神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

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異世界で、最初の一歩

 しばらくして。
 閉じた目蓋に光の刺激がなくなり、目を開けてみたら。


 目の前は、一面の荒野だった。

 見回す限り、草一本生えていない。赤い土や石ころのある、広大な土地。……もしかしてここを、俺の好きに開拓していいということかな?
 それにしても、異世界転生して最初に見た光景がこれとか。普通なら、絶望するのでは?


 だかしかし。
 神様から色々と便利なスキルを授かった俺には、何も恐れることなどないのだ。……たぶん。


 *****


สภาพステータスแสดงผลオープン
 教わった通りに、現在の状態を表示させる”ステータス表示の呪文”を唱えてみる。

 すると、目の前にモニター画面のようなものが現れた。
 おお、ファンタジーだ。


 名:リン・クレーバーン 年齢:10歳 男 レベル:1

 HP:100 MP:∞

 スキル: 創造 スキルレベル:∞

 パッシブ: 全世界言語理解/魔法攻撃無効/物理攻撃無効/精神攻撃無効/動植物親愛/神の加護


 とあった。
 一見シンプルだが。この”創造”の力さえあれば、何でも出来る、というのだ。

 HPヒットポイントが100なのは、今の時点ではそれが平均より多いのか少ないのか、比較する対象がいないのでわからないが。魔法や物理攻撃が無効だというなら、とりあえず安心だと思っておこう。
 まさか、転んだだけで80とか100ポイント削れたりはしないだろう。転び方によるか?

 心配なら、レベルを上げればいい話だ。……レベルは、何をすれば上がるのだろうか。モンスターと戦うとか? 普通に魔物が存在する世界らしいし。
 今の内、身を守るための武器や防具を”創造”で作っておくべきだろうか。

 ……ん? レベル1なのに、MPマジックポイントと創造スキルのレベルが無限大、だって? 神様、いくら何でもこれはサービスし過ぎじゃないか?
 この力を悪用したら、とんでもないことになりそうだ。

 まあ、悪いことに使う気なんて、さらさらないが。
 神様が存在することもわかったんだし。悪用なんてしたら 覿面てきめんに天罰が下るというもんだ。


 って。
 よく見たら、年齢が10歳だって!? 小学校で言えば4,5年生くらいか? ずいぶん子供じゃないか!

 農作業をするのに、翌日疲れが残らない程度に若返らせてもらえれば充分だったんだが。
 16~18歳は贅沢にしても、20歳前後ならありがたいと思ってた。でも、10歳はいくら何でも若すぎじゃないだろうか。
 異世界転生もののラノベとかで良く見る、赤ん坊から人生をやり直しするよりはマシかもしれないが。

 ……ああ。確かに、視界に入っている手や体は、見慣れた、35歳だった俺のものじゃなくなってる。毎日の力仕事でついた筋肉も、手の甲に盛り上がった血管も消えてる。

 身に着けている服を見下ろすと。シンプルなアイボリーのコットンシャツと、藍色のデニム。靴は、紐なしの革靴。
 これ、この世界の一般人が着る服なのかな? 服装は、地球とそう変わらないようだ。


กระจกพกพา手鏡

 自分の顔を確認するため、”創造”の能力で鏡を出してみた。
 あっさり成功。

 そして、何気にレベルが3に上がっていた。
 もしかして、今、魔法を使ったからか? 魔法を使っただけで上がるなんて、チート能力というやつでは?

 あ、HPが300になってる。
 倍々で増えていくのだろうか。上限はいくつなんだろう……。


 などと遠い目をしてないで。
 さっそく、自分の顔を確認しよう。

 どれどれ、と手鏡を覗いてみる。

 おお。本当に子供だ。
 ……って。これ、単に若返ってるだけじゃないか?

 どこからどう見てもこれは俺、滝凛太郎。10歳の姿だ。

 普通、物語とかだと異世界に転生したら、顔とかも別人みたいになるもんじゃないのか?
 これでは、生まれ変わったようには思えない。ひそかにコンプレックスだった泣き黒子もしっかり健在だ。肌の色も同じだし。
 異世界なのに、人種はそのままでいいのか? 周囲から浮かないか?


 ……まあいいか。
 細かいことは、現地の人と遭遇してから考えよう。

 とりあえず、この状態だとあまりにも風景が寂しすぎるから、花でも咲かせてみようかな。


 試しに、その辺に植物を発生させてみようとしたら。


 *****


誰だクライ?」

 背後から、声を掛けられた。
 いかにも警戒しているといった、若い男の声だ。


 振り向くと。
 どでかくも真っ黒い馬の顔が、目の前に迫っていた。

 テレビなどで見る馬よりも脚が太く、毛足が長い。黒いのは青毛っていうんだったか。
 そういえば、足の細い競走馬っていうのは品種改良によってできたもので、原種の馬って、こんな感じのずんぐりした体形だったとテレビか何かで見たな、と思いつつ。

 世紀末覇者が乗っていそうな黒い馬を見上げた。


 馬は、興奮してはいないようだ。
 鼻息が荒かったり、歯をむき出してたりすると噛まれて危険だというが。優しい目をしている……。

 そういえば、神様がサービスで、動物からは好かれるようにしたって言ってたっけ。
 なら、安心して触ってもいいよな?


「今、お前がしゃべったの?」
 そっと、鼻の上あたりを撫でてやると。
 ブルル、と嬉しそうに いなないて、すりすりと擦り寄られた。

 よしよし、かわいいな。
 猫やウサギほどの手触りではないが、ベルベットみたいな感触で。これはなかなか……。


「……普通、馬は人の言葉を喋らないと思うが……?」
 と、馬の上から怪訝そうな男の声がした。

 いや、異世界だから、そういうこともあるのかと思っただけで。違うんです! と心の中で言い訳をしながら。
 少し後ずさって、更に上を見上げたら。


 大きな馬の背には。
 王子様か騎士様か、と見間違うような、マントを羽織り、きらびやかな格好をした美形の青年が乗っていたのだった。

 白馬の王子ならぬ、黒馬の王子様……?
感想 8

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