オタク眼鏡が救世主として異世界に召喚され、ケダモノな森の番人に拾われてツガイにされる話。

篠崎笙

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リヒト

診察再開

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救世主として召喚されて。

この国の人達を。
みんなを救わないといけない、っていうプレッシャーから解放されたんだ。


安心して、その場にへたりこみそうになったけど。
どうにか踏ん張った。

まだドニは完全に回復したわけじゃないし。
患者が治療を待ってる。


しっかりしなくちゃ。
僕はもう、グラン・テール王国の医者なんだから。


†‡†‡†


診察を再開したら。

評判を聞いてわざわざ遠いところから来たという患者や。
運ばれてきたという子にあげてやれ、と果物を差し入れてくれる患者もいた。

口コミで、この診療所の評判はかなり遠くまで広まっているようだ。


新しく増えた助手二人に気づいて。
プリマット国から研修に来た医者だと説明すると。

みんな口々にねぎらいの声を掛けていった。

来る時は憂鬱そうな患者も、帰っていく時はみんな笑顔だ。
病院が繁盛するのはあんまり歓迎できないので、元気で暮らしてほしい。


インターンの二人は今日、見学だ。

初診患者のカルテ作成などを手伝ってもらったら。
こうして以前誰がどの病気に罹ったか、どんな怪我をしたかを記しておくのは画期的だと感心してた。

魔法でスッパリ治すのには必要ないかもしれないけど。
前に処方した薬と飲み合わせの悪い薬を出したりしたら、大変だからね。今のところはそれほど危険な薬を処方してないから、大丈夫かな?

魔法でも、同じ場所を何度も怪我すると、治りが遅くなったりするので。
注意しておくのもいいかもしれない。


外科内科整形、色々な患者が来る。

日本の病院は専門が分かれすぎてるせいで、他の病気を発見できなかったりして。
かえって不便だ。

こうして医者になったからには、患者に寄り添える医療を心掛けたい。


最後の患者を診察し終えて。

本日の診察は終わり、という看板を出して。
診療所を閉めた。


†‡†‡†


「ベルナール、ルイ。おつかれさまでした。初日の感想は?」

『今日だけでも、かなり勉強になったと思います』
ベルナールは嬉しそうに言って。

『実は、獣人の国にはあまり良い印象を持ってなかったんですけど。ここは、とても良い国ですね……』
ルイはしみじみと言った。

「中身もケダモノみたいだと思ってた?」

二人は申し訳なさそうに頷いた。


獣人の国で研修、なんて。
王命とはいえ、内心どうなることかとビクビクしていたようだ。

つい5年前まで戦争をしていたんだから。
お互いに誤解があっても仕方ないか。


身内を亡くした人だっているだろう。
村の前まで僕たちを迎えに来た騎士も、ジャンに対して警戒心を抱いてた感じだった。

今のところ、僕の知る獣人はみんな、人間に対して偏見を持ってないような気がする。

僕は救世主として召喚された異世界人だから、例外と考えてもいいかもだけど。
それを知ってるのは城の人だけで、患者さんたちは知らないしなあ。

だっていうのが信頼の証なのかな?
ジャンのツガイでもあるし。


「そういえば、人型の獣人と人間の見分けってつくの?」
僕はさっぱりだ。

分析の魔法を使えばわかるけど。

『匂いでわかる』

ジャンはわかるようだ。
人間とは全然違う匂いがするそうだ。

独特な獣臭というか、はっきりと違いがわかるとか。
そうなんだ……。

『変身するのを見るまではわかりません』

ルイもベルナールもわからないという。
だよね。


人間側は全く見分けがつかないため。
戦争中も間違ってただの動物を殺してしまったり、疑心暗鬼に陥っての同族殺しもあったとか。
悲惨だ。

「戦争が終わって良かったね……」

戦争反対。
平和が一番だ。

僕の呟きに、みんな頷いた。
それを力技で終わらせたルロイ王って、本当に凄いんだなあ。


†‡†‡†


ドニの様子を見に行った。

ぐっすり眠っている。
解析の魔法をかけてみると。

体内のウイルスは、順調に減少していっているようだ。
これなら、今週中には良くなるだろう。


ドニの寝ているベッドの脇に控えているデュランの魔導人形は、人間そっくりに見えた。
白衣の天使って感じだ。

ただし男だけど。
人形でも、女性形にすると問題があるのかな?


『せ、んせ……?』

「ああ、ごめん。起こしちゃった? 寝てて」
ドニが起き上がろうとしたので、制した。

『この人に、聞きました。僕の村、助けてくださって、ありがとうございます』
魔導人形を示した。

人ではないけど。
しゃべるんだ。凄いな。……じゃなくて。


「君が頑張って報せようとしたから、みんなが助かったんだよ」
ドニの手を握って。

ありがとう、と言った。


もし、ドニじゃなく。
ウイルスを持った動物が逃げ出して来ていたら。

もっと被害が拡大していたかもしれない。


『子供の様子は?』
消毒を済まして隔離病棟から出てきたら、ジャンが待っていた。

「大丈夫。順調に快方へ向かってるよ」
『それは良かった。ところで、の寝床だが。どうする? 病室のどこかでいいか?』


あいつらって。
ルイとベルナールだよ?

しばらく預かるんだし、名前くらい覚えてあげなよ。
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