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Ⅵ
異世界で、コンサート。
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「では、お返しに、」
ウィリアムは、シェイカーとカクテルグラスを浄化して。
さっきのパルフェタムールとジン、レモン果汁を入れて振った。
おお、シェイカーを振る姿も様になってる。
うわあ、かっこいい……。
これはモテるに決まってるよ!
「今宵の月のような君へ」
と、ウインクして。
花を添えたカクテルグラスをこちらへ滑らせた。ブルームーンだ。
さっぱりした口当たり。喉を滑る、キリっとした味わい。氷が均一で、欠片とか残ってないし。
目分量だったのに、ちょっと悔しいくらい美味しい。
こんなイケメンが、自分だけにカクテルを作ってくれるなんて。
女の子だったらイチコロだろう。
世の中不公平だ……! とチート能力持ちが言ってみる。
*****
それから、面白がったオズワルド達が色々なカクテルにチャレンジしだした。
物凄いまずいのやら、奇跡みたいに美味しいカクテルを生み出したけど、レシピが不明だったりして。
ビールやウイスキーの樽が空になった頃、酒宴は解散になった。
ラドクリフとか、すっかりべろんべろんに見えたのに。
皆、ちゃんとテーブルの上の皿やコップを片付けていく理性があったのに驚く。
アルコール耐性、強いのかな……。俺はまだ、身体がぽかぽかしてる。
残ったのは、当然のようにウィリアムと。
オズワルドとオーソン、プレストンといういつものメンツだった。
「では、そろそろリンのお願いを叶えてあげようか」
と言って。
アコースティックギターを頼まれたので、出した。
もしかして。
歌ってくれるの?
うわあ、ドキドキする。
椅子に腰かけて、ギターを調弦してる姿もかっこいいとかずるい。
ギターの旋律が、静かに流れる。
ベストアルバムにしか収録されてない、アコースティックバージョンだ。
*****
流星群の降る夜。大好きな”君”と二人で海に行って。砂浜に寝転がって満点の星空を見上げる、という内容の歌だ。
さすがに日本語じゃなくて、こっちの言葉にして歌ってるけど。
やっぱり、ウィリアムも、すごくいい声だ。リューセーにも負けてない。っていうか、ぶっつけ本番の生歌でこれって、相当上手いんじゃないか?
シロも傍に寄ってきて。うっとりと聴き惚れているようだ。
でも。こっちを見つめながら歌ってくれるのは。
何ていうか。
ものすごく、贅沢なんだけど!
ウィリアムの歌う”君”が、まるで、自分に向かって言ってるみたいで。落ち着かない気分になってしまう。
歌はサビに入った。
「君だけを愛している。心からそう思うよ」
うわあ。
そういえばこれ、ラブソングだった! これは恥ずかしい。
一番好きな曲とはいえ。
なんて歌をリクエストしてしまったんだ。俺ってば。
そりゃウィリアムだって、お酒が入ってでもないとできないよな。結構な量、飲んでた。
それでも音程が狂わないとか、さすがプロだ。
ギターの腕だって、衰えてないし。
ウィリアムには申し訳ないけど。
やっぱり、またこの歌が聴けて、嬉しい。
*****
「……星降る夜に、君と。永遠に……」
ウィリアムの長くて綺麗な指が、最後の音を弾いて。
夢のような時間が終わってしまった。
しばらく、余韻を味わうように。しんと静まり返っていた。
「陛下、こんな特技があったんですね!」
「素晴らしい!」
オズワルドとオーソンだけでなくプレストンも興奮して、立ち上がって拍手している。
「リン、」
ウィリアムは。どうだった? という風に首を傾けた。
あ、いけない。
つい、ぼーっとしてしまった。お礼を言わなきゃ。
「ありがとう。ほんともう、最高の、誕生日プレゼントだった……!」
リューセーガチ勢にタコ殴りにされても本望って感じだ。幸せ過ぎて、昇天しそうなくらい。
「ふふ、惚れ直したかな?」
頭を撫でられて。
「大好き……!」
思わず、ぎゅっと抱き着いてしまった。
ウィリアムは、驚いたように目を瞬かせて。
抱き返された。
*****
ついうっかり、ほとばしるファン心が出てしまったけど。
目の前であんな素晴らしい生歌を聴いたら、誰だってこうなると思う。
「おお、おめでとうございます」
「良かったですね、陛下」
「ああ、なるほど……。どうか、お幸せに」
皆、口々にお祝いしてくれている。
うん。
これまで生きてきた中で、一番幸せな誕生日だ。
ウィリアムは、シェイカーとカクテルグラスを浄化して。
さっきのパルフェタムールとジン、レモン果汁を入れて振った。
おお、シェイカーを振る姿も様になってる。
うわあ、かっこいい……。
これはモテるに決まってるよ!
