従姉妹の身代わりで茶会に行ったらヤマトナデシコ扱いされてアラブ系の王子様に砂漠の王国へ攫われてしまいました。

篠崎笙

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大和撫子、砂漠の王子に攫われる

王子から呼び出される

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案内係に連れて行かれた先で待っていたのは。


緊張のせいか、唇の色まで蒼白になって目を泳がせている善之おじさんと。

応接間のソファーに、王者みたいに堂々と腰かけている。
褐色の肌、蒼い瞳。高い鼻。黒い髪を白い布で覆い、金の紐で留めた、アラブ風民族衣装を身に纏った。

見たこともないような、とんでもない超美青年だった。


†††


男の俺でも思わず息を呑むほどの凄い美形だ。
彫刻みたいに完璧に整った造形で。これぞハンサム! みたいな。

……あまりに想定外の美形すぎて、語彙ごいが追いつかない。

我ながら執筆業に携わる身でそれは如何なものかと思うが。
絵にもかけない美しさという言葉もあるし、OK。


ん? イケメンで、アラブ風の言症って。……まさか、これが噂のイケメン王子!?
何でメインであるはずの王子がお茶会サボってこんなとこで寛いでるんだよ!? 大勢の振袖女子が手ぐすね引いて……じゃなかった首を長くしてお待ちですよ!?

ちょっと、善之おじさん? 明後日の方向見てないで説明プリーズ!


アラブの王子様は、ソファーから立ち上がったと思ったらいつの間にか目の前に来ていて。
いきなり俺に抱き着いてきた。

「!التقيت أخيرا……」


え?
今、何て言ったんだ?

やっと会えた、とか言われたような気がするが。
あんまり自信ない。早口だったし。

会えて嬉しい、くらいの言葉だったかも。


うわあ、高級そうな香水の匂い。
外国人は体臭キツイから香水ぶっ掛けるっていうけど、全然臭くない。上品な匂いだ。
これがアラブ系の貴人が好むっていう、乳香ってやつかな? どことなく甘くて、いい匂い。

……なんて男の胸板に顔を埋めて匂ってる場合か。
いや、強制的に埋めさせられたんだけど。


抱き寄せられたせいで、王子が背がやたら高くて、かなりいいカラダをしているのがわかった。
腰の位置も高い。

男の理想の集大成が、今、俺の目の前に存在している。


……何か腹立つな。
大金持ちの王子様で超絶イケメンで背も高くてガタイも良いとか!

そりゃ振袖女子もSSレア狙いで殺気立つわ。
いや、ウルトラレジェンド級か? 美形な上、マクランジナーフの王子様となんて出逢えるチャンスなんて道歩いてて隕石に当たるよりもないだろ。


善之おじさんに助けを求める視線を送るが。
手を合わせて拝まれてしまった。

王子様のお気に召すまま対応しろ、と?
いきなりそんな無茶振りされても困るんだけど!

どうすりゃいいんだよ、この状況。
振袖、ガチガチに着てるから、体型で偽物だってバレることはないだろうけど。

……腰に手を回してるし。これって、セクハラじゃね? このセクハラ王子め。


見上げると。
顔が見えないほど密着していたのが、少しだけ離れた。腰に回された手はそのままだが。

じっと見つめられてる。
どうやら、俺からの第一声を待っている様子だ。

ちっ、仕方ないな。
「フルサ サーイーダ。イスミー ミユキ・ノギ。タッシャラフナー ヤー アミール」

とりあえず、自己紹介と。
はじめまして、王子とお会いできて光栄です、と挨拶をしてみた。


しかし。
王子は俺の挨拶を聞くなり、情けないくらいに眉を下げた。

何だよ、その悲しそうな顔は。


あれ? 挨拶間違えたか?
公用語がアラビア語だっていうから、未だ中東に単身赴任中の勝哉叔父さんから挨拶をスカイプで教えてもらって、めっちゃ練習したのに!


†††


「ひゃ、」
がしっ、と。いきなり手首を掴まれて、振袖を肘までまくられた。

両腕を確認した後。
王子はあからさまに落胆した様子で。

はあ、と大きな溜め息を吐いた。

内側にある火傷は見られなくてすんだけど。
何なんだよ?


