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奈津Ⅰ
Non vedo l‘ora di vederti(会える日が待ちきれない)
あきちゃんだいすき。
おとなになったらケッコンしようね。
やくそくだよ!
◆◇◆
幼稚園に入ってしばらくしてのことだった。
「パパとママも、結婚する前は別のところに住んでたけど、結婚して同じ家に住むようになったんだって」
幼児でも、女である。中には少々ませた子もいた。
「だから、わたしと結婚して!」
「え、やだ。いっしょにいるならあきちゃんがいい」
お互いのことが好きな二人は、”ケッコン”したら大人になっても一緒の家に住むことできる。”好きな人”と、ずっと一緒にいられる。
『ケッコン』という、魔法のような言葉を覚えた俺は。
実の兄である亜樹に、何度も「ケッコンして!」とプロポーズをしては、両親や近所の人に笑われていた。
といっても、微笑ましい笑いだったが。
俺の本気を笑うなんて、と。当時俺は本気で腹を立てていたものだ。
子供ってのは小さい頃、親兄弟に対してプロポーズするのはわりとよく聞く話らしく。他でも、幼い頃の微笑ましい失敗談として、ちょくちょく話されるほど珍しくはないようだが。
実際に、俺の本気の初恋は亜樹だった。
性の目覚めも。
それは、亜樹と風呂に入って、その白い身体を見てしまったことからだ。
雄の持つ、本能的な衝動というやつだろうか?
精通もまだだったというのに。亜樹のその、白いくやわらかそうな肌に、何故か股間をこすり付けたくてたまらなかった。
だが、その衝動は必死に我慢した。
幼心にも、それは、してはいけないことだと理解していたのかもしれない。
今まで、他の誰にも、ここまで強烈な劣情を催したことはない。
亜樹はまさか、実の弟がそんな目で兄である自分を見ているなどとは、考えもしなかっただろう。
”普通”なら、当たり前のことだ。
亜樹は、幼い俺が抱きつくのを、甘えてじゃれているのだと思い、喜んでいた。
プロポーズの言葉を聞いても、子供の言うことだと聞き流していたのだろう。
◆◇◆
両親の離婚で、俺が外国に連れて行かれる前日の夜。
結婚すれば、亜樹とずっと一緒にいられる。
だから結婚して欲しい、と言った俺に。
亜樹は言った。
「20年経っても。相変わらず僕のことが好きだったら、いいよ」
約束の指切りをして。
泣き疲れて寝て。
目が覚めたら、飛行機の中だったのだ。
自分はまだ、ちいさくて無力な子供だから、大好きな人と引き離されてしまった。
大人にならないと。
自分で働いて、金を稼いでやる。約束の日までに、立派な大人になって。
そしたら、堂々と迎えに行こう。
亜樹と結婚して。
亜樹を俺の嫁にするんだ。
それだけの思いで、必死で勉強し、身体を鍛え、努力した。
俺からは、連絡しなかった。
下手に亜樹の声を聞いたり、メールを見てしまったら。
直接、その声を聞きたくて。
実際に、顔を見たくなって。
すぐにでも日本に帰りたくて、たまらなくなってしまうだろうことはわかっていたからだ。
「あんなに亜樹にべったりだったのに。金髪娘に鞍替えしたのかしらね?」
マンマは必死に我慢している俺を、鼻で笑った。
嫌がっていたのを無理矢理連れて来た張本人がよく言う。
日本ならともかく、外国では普通に虐待で訴えられる悪魔の所業だ。もし俺が訴えれば自分は牢獄行きだとわかってるのか?
いや、マンマは何もわかってない。
ずっとべったりだったから、別れがことさらつらくて。
会えないならいっそ、声も聞きたくない、という切ない男心を理解できないのだろう。
たまに伝え聞く近況で、亜樹が20歳で漫画家になったこと。
引きこもりがちで、未だ恋人もできていないことを知り、安堵したものだ。
亜樹からのメールの返事を急かす俺に、そんなに亜樹のことが気になるなら、自分で直接連絡したら? などとうんざりした顔で言われたが。
男は一度、こうと決めたことは変えないものだ。
親父が死んだと聞いても、戻らなかった。
俺はまだ、一人前じゃない。
亜樹を支えられるような、立派な大人になってからでなければ、会えないからな。
◆◇◆
外国は日本とは違い、基本、実力主義である。
能力のある人間を、画一的な教育で押し込めたり、狭い場所に閉じ込めたりしない。
人種的な問題もあるにはあるが。
際立って能力のある人間には、それなりの称賛を与えられる。
亜樹への情熱は全て勉強や自身の立場を向上させるために使い、高校も大学も主席合格し、飛び級で卒業した。
たまたま応募したコンコルソ・フォトグラフィコで賞を取り。
写真家に気に入られ、師事を得、助手を経験したのちに、写真集を出すまでになった。
サムライとか呼ばれて、切れ味のある写真だと評価された。
俺が新進気鋭の写真家として評判になったのは、業界で名の売れた師匠に気に入られたのもあるが。まだ18という若さと、40を過ぎてもいまだに若々しく美人だと評判の母親に似たこの容姿のせいもあっただろう。
さすがに自分の腕だけでのし上がった、とまでは自惚れていない。
環境のせいだろうか?
