神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙

文字の大きさ
66 / 71
転生国王は神の使いを寵愛する

贅沢なランチタイム

 教会の方から、鐘の音。

「今のは、昼休み……12時を報せる鐘だ」
「もう鐘を取り付けたんだ?」
 あの様子なら、鐘どころか教会本体すらもう完成していてもおかしくないだろう。


「あの、お昼ご飯作ったんですけど。ご一緒にどうですか?」
 リンは弁当の入ったバスケットを掲げた。

「勿論、いただきます!」
 待ってました、とばかりにメイヤー師が顔を出した。昼時を狙ってきたに違いない。

「我々もご相伴させて頂けますでしょうか!」
 オズワルドとオーソンも。

 ……おおむね、予想通りである。


 *****


「はうっ!? こ、こちらはププププププ狛犬プラ・シン様では!?」
 メイヤー師は、リンのバスケットから私の持っているランチボックスへ視線をやり、私が抱いていた子犬の存在に気づいたようだ。

 道の向こうには、まだ職人がいるだろう。
 あまり騒がれても困る。

「この子犬は、今朝庭に迷い込んできた、リンの飼い犬のシロだよ? 見た目は狛犬そっくりだけど、マラミュートという犬種の犬だ」

「し、しかし、どう見ても、その……」
 毎日のように教会で見ているだろう神像そのものである。誤魔化せる訳がないとわかっているが。
 今は納得しておけ、と笑顔で圧をかける。
「マラミュートのシロ」
 シロはそうだよ、と返事をするようにキャン、と鳴いた。なかなか賢い。だが普通の犬は返事はしない。

「マ、マラミュートのシロ、様ですね!」
 メイヤー師は強張った笑顔でこくこくと頷いてみせた。


「ところで、管理人小屋はあれで大丈夫かね?」
 と、私がスペンサー夫妻の視線を他に向けている隙に、リンは大きなテーブルと椅子を作り、テーブルには赤いチェックのテーブルクロスを敷いた。

 セッティングも手伝いたかったが。スペンサー夫妻だけでなく、メイヤー師、家臣であるオズワルドとオーソンがいるので、私が手伝う訳にもいかない。
 手伝いはオズワルドとオーソンに任せよう。


 *****


「お昼だから、お酒は持ってきてないよ。お茶でいい?」

「おお、お茶は貴重品なので大歓迎ですよ」
 メイヤー師は大喜びで答えた。

 今までは、水が貴重だった。
 水を沸かし、湯で煮出す必要のある茶は、貴族に好まれる高級品である。

「これからは貴重品じゃなくなると思うけど」
「ありがたいことです」
 リンが明るく言うと。メイヤー師は祈るように手を組んだ。


 テーブルには大量のロールサンド、カリフォルニアロール。大皿におかずを盛りつけ。
 リンは仕上げに、サラダボウルの野菜サラダにサウザンアイランド・ドレッシングを掛けた。見た目にも美味そうだ。

 取り分け用の皿、茶の入ったマグカップが置かれる。


「スペンサー夫妻の復職と、教会開設に」
 メイヤー師はマグカップを掲げた。……ああ、もう教会は出来ていたのか。

チョンゲーウ乾杯!」


 周囲は森の緑、湖からそよぐ風。
 傍らには、可愛いリン。

 美味なる昼飯。
 なんとも贅沢な時間である。

 用意した昼食は、一時間もしないうちに皆の胃袋に納まってしまったのだが。

「美味しい料理をありがとう」
「はじめて食べるものばかりだったわ」
 スペンサー夫妻も、リンの料理の虜になったようだ。


 *****


 そうして。
 リズリーには、教会を建てたメイヤー師と森林管理人のスペンサー夫妻だけでなく。

 空き地を農地にするため、魔物の大発生により職を失った農夫を優先的に選び、合計15世帯ほどが越してきた。
 彼らが新天地としてリズリーを希望したのは、新たに教会ができたのが一番の理由だが。
 心優しいリンが近所の住人におやつなどを振舞い、それがまた大好評で。移住した者たちから、かなり喜ばれているという。

 リンの家の周囲は、ちょっとした村のようになった。
 翌年の税収もかなり期待できるとの話である。


 身体が大きく、足の速いこの世界の馬であっても、リズリーまでは往復でサーム・チュアモーン……日本語では三時間ほどの距離だが。私たちは、時間があればリンの家へ通った。
 オズワルドたちは、リンの料理に胃袋を掴まれたからだそうだが。

 リズリーには、巡回という名目で来ている。実際、月に数回の頻度で野盗やはぐれ魔物も討伐している。弱い魔物ならば、ナムグンが威嚇すれば逃げる程度だ。
 シロがいれば安心ではあるが。防犯のため、冒険者協同組合の出張所でも作るべきか。

 スキート商会のラドクリフはリズリーに商店の自分の店を作ってもらい、そこで森で採れた恵みやリンの作った生産物を買い取りため、頻繁に通ってくるようになった。
 これも注意深く見張らねば。づやらラドクリフはリンに対して好意を持っているようだからな。


 リンの作った貯水池、湖のおかげで我が国の水不足は解消された。
 塩湖もその景観の美しさから、早くも観光名所となっている。帰りにロチェスターの城下町で買い物をしていく者も多く、入場税も増えて嬉しい悲鳴を上げている。

 リンのおかげで、この国は前以上の国威を取り戻した。
 しかし、リン本人は謙虚であり、遠慮深い。何かを作る際は私と相談した上で作りたいという。


 *****


 印刷会社を作りたいとの相談を受けた時も。
 電話から電気、発電所の話になり、さすがにそのレベルの開発はまずいのでは、という話題になったのだが。

 神は、わざわざ職務中のメイヤー師に”何でも望むものを作って良い、詳しく思い浮かべなくても問題ない”との伝言を持って来させたくらいである。
 これも公私混同というのだろうか?

 私が”神託”スキルをミュートしたせいだろうが。
感想 8

あなたにおすすめの小説

助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!

夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。  ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

温泉旅館の跡取り、死んだら呪いの沼に転生してた。スキルで温泉郷を作ったら、呪われた冷血公爵がやってきて胃袋と心を掴んで離さない

水凪しおん
BL
命を落とした温泉旅館の跡取り息子が転生したのは、人々から忌み嫌われる「呪いの沼」だった。 終わりなき孤独と絶望の中、彼に与えられたのは【万物浄化】と【源泉開発】のスキル。 自らを浄化し、極上の温泉を湧き出させた彼の前に現れたのは、呪いにより心と体を凍てつかせた冷血公爵クロード。 半信半疑で湯に浸かった公爵は、生まれて初めての「安らぎ」に衝撃を受ける。 「この温泉郷(ばしょ)ごと、君が欲しい」 孤独だった元・沼の青年アオイと、温もりを知らなかった冷血公爵クロード。 湯けむりの向こうで出会った二人が、最高の温泉郷を作り上げながら、互いの心の傷を癒やし、かけがえのない愛を見つけていく。 読む者の心まですべて解きほぐす、極上の癒やしと溺愛のファンタジーロマンス、ここに開湯。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした

うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。 獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。 怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。 「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」 戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。 獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。 第一章 完結 第二章 完結 第三章 完結

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。