異世界の天使~鳥は二度羽搏く

篠崎笙

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レティシアにて

イザヤ:愛玩

イニスがハーマンと何か話している。

指揮をしながらも、横目で様子を伺う。……私と話すときよりも気安そうだ。
私と話すとき、イニスはどうも、態度に遠慮があるようだ。


私が王子だから、緊張しているのだろうか?

王子といえど、第六王子なので王位継承権など無いも同じ。王宮には住んでいないし、独立して、自分の屋敷に住んでいる。
武芸の才を見込まれ、国内警備を担当しているだけの男だというのに。


ハーマンには、もっとイニスの話を聞いてやった方がいいのでは、と忠告されたが。
イニスは私に打ち解けてくれないのだ。

どうしたらいいのか、わからない。
身体の反応は、あれほど素直だというのに。


◆◇◆



孕めと言うのは、いくらなんでも性急過ぎたようだ。
戸惑った顔を見て、気付いた。


イニスにはこちらの知識があまり無かった。

当然だ。
異世界から来てすぐにダミアンに捕まり、言葉もわからぬまま娼館で働かされていたのだから。

私に連れ出されて初めて、外を見たらしい。


もっと、外の世界を教えてやりたい。
ウェンデルが、特別に酷かっただけで。レティシアには、良いところが沢山あるのだ。

新婚旅行に相応しい美しい海岸とか。
避暑に相応しい高原とか。雪遊びもできる山とか。


……子を望むより先に、求婚をするべきだった。

出会いの経緯からして仕方が無いのだが、身体を繋げるのが先で、求愛すらしていなかった。
それは、我ながらさすがにどうかと思う。

本来、相手を孕ませるには、結婚の承諾か、相手の同意を得ないといけなかった。
私に抱かれるのは、嫌ではなさそうだが。


「もしかして、嫌い、とか……?」

ハーマンの声が聞こえ、どきりとした。
私のことか?

知らない振りをし、全力で聞き耳を立てる。


「とんでもない。イザヤのことが嫌いとか、ありえないよ」
イニスはすぐに否定してくれたのでほっとした。


そうか。
ありえないことなのか。良かった。


◆◇◆


「ハーマンと、何の話をしていたのかな?」

イニスの首飾りを撫でながら、ちらりとハーマンを見ると。
真っ青になって細かく首を横に振っていた。
やましいことがないのなら、堂々としていれば良いのだ。

イニスがつけている金細工の首飾りは、遠征に出る前に私が贈ったものだ。
王家の紋章が入っているので、これを身につけている限り、この国でイニスに手を出すような輩はいないはずだ。

命知らずな、相当の馬鹿でなければ。


「この世界はほんとに男同士で子供が出来るんだって話」
イニスは溜め息をついていた。

「ああそうか、知らなかったのか。きちんと教えるべきだったね」

異世界から来たのだ。
こちらの常識が通じるとは限らなかった。
イニスの生まれ育った世界では、男同士の間に子は生せないのだ。

これは時間をかけて、口説かなければいけないな。


何故マントの色が違う人がいるのか聞かれたので、説明すると。
周りを見ながら頷いていた。
他の国はどうかは知らないが、我が国では魔力の差でかなり身分が変わるのだ。

王族は関係なく橙色だが、私は実力でこの色である。
黄色も扱いは悪く無いが、橙色は特に上客とみなされ、どこでも歓迎される。


イニスは異世界人だが、魔力はあるのだろうか?

無くても変わらず大切にするが。
何もまとわせないのも心許ない。毛皮はまだ暑いだろうか。


◆◇◆


「他に知りたいことがあれば、何でも聞いてくれてかまわないよ」

イニスは首を傾げて。
「今のところは、思いつかないかな」
と言うが。

そうではないのだろう。

何か、思うことはあるのだろうに。
遠慮して、言わないのだ。寂しく思う。

ハーマンになら、話すのだろうか?


「そうか。……では、馬にでも乗ってみる? 相乗りとかどうかな?」

馬車に乗るとき、馬を見て歓声を上げていたし。
馬に興味があるかもしれない。

乗り方を教えて、一緒に遠乗りするのもいいだろう。
それに、常に腕の中に。

側に置いておきたかった。


「……馬、こわいからやだ」
本気の声だった。
馬は大きいし、小さなイニスには怖いものなのだろう。

「そう……、」


遠乗りの夢は、儚くも潰えた。


「見るのは好きだから。イザヤがかっこよく指揮してるとこ、見たいな」
イニスはきらきらした目で私を見上げた。

閨以外での、初めてのおねだりだった。

そうだな。
見るのとやるのとは違う。
私も、人が細かい作業をしているところを見るのは好きだが、自分ではやりたくない。面倒だからだ。


「よし、では行ってくる」
手綱を引くと、イニスは笑顔で手を振ってくれた。

面倒な仕事と思っていたが、やる気が出てきた。


ああ。
これが、人を愛するということか。


◆◇◆


「愛しているよ、私の可愛いイニス」

くちづけを落として、小さな身体を抱きしめる。
途中の街で宿を取ったので、柔らかいベッドの上だ。

野営用のテントの中ではない。
あのような無粋な場所で寝かせるのはイニスがかわいそうなので、予定を変更して、宿を取った。

部下からの文句はなかった。
当然である。
皆、寝るならやわらかいベッドの方がいいに決まっている。


肌を撫でていると、乳首が尖っていくのがわかる。
感じやすい身体だ。

私の、かわいい小鳥。


「イニス、足を開いて?」
開いた足の間に手を入れ、慣らしてやる。

油や軟膏は多めに持ってきてある。

「ン、……も、いいから、」
胸にすがりついてくるイニスの腰を掴み。ゆっくりと中に入る。


入り口は狭いものの、イニスの中は、私をあたたかく包み込む。
ずっとこの中にいたい。

愛おしい、私だけの小鳥。


切ない鳴き声を上げ、イニスが気を失うまで、味わった。
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