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Ⅲ
美しき伯爵、承諾する
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ロロも、俺に惚れて結婚したい、というのが一番の理由じゃないのかもしれない。
自分が王になって、表立って行動するより、フィクサーになるのを選んで。
今のとこ最大のライバルである俺と敵対することは避けて、パートナーになった方が得だって考えてのことだろうしな。
俺は”完全体”だし。結婚しないといけないみたいだから。他の貴族から求婚を断るにもちょうどいい。
ロロなら、身分的にも能力的にも文句は言われないだろう。
よし。
じゃあ、はっきり返事しようじゃないか。
「わかった。ロロ……いや、トロー伯ローラン・ロートレック・ド・デュランベルジェ。貴殿の提案を受け入れよう」
*****
「ええっ!?」
「ええっ!?」
今、驚いた声がサラウンドで聴こえた気がしたが。
過保護なママ……もといアンドレはともかく。
何で、申し出た本人が驚いてるんだ?
自分を敵に回したらどうなるかわかってんだろうなアアン? って脅したのと同じだろうに。
「……いいのか?」
ロロの切れ長の目が、いっぱいに見開かれてる。
「考えてみれば、断る理由もないからな」
「ああ……アンリ、」
「うわ、」
感極まったように、がばっと抱き着かれた。
俺よりも二回りくらい大きいんだろう。すっぽりと腕の中に納まってしまっている。
肩も胸板も、すっかり立派な大人の男のものに思える。もはやこのくらいの差になると、悔しく思うようなレベルを通り越して憧れに近い感情になりつつある。
しかし、こうして男に抱き着かれているというのに、嫌じゃないのは何故なのか。
むしろ、包まれてる感じで心地好い。
筋肉量が多く代謝が良いせいで体温も高いのか、あったかいし。
俺、自覚なかったけど。
そっちのケがあったのか?
いや、単にファザコンというか、深層心理的に父性を求めてるのかもしれない。
あんま思い出したくないけど、前世では父親に関してろくな思い出がなかったしなあ。
母親についてもそうだけど、母性ならアンドレから過剰に貰ったから充分だ。
誰かから、優しくされたかった。抱きしめられたかった。愛されたかった、って気持ちは、未だにあるのかも。
今世じゃ国王陛下からも可愛がられてるし、オカンもといアンドレからもめっちゃ愛されてるし。城の使用人たちからも好かれてる。
それでもまだ、愛され足りないのだろうか?
ナンバーワンよりオンリーワンって感じ?
*****
「ううっ、悪い虫がつかないよう、今まで大切にお育てしてきたのに……」
アンドレは、男に嫁ぐなんて、とか嘆いて大泣きしてる。
ロロを悪い虫呼ばわりとは、随分な言い様だな、王子様め。
っていうか。
俺も別に、男に嫁ぐつもりではないからな!?
あくまでも、片腕っていうか。王様業のパートナーって感じだから!
……だよな?
と、ロロの方を見たら。
ところがどっこい。
俺は、ロロからの申し出を、軽く考えすぎていたのだと知ることになるのだった。
ズビ、と鼻をすするような音が聞こえて。
「信じられない……嬉しい」
ロロは、端整な顔をくしゃくしゃにして泣いていたのだ。
って。
泣くほど!?
*****
ロロは、しばらく泣いた後。
「……一目惚れだった」
何事もなかったかのようにすました顔で。
アンドレが淹れ直した紅茶をすすり、そう言った。
まだ鼻の頭や目尻が赤いのはご愛嬌だ。
8歳になり、社交界デビューすることになったロロは。
パーティー会場に足を踏み入れた瞬間。
”この世で最も美しい漆黒”に目を奪われたという。
艶やかな黒髪。濡れたような黒い瞳。透けるような白い肌。薔薇色の頬に愛らしい唇。
貴族以外纏うことを許されない黒衣に覆われた、華奢な肢体。
誰だよ。俺だ。
まあ中身は残念なオタクなんですけどね! まだオタバレてないけど! いや、中の人のことは一生隠し通す所存であります!
