神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

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転生国王は神の使いを寵愛する

最強の守護獣

「ごちそうさまでした」
 リンと一緒に手を合わせる。

 昨日は、オズワルドたちがいたので大っぴらにできなかったが。

「片づけは私がやろう。といっても、”浄化”を使うくらいだけどね」
 食器を片付けに行った。


 食後のコーヒー、はさすがにないか? 冷蔵庫を見ると、ジュースの瓶が入っていた。
 トールグラスにリンの分も注いで、テラスに戻る。

 キュンキュンと、子犬の鳴き声のようなものが聞こえた。
 見れば、リンはデッキに腰かけ、丸い毛玉のようなものを嬉しそうに腕に抱えていた。


 どう見ても、アラスカンマラミュートの子犬だが。この世界では。
「……狛犬プラ・シン様?」

「え? この子、知ってる犬なの?」
 知っているというか。この世界で成人以上の者ならば誰でも知っている存在だ。

「この世界ではこの犬にそっくりな像が、神の眷属として崇められている。神の像の両側……日本でいえば、神社や寺の入り口には狐や狛犬が飾られているだろう? そのような存在だ」

 流星の記憶を取り戻してから教会の神殿で見て、ウィリアムの記憶と総合して、驚いたものだ。どう見ても、片方はマラミュートの子犬で。もう片方はマラミュートの成犬だった。
 まあ、一番驚いたのは真ん中に鎮座している神の像だったが。


”……ウィリアム、ウィリアム・ヘンドリック・ゲインズ=キングスレイ”
 突然、頭の中に声が聞こえた。

「っ、ちょっと待った。……来た」

 以前にも聞いたことがある。
 これは。神の。

”あ、聞こえる? リンちゃんに伝言よろしく”


 …………は?


 *****


 耳を疑いたくなったが。頭の中に直接語り掛けてきているため、疑いようもなく神の声だった。
 リンは何が来たの? と言いたげに首を傾げている。

「神託だ。……”良さげなのを探していたが、ちょうどよく神獣の狛犬に仔が生まれたので中でも賢いのを送った”……とのことだ。その子はここの番犬にするといい」

 ついでに、リンはかなりシャイなのであまりからかうな、あと5年待て、とお叱りを受けた。嫌がっているわけではあるまいし。頬にキスくらい、いいだろうが。友人同士でも普通にする。
 ……ん? あと5年待てば、からかってもいいのか? それもどうかと思うが。

 それにしても。2年ぶりの”神託”がこれとは。
 儀式の際の邪神介入のこと、魔物の大発生のことについて、何の説明もしなかった癖に。人を気軽に伝言板代わりにするな。
 ……リンには神託のスキルは無かったな。そこは自重したのか。鬼電状態になるだろうし、そこは正解だが。
 腹が立ったので、”神託”のスキルはミュートにしてやる。

 闇魔法レベルMAXを舐めるなよ。


「ええっ⁉」
 神職でなくとも神の声が聴こえるのを驚いているようだが。神の使いを迎える役目があるため、神託のスキルを授かったのだ。私には成人の儀式以来、下されてないが。

「……メイヤー師ほどではないが。私も”神託”のスキルも持っていたのでね」


 リンは番犬を欲しがっていたらしい。
 それで、神はリンの身を守るよう、守護獣を用意したのだ。

 それは過剰防衛というものではないだろうか。伝承では、狛犬の吐く”火の吐息”は国一つまるまる滅ぼせるほどの威力であり、神のいかずちすら操るという。一国の軍隊でも太刀打ちできない戦力を与えてどうしろと。


「この子、神獣なんだよね? 俺の番犬にしちゃっていいの?」
「良いのも何も。そのためにここへ送られてきたのだから、有難く受け取っておけばいい。最強の番犬になるだろう」

「し、神獣って、何を食べるの?」
 リンはおろおろしている。

「いや、私に訊かれても。……ん? 何かな?」
 狛犬の子犬は、私が持っているリンゴジュースをじっと見て、クンクンと鼻を鳴らした。

「もしかして、あれが飲みたいの?」
 リンがジュースを指すと、しっぽをぶんぶん振った。

「でも、大丈夫かな……」

 糖分などの心配をしているようだが。こちらの生物は胃袋が強靭な上、神獣だ。
 狛犬は溶岩の海でも平気で泳ぎ、毒の沼すら飲み干す、というくらいだ。滅多に死なないだろう。

「神獣だからね。何を飲ませても問題はないだろう。毒でも平気で飲むよ」

「いや、毒は駄目だと思う。……あ、ちょっと待って。……ชาม
 リンは、子犬が飲みやすいように皿を作り、そこにジュースを注いだ。

「……可愛いなあ」
 しっぽを振りながら嬉しそうにジュースを舐めている子犬を、慈愛に満ちた笑顔で見守っているリン。可愛い。写真に撮っておきたいくらいだ。この世界には日光写真すら存在しないが。

「ああ。とても可愛いね」
 リンは私の視線がどこに向いているのか気づいて、また赤くなった。やはりリンは可愛い。ささくれだった心も癒される。


 *****


 子犬を”鑑定”で見てみる。

 間違いなく、狛犬プラ・シンの幼体である。
 体力は、今の時点で2700。魔力は5000。生まれたばかりでこれほどとは。さすが神獣。

 魔法攻撃、物理攻撃、精神攻撃無効。当然のことながら神の加護もついている。
 だが、まだ名前は空欄になっていた。


「名前は、まだないようだね。君がつけてあげるといい」

「んー、雪みたいに真っ白だから、シロ!」
 子犬は嬉しそうにキュン、と鳴いた。

 外見は白いが、あの神の使徒だからな……。見た目通りとは限らん。

「好物は何だろう。神獣だし、果物かなあ」
「普通に肉も食べる」


 聖なるものは肉を食わない、などというのは、前の世界での迷信である。
 草を食べ肉を食べ、食物連鎖を繰り返してあらゆる生命は巡るものだ。そのサイクルを崩そうとすれば、どこか歪むのも必然。

 無駄にしないことが一番である。
感想 8

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