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美しき伯爵、熟考する

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「何だよ忠犬。アンリには触ってないだろ」
ロロが殺気立っているアンドレに文句を言った。

確かに、触ってはいない。
けど、ロロがソファーの手すりと背もたれに手を置いてるから、腕の中に閉じ込められてるような状態だ。

壁ドンならぬ、ソファードン?


触れずに、余裕持って囲めるとか。体格差を、しみじみと実感する。
前世の俺よりもでかいと思う。こいつ、もう180センチ以上ありそうだもんな。

勝てる要素は体脂肪の量だけだな! それは今もか。
……くっ、泣ける。

いや、魔力でなら俺の方が上だし! 負けるな俺!!


*****


ああ。
思えば遠くへ来たもんだ。

だってここ、異世界だもん。


底辺を這いずり回るスライムみたいなオタクが、コンクリートブロックにぶち当たって死んで。
剣と魔法の異世界に、チート級に恵まれた環境、存在すら貴重な黒髪黒目、美しい容姿で。しかもフタナリに生まれ変わるとか。

でもって、キラキラしい美貌の王子様が世話係で、年下の幼馴染的なイケメン伯爵から求婚されるなんて。
設定てんこ盛りじゃね? 盛り過ぎっていうか昇天ペガサスMIX盛りじゃね?

ありえない展開が目白押しで目が白黒するってか。
早く白黒つけないと、アンドレの殺気で部屋の温度を氷点下まで下げられそう。


あまりにもありえない展開過ぎて。
逆に、アリかもしれない、などと思えて来た。

うーん。
ロロが王配か。

……考えてみれば、そう悪くないかもしれない。


こいつの優秀さは良く知ってる。
努力家で、魔法も剣も強いし。この年齢ですでに領主としての評判も上々で。若くて将来性もある。

敵には回したくないことだけは確かだ。
アンドレもそうだけど。敵とみなした相手には容赦がないからな。

仕事上のパートナーとしてみれば、最高にいい人材だと思う。気心も知れてるし。
結婚を勧められることもなくなる。


でも。
一番の問題は。

十中八九、間違いなく。だろう、ってことだ。
抱く側になったこともないけど。

一応、訊いてみるか。


*****


「私の女性器に挿入したいのか?」

いけね、直球過ぎた。こっちの言葉は、比喩とかの表現が難しいんだよな。
アンドレや教育係から教わったこの国の言葉は、貴族らしい言葉遣いで、かなり固いみたいだし。


まあいいか。
どう言葉を飾ろうが、ヤるかヤられるかのどっちかなんだろうし。

俺のふにゃちんじゃ、ヤる方は難しいっていうか、まず不可能だろうけど。大殿筋硬そうだしな。
それに、まず、男相手に勃つ気がしない。

今は女にも勃たないんだけどね! びえん。


「!?」
ロロの顔が真っ赤になってる。

案外ウブだなお坊っちゃん。女性器ってセリフ程度でそんな反応してたら、同人誌即売会なんて参加できないぞ?
もっとおぞましくえげつない世界を知るだろう……。


アンドレは「そんなはしたない言葉を……」とか言って、カーペットの床に膝をついてがっくりしている。
若い娘じゃあるまいし、これくらいでガタガタ言うな。

ロロはこほん、と咳払いをして。
「結婚をしたら、身体を重ねたいとは思っている。当然のことだが、同意を得ず、無理に抱いたりしない」

おお、真面目だな。
そりゃそうだ。無理矢理は犯罪です。


そういえば。
こいつ、俺の身体のことを知って。それ以来、許可を得てからじゃないと触らなくなったっけ。
小さい頃はぴょんぴょん抱き着いてきてたのに。

訓練でへばってる時も、腕を掴んで起こそうとしないで「ほら、掴まれ」と言って手を差し出されたっけ。
かといって、俺を女扱いしてる訳でもなく。
態度を変えたりしなかった。

紳士だよな。


……いいか。
無理に手を出して来ないなら。嫌だったら、断ればいいんだし。
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