神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

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転生国王は神の使いを寵愛する

昼食の準備に花が咲く

「あっ、今、何時頃だろ」
 シロの毛皮をもふもふしていたリンがはっと気づいたように顔を上げた。

「10時ちょっと前だね」
 懐中時計で時間を確認する。
 日付や時間の概念は前世とほぼ変わりなくて助かっている。月などの名称は違うが。


「いけない、管理人小屋作らないと!」
 リンは慌てた様子でキッチンへ向かった。その後を、守護せねば、とばかりにシロが追う。

「来るのは昼過ぎだ。急がなくても大丈夫だよ?」
「ウィルも昼ご飯、食べるでしょ? その準備のあるから」

 勿論だ。
 それに、間違いなくメイヤー師も来るだろう。オズワルドとオーソンも。

 何なら昼食を期待して、昼前に来そうである。


 *****


「ロールサンドはどうかな? それなら手伝える」
「うん。じゃあお願い」

 前世の話をしたからだろうか? 幸い、今回は戦力外とはみなされなかったので、意気揚々とキッチンへ入った。

 リンの足元をたしたしと走り回るシロを捕まえ、その辺の椅子に座らせる。

「お前は毛が飛ばないよう、おとなしくしているように。走り回るんじゃないぞ」
「キュウン」
 普通の犬ではないので、手が抜けたりしないかもしれないが。うろうろしているとリンの邪魔になるのだと言い聞かせておく。


 ロールサンドは任されたので。
 ラップの上で、バターをたっぷりに塗った耳のない食パンに具材を載せ、くるくると巻いていく。
 具材は、刻んだ茹で卵を塩コショウと自家製マヨネーズであえた卵フィリング。スライスしたトマトにキュウリ、レタス、シーチキンやハム、チーズなどを適当に組み合わせる。
 果物と生クリームの甘いロールサンドなども何種類か作っておこう。

 リンは我々若い男たちの胃袋を考えてか、唐揚げや卵焼き、カニやタコの形をしたウィンナーなどを大量に作っていた。

 次は海苔巻き……いや、カリフォルニアロールを作っている。
 海苔は見た目が黒いので、外国人の目には美味しそうに見えないため、外側には使わないのだそうだ。なるほど。
 これもラップにご飯を敷いて真ん中に具を置いて巻くだけだが。
 リンは桜でんぶや鶏そぼろなどの具材を使い、花のような模様を作っていた。見た目も美しいし、器用なものだ。

 リンが最後にサラダを作っている間に、大きめのランチボックスにロールサンドなどを詰めていく。


 *****


 支度が済んだので、外に出ると。

 道の向かいには教会が半分ほど出来上がっていた。
 職人らは必死の形相である。メイヤー師は随分無茶を言ったようだ。

「俺が作るって言えば良かったかな……」
「教会は、専用の職人がいるからね。色々ブラックボックスもあるようだし」
 お仕置き部屋とか。

 リンは、じゃあ専門職の仕事を取っちゃだめだね、と納得していた。


 森の近くへ行き、管理人小屋を作る場所を探す。

「前に家があったあたりの方がいいよね? どこがいいかな」
「そうだね。この辺が良いだろう」
 場所の指定をする。

 シロが予定地をちょろちょろ走り回っている。

「ほら、そこにいたら危ないよ。おいで、」
 抱き上げて、邪魔にならないよう後ろに下がった。

「それじゃ、作るよ。……สร้าง 建築

 見る間に、昨日描いたイメージ通りの建物が出来上がった。

「お見事。図面通りだ。料理だけでなく、建築にも造詣が深いのだね。実に多才だ」
「ウィルが絵を描いてくれたからだよ。あの家は、ずっと不動産のチラシとかの間取りをみて、理想の家をイメージしてたから作れたけど」

 ああ、観葉植物の配置など、所々モデルルームのような印象を抱いたのは、そのせいたったのか。生前から、マンションや一戸建てのチラシを参考にして、理想の家を想像していたのなら、それが実現できてさぞかし嬉しかっただろう。
 理想の住まいか……私はそういう欲求がなかったので、新鮮に思える。

「ふふ、謙遜しなくていいのに」
 頭を撫でると、リンは照れて笑った。やはりリンはかわいい。


 *****


「ウィリアム様、」
 まだ昼前だが。スペンサー夫妻が来たようだ。敬称では呼ばないよう言ってあるが、遠慮がちに声を掛けられた。

「ああ、早速だが、紹介しよう。彼がここ、リズリーの主となった、リンだ。姓は訳あって今は言えない」
 前もって、リンが神の使者だということは話してあるのだが。クレーバーンの名は、外ではなるべく出したくない。

「見た目は子供だが、子供だと思って構い過ぎないように」
 そういう私が一番構っているのだが。リンもそう思ったようで、半目で私を見上げた。いや、中身は子供だとは思っていないよ? 肉体が子供なだけで。

「了解しました!」
 ビシッと敬礼されてしまった。

 おや、かえって緊張させてしまったか。

「ふふ、そんなにかしこまらなくてもいいよ。今の私は騎士、ウィリアムだからね。楽にしなさい」
 以前から、騎士の格好をし、騎士と名乗って国内を見て回っていた。主に防犯のためだが。そのため、私のことを騎士だと思っている国民は多いだろう。


「本日より、再びリズリーの森の管理人として呼ばれました、キース・スペンサーと申します。こうして復職させていただけた上に、新たに住む場所まで作っていただき、大変ありがたく存じます」
 まだまだ固いが。

「キースさん? これからはご近所さんですね。よろしくお願いします」
 リンが笑顔で手を出して、握手を交わした。

 リンのおかげで、少々緊張が和らいだようだ。
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