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Ⅵ
異世界で、一年経過して思うこと
伝言のついでに、プレストンに水を所望された。
ちゃっかりマイコップ持参だった。
「井戸の水より、リン様のお創りになられた聖水の方が、格段に美味なもので」
うっとりしながら言わないで欲しいんだが。ただのお冷やだってば。
湖が出来て、地下水量も増やしたので。教会や管理人小屋、農家の近くに井戸を設置することができたから。
これでもう、飲み水には困らないだろう、と安心してたのに。
プレストンの話を聞いた神職見習いや信者やらが、どうか聖水をお恵み下さいと通ってくるのはちょっと困ってる。
あの水が出る水道を作るべきだろうか。
峠とか、山にある湧き水みたいにして、ここからご自由にどうぞ、みたいな感じで。もうそれで行こう。
「シロ様も、リン様の聖水が一番ですよね~?」
「キャン!」
デッキで水を飲んでるシロに話しかけてる。
シロも別に返事しなくていいから。
*****
シロと一緒に、森で冒険者として素材採取や魔物や害獣退治などのクエストをこなしたり。
近くの畑で採れた野菜を分けてもらって、それで料理を作って振舞ったり。
そうしているうちに、あっという間に一年が過ぎていた。
ウィリアムは、前国王と第一王子の死を発表して、王座を継いだ。
18歳の王様だ。
ワイバーンに見張り塔を壊された辺りから、薄々気付いてた国民もいたようだけど。
ウィリアムなりに、国王を継ぐにあたって、まずは復興が先だという目標があったので、それを遂げるまでは継がないでいたそうだ。
この一年のうちに、キングスレイは随分発展したと思う。
”創造”の力だけじゃなくて。ウィリアムと相談して色々考えたのが良かったんだと思う。
でも、うちに泊まった時、添い寝するのだけはやめて欲しい。全裸で。
そんなに嫌じゃないのが困る。
最近、中身がオッサンなのには変わりないが、肉体年齢につられて精神的に子供っぽくなってしまってるかもしれない、と気づいた。大人げない、とかそういう意味でなく。年齢相応の無邪気さを取り戻したとか、そういう感じだろうか。
ウィリアムも、そうなのかもしれない。前世を思い出したとはいえ、15歳まではこの世界の王子として生きて来た記憶もあるんだし。
「シロ、おいで」
「ワオン!」
シロを呼ぶと、クマより大きな犬が嬉しそうに鳴きながら駆け寄ってくる。図体はかなり大きいが、その足音は何故か体重を感じさせない。神獣だからかもしれない。
シロが一年経っても子犬のまま大きくならなかったので、神様から貰った犬だから成長が遅いのかと思ってたら。魔物が現れた時に、俺を守るように大きくなったからびっくりした。
相変わらずマラミュートの成犬にしか見えないけど。クマよりも大きいので、背中にも乗れる。頼れる相棒である。
あまりに人懐っこいので、これでは番犬にならないんじゃないかと少々心配していたが。スリとか詐欺師など怪しい人が来た場合、ちゃんと吠えて報せてくれるので、番犬としても活躍している。
シロは家に帰ると、ふわもこな子犬姿になる。どっちの姿もカッコイイしカワイイので、ご近所さんからもアイドルみたいに人気だ。
実際に元アイドルだった王子……じゃなかった国王様も、老若男女問わず大人気なんだけど。人前でも気にせず俺のことを猫可愛がりするもんだから、少年趣味だって噂になってた。
否定できない俺だった。
*****
スキート商会からは、定期的にラドクリフ少年が幌馬車でリズリーの出張所に顔を出しがてらうちまで来てくれて。消耗品などを届けてくれたり、買い取ってくれたりしている。
乳牛とニワトリはうちの外庭で飼ってるので、うちが買うのは主に他の肉や穀類、塩などだ。
本当は、俺の能力があれば自給自足生活も可能だけど。
一方的に稼ぐだけじゃなく、経済を回さないといけないし。
