてか、すごく綺麗だな、と思った。


†††


森というか草原を抜けて、しばらくしたら。

今度は、白い砂の砂漠みたいな場所に出て。
薄い水色と青、濃いピンクで彩られた、モスク? みたいな建物が見えた。


「……わあ、」

タマネギみたいな屋根で。細かいタイルの細工がまた、見事だし、綺麗だ。
アラブの王様がいそうな建物って感じ?

ピンクの空に、すごくよく合ってる。
インスタ栄えしそう。

こんな景色、女子とかが見たら大喜びするだろうな。
投稿しようにもアカウント持ってないけど。

そもそも、スマフォすら持ってないんだけどな!


だって俺、友達いないし。連絡ツールとか、必要ないもん。
どうせ連絡先なんて、両親と兄姉きょうだいくらいしか登録しないだろうし。実際、パソコンのメールボックスには家族か業者メールしか来てない。

パソコンさえあればゲームもできるし本も読める。知りたい情報も得られるし。
友達と遊ばなくても問題ない。


道に迷ったりした時には必要かもしれないけど。
家と学校を往復するだけで、一人で外出とかしたことないから迷わないし。

買い物に行こうとすると休日は親父か母ちゃん、平日だと兄ちゃんか姉ちゃんがついてくるし。

入院して、はじめて必要だったかなって思ったけど。毎日のように家族の誰かが見舞いに来るから、スマフォなんていらないもん。
……違うし。強がりとかじゃないし!


†††


……泣きたい気持ちを黒ポメの頭を撫でることで落ち着かせることに成功。
さすがわんこは古来より人類の友であり、癒しなだけある。


大丈夫、泣いてないよ。
こいつは心の汗だ。

男の子は泣いちゃいけないんだ。
いいか、男が泣いていいのは、脛を打った時と小指を柱の角にぶつけた時だけだからな?

え、股間をぶつけた時? それは泣くどころじゃないよ。ただ悶絶するだけだよ?

骨折った時も、めちゃくちゃ痛かったけど泣きはしなかったな。
俺ってば強い子?


などと寝ぼけたようなことを言って黒ポメを困惑させているうちに。
モスクみたいな建物のすぐ近くに来ていた。

城門っぽい扉の前で、黒ポメは停止した。
どうしたのかな、と思ったら。


「ウォォーン!」


と。
まるで、オオカミみたいなかっこいい声で吠えたのだった。


お前、俺の前ではキュンキュン可愛い声出してたのに。
こんな吠え方できたのかよ!?

今まで猫被ってたの? 犬なのに!?
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