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ローラン・ロートレック・ド・デュランベルジェの人生

Je ne fais que penser à toi. (あなたのことばかり考えている)

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黒いドラだとアンリの肌の白さが更に際立って、輝いているように見える。
生成りでなく黒にしておいて正解だったな。

片手で掴めそうな細い首。華奢な手足。
女とは違う、だが男のものでもない、艶めかしい肢体。

さらさらの黒髪は、触り心地が良いと知った。

掌に吸い付くような極上の肌。
黒曜石の瞳を縁取る長い睫毛。花弁のような愛らしい唇。

この美しい人が、自分のものになるなんて。
未だに信じられない。


*****


アンリは、身体だった。口づけすら。
性的な知識を持ってなかったのかもしれない。

何をされるか、知らなかったから。
だから、俺との結婚を承諾したのだろう。

抱きたいと言った時に、素直に頷いてくれたのも。ただ抱き締めるだけだと思っていた可能性が高い。


こんなに純粋で。こんなに感じやすい身体で。
よく今まで清らかな身でいられたものだ。

もし、俺と同じように、やむを得ない状況での取引を持ち出されたら。
こんな風に、身体を捧げるのだろうか?

俺相手でなくとも、感じてみせるのだろうか。


……嫌だ。許さない。
髪の一筋だって誰にも渡したくない。


「あんたの身体、全部、俺のものだ」

アンリの最初で最後の男は俺だ。
誰かに盗られるくらいなら。いっそこの手で。


「これからは、俺以外の男にあんたの肌を見せるな。触れさせるな。もう二度と」
突き上げながら。命じるように言う。

世話係だろうが、触れさせたくない。
身勝手だとはわかっている。


「愛している、アンリ」

あんたが俺を、男として見ることがなくても。
何よりも、誰よりも。


*****


後ろ向きで受け入れることに慣れたようなので、正面から抱いた。

「アンリ、」
抱き寄せると、恥ずかしそうに目を伏せるのがたまらない。

普段は感情を表に出さないアンリの、そんな初心な姿に興奮してしまう。
年上とは思えない可愛らしさだ。

口づけも、抵抗することなく受け入れてくれる。


「あっ、……んん、」
俺の背に手を回し、爪を立てられるのも嬉しい。

……ほんの少しでも、俺に好意があるから、受け入れてくれているのか?
訊きたいが。

お前が脅したから抱かれてるんじゃないか、と答えられたら。
そう思うと、勇気が出ない。

それなら最初から交換条件や取引でなく、正攻法で求婚していれば良かったのかもしれないが。
そこまで自分に自信もなかった。


剣の腕は俺が上でも、魔力はアンリに敵わない。
家柄も、自慢できたものじゃない。

俺の売りは、若さと体力か?
後は汚れ仕事を躊躇なくできるくらいだが、それはアンリには知られたくない。


*****


アンリと俺の腹が、アンリの吐き出した精で濡れている。

随分と量が多い。
刺激を受けてか?

「ん、」
俺の腹筋で性器が擦れるのが悦いようで。無意識だろうか、腰が揺れている。

清らかだったアンリが見せる淫らな光景に、めまいがしそうだ。
もっと擦れるように、腰を突き上げてやる。


「は、……ロロ、」
他の誰も呼ばないアンリだけの特別な呼び方で。甘い声で名を呼ばれる幸せ。


面会を許されて。

名を呼ばれ。

俺を見てくれる。

それだけでも、幸せだった。
そこで満足していられれば良かったのだが。


身体の成長とともに欲望は膨れ上がり。初恋は肉欲になる。
触れたくて。口づけたくて。抱きたくなった。

アンリを、自分だけのものにしたくなった。


俺の持っているもの全部と。
あと、何を捧げれば、あんたの全てが手に入る?

こうして腕に抱いていても。まだ、自分のものにした実感はない。


「アンリ。愛してる」
愛を囁くと。

恥ずかしそうに。視線を逸らしてしまう。


あんたは俺のことを、どう思ってるんだ?
触れることを許す程度には、好かれているんだよな?
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