中の人などいない!
自分が王になって、表立って行動するより、フィクサーになるのを選んで。
今のとこ最大のライバルである俺と敵対することは避けて、パートナーになった方が得だって考えてのことだろうしな。
俺は”完全体”だし。結婚しないといけないみたいだから。他の貴族から求婚を断るにもちょうどいい。
ロロなら、身分的にも能力的にも文句は言われないだろう。
よし。
じゃあ、はっきり返事しようじゃないか。
「わかった。ロロ……いや、トロー伯ローラン・ロートレック・ド・デュランベルジェ。貴殿の提案を受け入れよう」
*****
「ええっ!?」
「ええっ!?」
今、驚いた声がサラウンドで聴こえた気がしたが。
過保護なママ……もといアンドレはともかく。
何で、申し出た本人が驚いてるんだ?
自分を敵に回したらどうなるかわかってんだろうなアアン? って脅したのと同じだろうに。
「……いいのか?」
ロロの切れ長の目が、いっぱいに見開かれてる。
「考えてみれば、断る理由もないからな」
「ああ……アンリ、」
「うわ、」
感極まったように、がばっと抱き着かれた。
俺よりも二回りくらい大きいんだろう。すっぽりと腕の中に納まってしまっている。
肩も胸板も、すっかり立派な大人の男のものに思える。もはやこのくらいの差になると、悔しく思うようなレベルを通り越して憧れに近い感情になりつつある。
しかし、こうして男に抱き着かれているというのに、嫌じゃないのは何故なのか。
むしろ、包まれてる感じで心地好い。
筋肉量が多く代謝が良いせいで体温も高いのか、あったかいし。
俺、自覚なかったけど。
そっちのケがあったのか?
いや、単にファザコンというか、深層心理的に父性を求めてるのかもしれない。
あんま思い出したくないけど、前世では父親に関してろくな思い出がなかったしなあ。
母親についてもそうだけど、母性ならアンドレから過剰に貰ったから充分だ。
誰かから、優しくされたかった。抱きしめられたかった。愛されたかった、って気持ちは、未だにあるのかも。
今世じゃ国王陛下からも可愛がられてるし、オカンもといアンドレからもめっちゃ愛されてるし。城の使用人たちからも好かれてる。
それでもまだ、愛され足りないのだろうか?
ナンバーワンよりオンリーワンって感じ?
*****
「ううっ、悪い虫がつかないよう、今まで大切にお育てしてきたのに……」
アンドレは、男に嫁ぐなんて、とか嘆いて大泣きしてる。
ロロを悪い虫呼ばわりとは、随分な言い様だな、王子様め。
っていうか。
俺も別に、男に嫁ぐつもりではないからな!?
あくまでも、片腕っていうか。王様業のパートナーって感じだから!
……だよな?
と、ロロの方を見たら。
ところがどっこい。
俺は、ロロからの申し出を、軽く考えすぎていたのだと知ることになるのだった。
ズビ、と鼻をすするような音が聞こえて。
「信じられない……嬉しい」
ロロは、端整な顔をくしゃくしゃにして泣いていたのだ。
って。
泣くほど!?
*****
ロロは、しばらく泣いた後。
「……一目惚れだった」
何事もなかったかのようにすました顔で。
アンドレが淹れ直した紅茶をすすり、そう言った。
まだ鼻の頭や目尻が赤いのはご愛嬌だ。
8歳になり、社交界デビューすることになったロロは。
パーティー会場に足を踏み入れた瞬間。
”この世で最も美しい漆黒”に目を奪われたという。
艶やかな黒髪。濡れたような黒い瞳。透けるような白い肌。薔薇色の頬に愛らしい唇。
貴族以外纏うことを許されない黒衣に覆われた、華奢な肢体。
誰だよ。俺だ。
まあ中身は残念なオタクなんですけどね! まだオタバレてないけど! いや、中の人のことは一生隠し通す所存であります!
中の人などいない!
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