上 下
55 / 83
ローラン・ロートレック・ド・デュランベルジェの人生

J’ai besoin de ton amour.(あなたに愛されたい)

しおりを挟む
アンリの性器は、挿入してからずっと、歓喜の涙を流している。

「ん、……ぁん、」
小刻みに腰を揺すってやりながら、優しく睾丸ごと性器を揉まれるのがお気に入りなようだ。

「ん? これ、気持ち良い?」
問うと、とろんとした顔で。素直にこくこくと頷いた。

初心うぶで恥ずかしがりなのに。
俺の性器がアンリの感じる場所からずれると、自分で腰を動かしてしまうくらい、気持ち良いのか?


反応が良すぎて、不安になる。

あれほど潔癖なアンリが、こうして汗ばんだ肌を重ねても、お互いの精でびしょびしょに濡れても。
俺の腕の中でおとなしくして。抱かれるのを嫌がらないのも。

相手が俺だから?

初めての快楽に溺れているからか?

あんたがこんな風に感じてみせるのは、俺だけなのか?

問い詰めたくなるが。
今は、こうして、受け入れてくれただけでも喜ぼう。


可能な限りの退路を断って、申し出を断れないような状況を作っておいて。我ながら卑怯だと思う。
内心は嫌々だろうが、あんたが俺との結婚を承諾してくれて、どれだけ嬉しかったことか。

受け入れてくれて、嬉しい。
素直に喜びたい。


だが。

もし、俺じゃない誰かが、同じことを言ったとしたら。
対価に身体を寄こせと言われたら。

その時、あんたは、どうするんだ?
断るのか? それとも。


*****


睾丸と性器を掴んでいた手の中指を、睾丸の後ろにあるに這わせてみた。

濡れてはいない。
まだ、性器として機能していないからだ。

この感じからして、自分でも触れたことがないのだろう。
アンリは自分が完全体であることに、未だに戸惑っている。その気持ちはわかるが。

「ひゃ!?」
それまでうっとりと身を預けていたアンリは、に触れられたことに驚いて、びくりと身体を震わせた。

「や、は……、ああっ!?」
指先を、閉ざされた秘裂に差し込んでやる。

「ひっ……!?」
アンリがその行為に対し悪寒を感じ、震えているのがわかった。


に触れるのは、俺が初めてだな?」
わかってはいたが、あえて問うてみた。

アンリの口から直接聞きたかった。
アンリの秘密の場所に触れたのは、俺だけだと。

「あっ……、当たり前、」
「そうだよな。こっちもきつかったし。あんたの全部、俺が初めてなんだ……」


「ゆび、嫌だ」
アンリは本気で嫌がっている様子で身を捩らせたが。

逃がさないよう、腕の中に抱き込んだ。


「わかった。しないって約束だもんな」
固く乾いたそこから、指を引き抜いた。


目覚めさせるにしても、まだ早い。


*****


「悪かった。怖かったか?」

後ろから、そっと抱き締めて。
宥めるように、首や耳に口づけを落とす。

「や、あん、」

胸を探り、乳首を捏ねてやると。
甘い声で鳴いて、中の俺をきゅうきゅう締め付ける。

刺激を受け、ぷくりと勃ち上がった乳首をつまみ、捏ね回し、撫で擦る。


甘い、麻薬のような身体だ。
何度でも欲しくなる。

この蜜の味を知ってしまったら、もう二度と手放すことはできなくなるだろう。

かわいそうに。
俺に見初められてしまったばかりに。


アンリの細い腰を掴み。
半勃ちした性器を、ゆっくりと抜き差ししてやる。

「ひぁ……っ、あっ、やあっ、」
甘い声に、頭がどうにかなりそうだ。


「俺の全てを、あんたに捧げてやる。俺の持っている財産も。人生も。俺の全てをやる」
そんなものでは足りないだろうが。

「あ……っ、や、」
もどかしげに腰を揺らして。精をねだっているように。


「その代わりに。あんたは俺に、その身を捧げるんだ」


これは取引だ。
そう思わないと、狂いそうになる。

等価交換にはならないとわかってはいるが。
応じて欲しいと願う。
しおりを挟む

処理中です...