オタク眼鏡が救世主として異世界に召喚され、ケダモノな森の番人に拾われてツガイにされる話。

篠崎笙

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リヒト

未知なる我が家

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診療所には、最悪の場合を見越して、大人数を受け入れることが可能なスペースがある。

とりあえず伝染病騒ぎが落ち着くまでは、あちこちうろうろしないほうがいいだろう、と。
僕とジャンはそこで寝泊まりしてた訳だけど。


「隣国の王様から預かった客人を、病院のベッドで寝起きさせるのはどうかと思う。せっかく広い家を建ててくれたようだし、新しい家でいいんじゃない?」

『仕方ない、そうするか』
ジャンは僕と二人っきりが良かったようだ。


新婚だからって?
まだ結婚すらしてないだろ!


†‡†‡†


渋るジャンを説得・相談した結果。
インターンの二人は、新しく出来た我が家に泊めることになった。

二人は先生のお宅にお邪魔するのは申し訳ない、と恐縮してた。


近くに宿屋とか無いようだし。
どうしようかと相談していたところだったようだ。

対人スキルの至らなさか。
そういうことを考えるのにどうも疎くて。

さっきジャンに言われるまで、うっかり二人の滞在場所とか気づかなくて、ごめんな。


我が家といっても、まだ自分の家という感じは全くしない。
診療所の隣に僕たちの家を作ったなんて、今日初めて知ったんだし。

中に入るのもまだ、初めてだ。
未知なる我が家である。


ドアを開けたら、吹き抜けの大ホールで。
入ってすぐの正面にはゆったりと左右に分かれている大きな螺旋階段があった。


広い踊り場の壁には大きな額縁が掛かっていて、メモには救世主の肖像画製作中、と書かれていた。

いらないよ!?
うちに帰ったら自分の顔に出迎えられるとか、冗談じゃないよ!!


それにしても、何でこんなに広いの?
これ通常、お手伝いさんとかいるような豪邸じゃない?


『さすがクロエ先生、素晴らしいお家にお住まいなんですね』

ベルナールは興味深そうにきょろきょろ見回して。
ルイはベルナールの後ろから覗いている。


さすがも何も、今日、初めて見るんだけどね!


†‡†‡†


病室に寝泊まりするまでは、お城の客間にお邪魔していたので、充分贅沢な暮らしだった。
上げ膳据え膳だもんね。

未知なる我が家には、家具もある程度揃っていて。
すぐにでも住めるような状態だった。


魔法もある世界とはいえ、突貫でこんな邸宅建てちゃうんじゃ、そりゃ復興も早いよ……。
国を救った救世主だからって、特別予算を組んだのかな?


『森の家にあった私物がすべて運ばれていた』

ひと通り家の中を見回ってきたジャンが戻ってきて。
やれやれ、といったように肩を竦めた。

診療所に置いておいた僕の荷物だけでなく、ジャンの家にあった私物も全部運び込まれてたんだ。素早い。


ジャンが、ざっと家の間取りなどを教えてくれた。

一階には応接間と書斎、食堂と厨房、浴室やお手洗いがあって。
二階には客間が二つにクローゼット、居間、主寝室、物置などがあるって。

インターンの二人は、着替えなど生活に必要なものを持参してきたというので、そのまま客間に入居だ。
客間にはシャワー室やお手洗いもついてるそうだ。


しかし、何で客間が二部屋あるのか。
こっちの住宅では、客間が複数あるのが当たり前なのだろうか。ちょうど良かったけど。

デュランが占いで間取りとか決めたのかな?


主寝室を見てみたら、大きな天蓋ベッドがあった。
クマ姿のジャンでも余裕で寝られそう。

窓からは月が良く見える。……ムード満点だね。

薄紫だったりピンクだったりの家具に寝具。
明かりは間接照明だった。


なにこの、そこはかとなく漂う、いかがわしいムードは。
ラブホか! 入ったことはないけど。

誰だこの部屋設計したの!?


†‡†‡†


リーン、と呼び出しの鈴の音がした。


急患かな? と思って出たら。
デュランが晩御飯を持ってきてくれた。

そういえば晩御飯、まだだった。

今のところ、差し入れや招待されてご飯を食べてるけど。
いつまでもお世話になる訳にはいかないし。

食材とか買いに行かなきゃ。ジャンに聞けばわかるかな?


『まだ食事とってないだろ? ロイに差し入れしろって言われてさ。僕もまだだから、一緒にいいかな?』
大きな包みを見せた。

重そうな包みを軽く持っているのは、重力操作の魔法だろう。
それは攻撃魔法の系統なので得意なようだ。

魔導人形も、攻撃系の魔法だったらしい。どんな攻撃に使うのか考えるとこわい。


「もちろんだよ。ありがとう」
喜んで招き入れた。


部屋に荷物を置いて、私服に着替えたルイとベルナールを呼んで。

20人くらいで食事会ができそうなほど広い食堂で、晩御飯を食べる。
包みには、ハムとソーセージとハンバーグ、玉子サラダ、トマトやキュウリなどを使ったサンドイッチが詰まっていた。

それと、ワインとジュースの瓶。


サンドイッチを初めて見る二人は、見たこともないご馳走だ、と喜んで食べている。
サンドイッチ自体が見知らぬ料理なんだろうけど。

卵は鶏を飼っていれば手に入るものの。
牛や豚などの肉とか新鮮な野菜は、一般の家庭には流通していないようだ。

ポトフみたいな煮込み料理が多いとか。


プリマット国も復興が進んで。
畜産も増えていけば、全体的に流通可能になるのかな。

栄養状態が悪いと、風邪をひいても悪化しやすいし。
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