「毎度。新しいお菓子を思いついたら教えてくれよな」
まだあどけなさの残る笑顔で言われる。
「まあ追々考えとくよ」
最近は、畑で作ったサトウキビと、湖で育ててるテングサが人気商品だ。
俺が寒天で作るスイーツのレシピを発表したら、国内外から注文が来るようになったとか。
あんみつやトコロテンは喉越しが最高だって。
テングサも、本当は棒寒天にして渡した方が取り扱いしやすいんだろうけど。テングサの加工場もできたそうなので、素材のまま渡している。サトウキビもだ。
こうした新素材の流通で、魔物の大発生によって家や職を失った人たちから、すごく感謝されてると聞いた。
でもそれは、そうなるよう口添えしてくれたウィリアムのお陰なんだけど。
*****
先日は、うっかり”乳牛”という、子牛を産まなくてもずっと乳を出すという牛を作ってしまって、罪深いことをしたと反省している。
休みなく妊娠させられるよりはいいのかな、と思うけど。
牛乳を安定供給させるためには、色々越えなければいけないハードルがあるんだ。
それを考えたらニワトリとか、牛や豚、食肉になる動物の問題とかあるから。いっそ食材全部を”創造”で作ってしまいたいけど。
それはそれで、何か違う気がするし。
俺みたいな能力があるならともかく。
人間は、何かを殺さずに生きることは不可能だ。
身体の中では毎日微生物が生き死にしているし。野菜を育てる時にも、害虫を殺してる。
豚や牛にも知能はあるし、魚にだって痛覚はある。植物だって、生きている。
食べることは殺すこと。生きることは他の命を頂くことだ。それは動物も同じ。
でも、自分だけお綺麗でいようとは思わない。
植物や動物、あらゆる命に感謝して、頂こうと思う。
長い間、食に携わって暮らしていたのに。生き物の命について、ここまで真面目に考えたのはこの世界に来て初めてかもしれない。
食育とかも、こういうことを考えて取り組むべきだったなあ、と今になって思う。この世界では、後悔しないような人生を送りたいものだ。
ちゃっかりマイコップ持参だった。
「井戸の水より、リン様のお創りになられた聖水の方が、格段に美味なもので」
うっとりしながら言わないで欲しいんだが。ただのお冷やだってば。
湖が出来て、地下水量も増やしたので。教会や管理人小屋、農家の近くに井戸を設置することができたから。
これでもう、飲み水には困らないだろう、と安心してたのに。
プレストンの話を聞いた神職見習いや信者やらが、どうか聖水をお恵み下さいと通ってくるのはちょっと困ってる。
あの水が出る水道を作るべきだろうか。
峠とか、山にある湧き水みたいにして、ここからご自由にどうぞ、みたいな感じで。もうそれで行こう。
「シロ様も、リン様の聖水が一番ですよね~?」
「キャン!」
デッキで水を飲んでるシロに話しかけてる。
シロも別に返事しなくていいから。
*****
シロと一緒に、森で冒険者として素材採取や魔物や害獣退治などのクエストをこなしたり。
近くの畑で採れた野菜を分けてもらって、それで料理を作って振舞ったり。
そうしているうちに、あっという間に一年が過ぎていた。
ウィリアムは、前国王と第一王子の死を発表して、王座を継いだ。
18歳の王様だ。
ワイバーンに見張り塔を壊された辺りから、薄々気付いてた国民もいたようだけど。
ウィリアムなりに、国王を継ぐにあたって、まずは復興が先だという目標があったので、それを遂げるまでは継がないでいたそうだ。
この一年のうちに、キングスレイは随分発展したと思う。
”創造”の力だけじゃなくて。ウィリアムと相談して色々考えたのが良かったんだと思う。
でも、うちに泊まった時、添い寝するのだけはやめて欲しい。全裸で。
そんなに嫌じゃないのが困る。
最近、中身がオッサンなのには変わりないが、肉体年齢につられて精神的に子供っぽくなってしまってるかもしれない、と気づいた。大人げない、とかそういう意味でなく。年齢相応の無邪気さを取り戻したとか、そういう感じだろうか。