「……彼女と同じ顔をした女性は、親戚に存在するだろうか、ノギ?」
王子は流暢な日本語でおじさんに問い掛けた。

おいおい、日本語話せたのかよ。
だったら最初から日本語で話しかけてくれよ。

相当な日本贔屓だって話らしいし、勉強したのかな?

「いいえ、おりません。私の妻も、少しは似ていますが、同じ顔ではないですね」
おじさんは微妙な表情で。ハンカチで額の汗を拭きつつ答えた。


そう。
同じ顔をしたは存在しない。同じ顔をしたなら、ここにいるけどな。

いい加減、俺の腰をホールドしてる手を離してくんないかな……。

。……では、忘れ去られているだけか……?」
顔だけじゃなく、声も良いな。ちょっと何言ってるのか意味がわかんないけど。


真剣な顔で、真っ直ぐに見詰められて。
不覚にも、ドキドキしてしまう。

だって、本物の王子だし。すごい美形だし。
いい匂いするし。

ラクダみたいに睫毛長いし。半端なく目力が強い。吸い込まれそうな蒼。

男だろうが、この美貌の前では関係ないというか。
つい、目が離せなくなってしまう。


「ミユキ、私の顔に、見覚えは?」
問いに、首を横に振った。

本当にない。
こんなとんでもない美形、一度見たら忘れないっての。

って。
俺じゃなく、美雪に訊いてるんだった。


でも、美雪本人からも、こんな超絶美形に会った、なんて話、今まで聞いたことないし。
会ってたら絶対に言いふらしてるはずだ。


†††


「ノギ。彼女を私の妻にする。光栄に思え」


……へ?
何その超絶上から目線。

いやまあ王子だからしょうがないか。
って。

今の話の流れで、何でそうなるの!?

でもって、何で俺に向かって言わないの!?
言うだろ普通、結婚してくださいとか、妻になってくださいとか。

何を言われても断るけどな!


「私は未成年、高校生なので、まだ結婚とか無理です。ごめんなさい!」
王子に頭を下げたが。

「未成年? 日本女性は親の許可があれば16歳から結婚可能である。問題ない」
断言された。


いや、ごめんなさいしたんだから、潔く諦めろよ。
男らしくないぞ。

それで。
あのー、こっちの意思は完全無視ですか……?


このまま身一つで来ればいい、足りないものや欲しいものは何でも買ってやる、みたいな石油王感丸出しな態度で。そのまま強引に攫われてしまいそうになったが。
それは善之おじさんと、駆けつけた総本家の家元さんが阻止してくれた。


とりあえず、今日は帰って良い、とお許しが出たので。
俺とおじさんは、逃げるように、急いで乃木家に戻ったのだった。


†††


家元の言うことには。
どうやらこの縁談を断れば、総本家……流派への寄付金だけでなく、日本に輸出してるレアメタルなどの資源もストップする、と脅された、という話だ。

日本の文化を護りたい、とかいう理由で、あの王子様は数年前から多額の寄付をしていたようだ。

ああ。
それで、あの豪華さ……。

そりゃ家元も顔面蒼白だ。

経済をたてにして脅すなんて。
見た目は極上だけど、中身は最低だな王子!


「ごめん! あー…私が素直に怪我を理由に欠席してればこんなことには……」
さすがにJK語も封印して、美雪が頭を下げた。

今朝までは面白がって着付けをしていた美咲おばさんも蒼白である。


「美雪が謝ることじゃない。あの根性クソ悪ロリコン王子が全部悪い」
「ゆ、雪哉くん?」

「しょうがないから、俺、行くよ。憧れのヤマトナデシコの正体が男だってわかればさすがに諦めるだろ」


「ダメだよ。やっくん超絶カワイーから、男でもオッケー系かもしれないじゃん!」
同じ顔なので、ある意味物凄い自画自賛だが。

俺も過去、男から告白されたことは少なからずあるので、勿論それは承知の上だ。

「大丈夫じゃないか? アラブ系なら、同性愛は禁止されてるだろ」
「ああ、宗教上の問題で……」


マクランジナーフ国の、神への信仰心が強い事を祈ろう。
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