背も伸び、鍛えれば鍛えるだけ筋肉がついた。
モデッロの真似事もしたことがある。
本を売るには、実力だけでなく、知名度も大切だった。
芸能や出版業界に関わることで、いいことも、いやなことも山ほど経験した。
女だけでなく、男からの求愛も絶えずあったが。
試しに付き合ってみても、どれも三日も持たなかった。
何をしても誰といても、俺の心の中の亜樹がちらついて。
どうしても、相手に対して愛情がもてなかった。
自分の性癖に悩んだこともある。
実の兄しか愛せない自分は、どこかおかしいのではないかと。
カウンセリングを受けてみたりもしたが。
どうしても忘れられなかった。
どんな美男美女であろうとも、俺の心は揺らがなかった。
俺の心を揺るがしたのは。
唯一、実の兄である亜樹だけだった。
◆◇◆
そうして。
とうとう、約束の20年目が来てしまった。
やはりどうしても、亜樹のことが忘れられなくて。
仕事を理由に、日本へ一時帰国することを決意した。実際に会いさえすれば、この狂おしい想いもどうにか変化するだろうと思って。
まずは家族滞在ビザを申請。
亜樹に同居がしたいと連絡を入れたら、もちろん、奈津の家でもあるんだから気にしないで戻っておいで、と快諾された。
亜樹は優しい亜樹のままだった。
それなら、と即ビリエットを取り。
カメラと札入れと携帯電話だけを手にして、家を飛び出した。
必要な荷物は後で送るようディレットーレに頼んで。
飛行機で約13時間。
期待と不安を胸に、日本へ降り立った。
20年だ。
亜樹も、35歳になっている。
いい加減、15歳の、綺麗な少年のままではないだろう。
いっそ、亜樹が冴えない、汚いオッサンになっていることを祈った。
幻滅して。がっかりして。
この、刺さったままで抜けないトゲみたいな。長かった初恋を卒業できる。
そうして俺は、ようやく新しい恋を探せるはずだと。
おとなになったらケッコンしようね。
やくそくだよ!
◆◇◆
幼稚園に入ってしばらくしてのことだった。
「パパとママも、結婚する前は別のところに住んでたけど、結婚して同じ家に住むようになったんだって」
幼児でも、女である。中には少々ませた子もいた。
「だから、わたしと結婚して!」
「え、やだ。いっしょにいるならあきちゃんがいい」
お互いのことが好きな二人は、”ケッコン”したら大人になっても一緒の家に住むことできる。”好きな人”と、ずっと一緒にいられる。
『ケッコン』という、魔法のような言葉を覚えた俺は。
実の兄である亜樹に、何度も「ケッコンして!」とプロポーズをしては、両親や近所の人に笑われていた。
といっても、微笑ましい笑いだったが。
俺の本気を笑うなんて、と。当時俺は本気で腹を立てていたものだ。
子供ってのは小さい頃、親兄弟に対してプロポーズするのはわりとよく聞く話らしく。他でも、幼い頃の微笑ましい失敗談として、ちょくちょく話されるほど珍しくはないようだが。
実際に、俺の本気の初恋は亜樹だった。
性の目覚めも。
それは、亜樹と風呂に入って、その白い身体を見てしまったことからだ。
雄の持つ、本能的な衝動というやつだろうか?