ウィリアムも、そうなのかもしれない。前世を思い出したとはいえ、15歳まではこの世界の王子として生きて来た記憶もあるんだし。
「シロ、おいで」
「ワオン!」
シロを呼ぶと、クマより大きな犬が嬉しそうに鳴きながら駆け寄ってくる。図体はかなり大きいが、その足音は何故か体重を感じさせない。神獣だからかもしれない。
シロが一年経っても子犬のまま大きくならなかったので、神様から貰った犬だから成長が遅いのかと思ってたら。魔物が現れた時に、俺を守るように大きくなったからびっくりした。
相変わらずマラミュートの成犬にしか見えないけど。クマよりも大きいので、背中にも乗れる。頼れる相棒である。
あまりに人懐っこいので、これでは番犬にならないんじゃないかと少々心配していたが。スリとか詐欺師など怪しい人が来た場合、ちゃんと吠えて報せてくれるので、番犬としても活躍している。
シロは家に帰ると、ふわもこな子犬姿になる。どっちの姿もカッコイイしカワイイので、ご近所さんからもアイドルみたいに人気だ。
実際に元アイドルだった王子……じゃなかった国王様も、老若男女問わず大人気なんだけど。人前でも気にせず俺のことを猫可愛がりするもんだから、少年趣味だって噂になってた。
否定できない俺だった。
*****
スキート商会からは、定期的にラドクリフ少年が幌馬車でリズリーの出張所に顔を出しがてらうちまで来てくれて。消耗品などを届けてくれたり、買い取ってくれたりしている。
乳牛とニワトリはうちの外庭で飼ってるので、うちが買うのは主に他の肉や穀類、塩などだ。
本当は、俺の能力があれば自給自足生活も可能だけど。
一方的に稼ぐだけじゃなく、経済を回さないといけないし。
「毎度。新しいお菓子を思いついたら教えてくれよな」
まだあどけなさの残る笑顔で言われる。
「まあ追々考えとくよ」
最近は、畑で作ったサトウキビと、湖で育ててるテングサが人気商品だ。
俺が寒天で作るスイーツのレシピを発表したら、国内外から注文が来るようになったとか。
あんみつやトコロテンは喉越しが最高だって。
テングサも、本当は棒寒天にして渡した方が取り扱いしやすいんだろうけど。テングサの加工場もできたそうなので、素材のまま渡している。サトウキビもだ。
こうした新素材の流通で、魔物の大発生によって家や職を失った人たちから、すごく感謝されてると聞いた。
でもそれは、そうなるよう口添えしてくれたウィリアムのお陰なんだけど。
*****
先日は、うっかり”乳牛”という、子牛を産まなくてもずっと乳を出すという牛を作ってしまって、罪深いことをしたと反省している。
休みなく妊娠させられるよりはいいのかな、と思うけど。
牛乳を安定供給させるためには、色々越えなければいけないハードルがあるんだ。
それを考えたらニワトリとか、牛や豚、食肉になる動物の問題とかあるから。いっそ食材全部を”創造”で作ってしまいたいけど。
それはそれで、何か違う気がするし。
俺みたいな能力があるならともかく。
人間は、何かを殺さずに生きることは不可能だ。
身体の中では毎日微生物が生き死にしているし。野菜を育てる時にも、害虫を殺してる。
豚や牛にも知能はあるし、魚にだって痛覚はある。植物だって、生きている。
食べることは殺すこと。生きることは他の命を頂くことだ。それは動物も同じ。
でも、自分だけお綺麗でいようとは思わない。
植物や動物、あらゆる命に感謝して、頂こうと思う。
長い間、食に携わって暮らしていたのに。生き物の命について、ここまで真面目に考えたのはこの世界に来て初めてかもしれない。
食育とかも、こういうことを考えて取り組むべきだったなあ、と今になって思う。この世界では、後悔しないような人生を送りたいものだ。
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