神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

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異世界で、添い寝される

 改めて、この国の産業などを訊いてみた。


 ここ、キングスレイという国は、巨大な大陸の、ほぼ真ん中に位置している最も大きな国だというのは、ここに来た時に聞いた。

 海が遠いため、塩は海水からではでなく、他国からの輸入か、岩塩で賄っている。
 降水確率はまあまあ高い方なので、植物は育つ。野菜や穀類、果物は順調に育つとのこと。
 動物や魔物から食肉なども得られ、鉱山もあるので、武器作成は自国で賄える。

 一部の果物や不足した野菜、布、宝石などは他国と取引している。隣国は広大な牧草地があり、羊を飼っているので布は潤沢だそうだ。ちょっと安心。

 こう見ると、豊かな国に見えるけど。


 この間起きたという魔物の大発生による損害は、かなり大きなものだった。
 それまではコンスタントに狩れていた魔物の数は極端に減り、実りの多かった広大な森は焼け野原になってしまい、そのせいで回らなくなった産業もあるという。
 林業や鉄鋼、土木辺りかな?

 魔物の素材を売って暮らしていた冒険者にも大打撃なわけか。


「じゃあ、明日はとりあえず貯水池の作成と、森の再生をしようと思います。いいですか?」
 エルマー公の顔を見ると。

「良いです……な?」
 エルマー公は、慌ててウィリアムを見た。

「ああ。こちらからお願いしたいほどだ。やってもらえるとありがたい」
 ウィリアムは、にっこり笑った。


 最終決定はウィリアムが出すのに、エルマー公を間に挟む意味があるのだろうか?
 まあいいか。


 *****


 気が付いたら、朝になっていた。


 いつの間にか、眠ってしまっていたようだ。いつここに移動したのか記憶にないんだが。まさか、食卓で寝落ちしたのか?
 ご飯を食べて、うとうとして寝てしまうとか。子供じゃないんだから。

 いや、実際に、今現在の俺の身体は10歳の子供なんだから、体力も子供並みになっているのかもしれない。この細い腕を見るからに、力もなさそうだしな。若返ったと思って体力があると過信しないよう、気を付けなければ。

 ……これは、城のベッドか? 高級品だろう、シーツの肌触りはいいのだが。マットレスが硬いな。コイルが入ってないからか?

 寝床には少々うるさくなっている自覚がある。
 20代までは万年床だったが。重いものを運んでる最中に、足の筋を痛めて。立ち上がりやすいベッドに変えたら、もう二度とせんべい布団になど戻れないカラダになってしまった。起きた時の疲れが違うのだ。
 死後の世界というか。ここに来る前にいたあの真っ白な世界の地面は丁度良かったな。家を作る時、あれをイメージしてマットレスを作ってみるか。


 枕は軟らかい。羽毛のようだ。
 布団も軽くてあたたかく、心地よい。これも羽毛だろう。もう少しだけ、寝ていたい気もするが。そろそろ起きなくては。

 今日は、やらなくてはいけないことが沢山あるからな。


 *****


 起き上がろうとしたら。
 腰に、何か重いものが乗っかっていたので動けない。肌色のこれは。……人の、腕?

 これはいったい、どういうことだ……?


「おはよう。もうお目覚めかな?」
「⁉」

 振り向いて。
 思わず絹を裂くような悲鳴を上げてしまいそうになったが。どうにか吞み込んだ。

 何故かウィリアムが、同衾……いや、添い寝をしていた。
 しかも、上半身裸で。

 鍛えられた肉体が眩しい。調理の仕事は肉体労働ではあったが、ここまでの筋肉はつかなかった。
 やけにあたたかいと思った。ウィリアムが筋肉質で、体温が高かったせいか。

 上掛けで下半身は見えていないが。まさか、すっぽんぽんじゃないよな……?


 自分の姿を見ると、パジャマのようなやわらかい布地の服に着替えさせられていた。パジャマまで買ってくれてたとは。
 寝てる間に、着替えさせられたのだろう。使用人か? まさかウィリアム? ……ウィリアムっぽいな。

 恐らくウィリアムは、子供相手だからと特に深いことは考えず。異世界にきたばかりなのに一人で寝かせては寂しいだろうと思って添い寝して。
 これまたあくまでも親切で、パジャマに着替えさせてくれたのだろうとは思う。

 しかし。中身は中年なので、とてつもなく恥ずかしい。


「ん? 顔が赤いな。熱でもあるのかな? ……どれ、」
 完璧に整った顔が、近づいてきた。

 そっと、額を額にあてられる。
 額で熱を測るのは、体温計がないからか。だからって、額じゃなくても、手でもいいじゃないか。……肩に置かれた手はあったかい。ああ、これじゃ体温は測れないな……。

 うわぁ、睫毛長いな。それに何だか、いい匂いがする。さすが王族というか。


「だ、だいじょうぶ。驚いただけ、」
 どうにか気力を振り絞り、ウィリアムの胸板を押し返した。

 このままでいたら、何だか違う世界の扉が開いてしまいそうだ。ただでさえ異世界にいるというのに。
 男相手だというのに、うっかりドキドキしてしまったが。

「ひぇ、」
 またしても悲鳴を上げかけてしまった。

 ウィリアムが俺の熱を測るのに上半身を起こしたため、上掛けで隠れていた部分が見えてしまっていたのだ。衝撃で、心臓が止まるかと思った。


 っていうか。
 何でこの人、全裸で添い寝してるんだ⁉

 ベッドで纏うのはトワレだけ、とか。あんたどこのマリリンモンローだよ⁉


 *****


 予想通り、ウィリアム自身の着替えは、下着から何から使用人に任せていた。貴族という職業は、羞恥心を持っているとやっていけないようだ。
 俺は昨日スキート商会で誂えてもらった服を渡してもらい、自分で着た。

 使用人に着替えを手伝わせているウイリアムを胡乱に視線を向けていたら。

「ああ、安心して。昨日、君の着替えは私がしたから」
 ウィリアムは輝くような笑顔で言った。

 少しも安心できる要素が無かった。


 まあいい。これも今日までだ。
 今日からは、リズリーで家を”創造”して、一人暮らしをするのだから。
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