「今宵の月のような君へ」
と、ウインクして。
花を添えたカクテルグラスをこちらへ滑らせた。ブルームーンだ。
さっぱりした口当たり。喉を滑る、キリっとした味わい。氷が均一で、欠片とか残ってないし。
目分量だったのに、ちょっと悔しいくらい美味しい。
こんなイケメンが、自分だけにカクテルを作ってくれるなんて。
女の子だったらイチコロだろう。
世の中不公平だ……! とチート能力持ちが言ってみる。
*****
それから、面白がったオズワルド達が色々なカクテルにチャレンジしだした。
物凄いまずいのやら、奇跡みたいに美味しいカクテルを生み出したけど、レシピが不明だったりして。
ビールやウイスキーの樽が空になった頃、酒宴は解散になった。
ラドクリフとか、すっかりべろんべろんに見えたのに。
皆、ちゃんとテーブルの上の皿やコップを片付けていく理性があったのに驚く。
アルコール耐性、強いのかな……。俺はまだ、身体がぽかぽかしてる。
残ったのは、当然のようにウィリアムと。
オズワルドとオーソン、プレストンといういつものメンツだった。
「では、そろそろリンのお願いを叶えてあげようか」
と言って。
アコースティックギターを頼まれたので、出した。
もしかして。
歌ってくれるの?
うわあ、ドキドキする。
椅子に腰かけて、ギターを調弦してる姿もかっこいいとかずるい。
ギターの旋律が、静かに流れる。
ベストアルバムにしか収録されてない、アコースティックバージョンだ。
*****
流星群の降る夜。大好きな”君”と二人で海に行って。砂浜に寝転がって満点の星空を見上げる、という内容の歌だ。
さすがに日本語じゃなくて、こっちの言葉にして歌ってるけど。
やっぱり、ウィリアムも、すごくいい声だ。リューセーにも負けてない。っていうか、ぶっつけ本番の生歌でこれって、相当上手いんじゃないか?
シロも傍に寄ってきて。うっとりと聴き惚れているようだ。
でも。こっちを見つめながら歌ってくれるのは。
何ていうか。
ものすごく、贅沢なんだけど!
ウィリアムの歌う”君”が、まるで、自分に向かって言ってるみたいで。落ち着かない気分になってしまう。
歌はサビに入った。
「君だけを愛している。心からそう思うよ」
うわあ。
そういえばこれ、ラブソングだった! これは恥ずかしい。
一番好きな曲とはいえ。
なんて歌をリクエストしてしまったんだ。俺ってば。
そりゃウィリアムだって、お酒が入ってでもないとできないよな。結構な量、飲んでた。
それでも音程が狂わないとか、さすがプロだ。
ギターの腕だって、衰えてないし。
ウィリアムには申し訳ないけど。
やっぱり、またこの歌が聴けて、嬉しい。
*****
「……星降る夜に、君と。永遠に……」
ウィリアムの長くて綺麗な指が、最後の音を弾いて。
夢のような時間が終わってしまった。
しばらく、余韻を味わうように。しんと静まり返っていた。
「陛下、こんな特技があったんですね!」
「素晴らしい!」
オズワルドとオーソンだけでなくプレストンも興奮して、立ち上がって拍手している。
「リン、」
ウィリアムは。どうだった? という風に首を傾けた。
あ、いけない。
つい、ぼーっとしてしまった。お礼を言わなきゃ。
「ありがとう。ほんともう、最高の、誕生日プレゼントだった……!」
リューセーガチ勢にタコ殴りにされても本望って感じだ。幸せ過ぎて、昇天しそうなくらい。
「ふふ、惚れ直したかな?」
頭を撫でられて。
「大好き……!」
思わず、ぎゅっと抱き着いてしまった。
ウィリアムは、驚いたように目を瞬かせて。
抱き返された。
*****
ついうっかり、ほとばしるファン心が出てしまったけど。
目の前であんな素晴らしい生歌を聴いたら、誰だってこうなると思う。
「おお、おめでとうございます」
「良かったですね、陛下」
「ああ、なるほど……。どうか、お幸せに」
皆、口々にお祝いしてくれている。
うん。
これまで生きてきた中で、一番幸せな誕生日だ。
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