精通もまだだったというのに。亜樹のその、白いくやわらかそうな肌に、何故か股間をこすり付けたくてたまらなかった。
だが、その衝動は必死に我慢した。
幼心にも、それは、してはいけないことだと理解していたのかもしれない。
今まで、他の誰にも、ここまで強烈な劣情を催したことはない。
亜樹はまさか、実の弟がそんな目で兄である自分を見ているなどとは、考えもしなかっただろう。
”普通”なら、当たり前のことだ。
亜樹は、幼い俺が抱きつくのを、甘えてじゃれているのだと思い、喜んでいた。
プロポーズの言葉を聞いても、子供の言うことだと聞き流していたのだろう。
◆◇◆
両親の離婚で、俺が外国に連れて行かれる前日の夜。
結婚すれば、亜樹とずっと一緒にいられる。
だから結婚して欲しい、と言った俺に。
亜樹は言った。
「20年経っても。相変わらず僕のことが好きだったら、いいよ」
約束の指切りをして。
泣き疲れて寝て。
目が覚めたら、飛行機の中だったのだ。
自分はまだ、ちいさくて無力な子供だから、大好きな人と引き離されてしまった。
大人にならないと。
自分で働いて、金を稼いでやる。約束の日までに、立派な大人になって。
そしたら、堂々と迎えに行こう。
亜樹と結婚して。
亜樹を俺の嫁にするんだ。
それだけの思いで、必死で勉強し、身体を鍛え、努力した。
俺からは、連絡しなかった。
下手に亜樹の声を聞いたり、メールを見てしまったら。
直接、その声を聞きたくて。
実際に、顔を見たくなって。
すぐにでも日本に帰りたくて、たまらなくなってしまうだろうことはわかっていたからだ。
「あんなに亜樹にべったりだったのに。金髪娘に鞍替えしたのかしらね?」
マンマは必死に我慢している俺を、鼻で笑った。
嫌がっていたのを無理矢理連れて来た張本人がよく言う。
日本ならともかく、外国では普通に虐待で訴えられる悪魔の所業だ。もし俺が訴えれば自分は牢獄行きだとわかってるのか?
いや、マンマは何もわかってない。
ずっとべったりだったから、別れがことさらつらくて。
会えないならいっそ、声も聞きたくない、という切ない男心を理解できないのだろう。
たまに伝え聞く近況で、亜樹が20歳で漫画家になったこと。
引きこもりがちで、未だ恋人もできていないことを知り、安堵したものだ。
亜樹からのメールの返事を急かす俺に、そんなに亜樹のことが気になるなら、自分で直接連絡したら? などとうんざりした顔で言われたが。
男は一度、こうと決めたことは変えないものだ。
親父が死んだと聞いても、戻らなかった。
俺はまだ、一人前じゃない。
亜樹を支えられるような、立派な大人になってからでなければ、会えないからな。
◆◇◆
外国は日本とは違い、基本、実力主義である。
能力のある人間を、画一的な教育で押し込めたり、狭い場所に閉じ込めたりしない。
人種的な問題もあるにはあるが。
際立って能力のある人間には、それなりの称賛を与えられる。
亜樹への情熱は全て勉強や自身の立場を向上させるために使い、高校も大学も主席合格し、飛び級で卒業した。
たまたま応募したコンコルソ・フォトグラフィコで賞を取り。
写真家に気に入られ、師事を得、助手を経験したのちに、写真集を出すまでになった。
サムライとか呼ばれて、切れ味のある写真だと評価された。
俺が新進気鋭の写真家として評判になったのは、業界で名の売れた師匠に気に入られたのもあるが。まだ18という若さと、40を過ぎてもいまだに若々しく美人だと評判の母親に似たこの容姿のせいもあっただろう。
さすがに自分の腕だけでのし上がった、とまでは自惚れていない。
環境のせいだろうか?
背も伸び、鍛えれば鍛えるだけ筋肉がついた。
モデッロの真似事もしたことがある。
本を売るには、実力だけでなく、知名度も大切だった。
芸能や出版業界に関わることで、いいことも、いやなことも山ほど経験した。
女だけでなく、男からの求愛も絶えずあったが。
試しに付き合ってみても、どれも三日も持たなかった。
何をしても誰といても、俺の心の中の亜樹がちらついて。
どうしても、相手に対して愛情がもてなかった。
自分の性癖に悩んだこともある。
実の兄しか愛せない自分は、どこかおかしいのではないかと。
カウンセリングを受けてみたりもしたが。
どうしても忘れられなかった。
どんな美男美女であろうとも、俺の心は揺らがなかった。
俺の心を揺るがしたのは。
唯一、実の兄である亜樹だけだった。
◆◇◆
そうして。
とうとう、約束の20年目が来てしまった。
やはりどうしても、亜樹のことが忘れられなくて。
仕事を理由に、日本へ一時帰国することを決意した。実際に会いさえすれば、この狂おしい想いもどうにか変化するだろうと思って。
まずは家族滞在ビザを申請。
亜樹に同居がしたいと連絡を入れたら、もちろん、奈津の家でもあるんだから気にしないで戻っておいで、と快諾された。
亜樹は優しい亜樹のままだった。
それなら、と即ビリエットを取り。
カメラと札入れと携帯電話だけを手にして、家を飛び出した。
必要な荷物は後で送るようディレットーレに頼んで。
飛行機で約13時間。
期待と不安を胸に、日本へ降り立った。
20年だ。
亜樹も、35歳になっている。
いい加減、15歳の、綺麗な少年のままではないだろう。
いっそ、亜樹が冴えない、汚いオッサンになっていることを祈った。
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