異世界の天使~鳥は二度羽搏く

篠崎笙

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或る男

調教師ダミアンの人生

慈母神アナスタシアより生まれし、四人の女神。

慈悲の女神エリノア、歓喜の女神レティシア、繫栄の女神ルクレティア、希望の女神ネイディーン。
四人の女神は、それぞれ四つの国を守護し、多大なる加護を与えていた。


その世界には、女は存在しなかった。

人々は、女神の呪いによって消されたのだと噂した。
その代わりに、男同士で子を作ることができる加護が与えられた。
人々はそれで人類絶滅の危機からは逃れることができた。

しかし、一万年に一度の女神たちの眠りにより、女神たちの護っていた世界の加護が十五年の間、一切途絶えてしまった。

その間、魔族の襲撃があり、人口はほぼ半分ほどに減ってしまった。


幸い、二人の英雄の登場によって魔族の脅威は退かれたものの。
十五年の間、新しく子供が生まれることはなかった。


人々はその十五年間を、『暗黒の時代』と呼んだ。


◆◇◆


歓喜の女神が守護する国、レティシア。

しかし、女神の守護は誰にでも降り注ぐわけではない。
女神は犯罪者、心の汚いもの、自力で生きようとしない怠惰なものを嫌った。

レティシアの辺境、ウェンデル。
ここは、そのような輩が集まる街。いわゆる歓楽街であった。


その外れで、男は少年が倒れているのを見つけた。
そう、少年だ。小さな子供。

この世界で、この年齢の男は存在しないはずだった。この世界の基準でいえば、7歳くらいに見える。

時々、どこかの世界から漂着物が来るのだ。
ヒトは初めて見たが。

男はいい拾い物をしたとほくそ笑んだ。


男の名はダミアン。
黒髪に茶色の目、浅黒い肌の男だ。片目は荒くれた客に刺されて失い、眼帯をつけていた。

その見た目でも特に損することはない。
彼は娼館を商っていた。

ダミアンは少年を担ぎ上げた。思ったよりも軽かった。


◆◇◆


簡素なベッドの上。
厳重に少年の身体を縛りつけ、麻酔を施した。
暴れられて壊れてしまっては、商品にはならないので。

ダミアンはまず、油を使い、少年の後孔を広げ、張り型を差し入れた。

そして少年の陰茎が反応し、膨らんだところで。尿道にストローを差込み、尿路を確保した。
その上で、よく研がれた小刀で陰茎を切断した。
先に尿路を確保しておかないと、後々面倒なことは経験でわかっていた。

血管は結紮けっさく、または焼いて処置し。傷口は跡が残らないよう吸収系の縫合糸で縫った。
続いて睾丸も切除し、これも同じように処置して縫った。


ストローを外に出した状態でオムツのようにぐるぐると包帯を巻き、作業は済んだ。
これで傷口が膿んだり、ショック死などしなければ、成功である。

切除した陰茎と睾丸は、回春薬として高く売れた。


小さい頃に陰茎と睾丸を切除しておけば、声変わりもしないし大きくなりすぎたりしない。
ダミアンが商うのは、そのような専門の娼館であった。

これで途絶えがちだった客足が増えればいいと思った。

暗黒の時代のせいで、大事な子を売ったり攫ったりができなくなっていたので、店には年増の”少年”しかいなかったのだ。


麻酔から醒めた少年は激痛に泣き叫んだが。
解熱鎮痛剤を与え、異世界人が死なないように己の血液を与え。ダミアンは彼なりに、献身的に看病した。
これはいい商品になると確信したので。

言葉は通じないようだった。
余計に都合がいいとダミアンは思った。


しばらくして、膀胱を押すと、ストローからは赤い尿が出た。
少年はやはり痛みに泣き叫んだが、赤い尿が出るようなら問題ない。


手術は成功した。


◆◇◆


傷口が塞がったころ、ストローを引き抜いた。

しばらくは尿を垂れ流していた少年だったが。
自力でそこの筋肉を鍛え、調節することを覚えた。

そこそこの知能はありそうだが。
逃げ出すそぶりも見せず、おとなしく、逆らわないので問題ないとダミアンは思った。


少年の大きく黒い瞳は、なんともいえず、男の嗜虐心をそそるものだった。
それも、商品にするには都合がよかった。


後ろの調教も、順調に進んだ。
初めては高く売れるので、自分で慣らさず、専用の道具を使用した。

少年は勃起障害であったダミアンですら疼かせるほどの上物だった。


ダミアンは、少年を”小鳥”と名付け、店に出した。
男に抱かれ、鳴くだけの鳥である。


少年は、瞬く間に高級男娼となった。

ダミアンは満足した。
いい拾い物をしたものだと。これでしばらくの間は遊んで暮らせるだろう。少年が壊れてしまわないかぎり。

少年の噂は、上流階級に広まったらしく。身形の良い客が何人も訪れ。大金を落として言った。
これならもっと上客を見込めるだろう。
ダミアンは欲を出した。


それが、自分の命を縮めることになると知らずに。
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