巨人の国に勇者として召喚されたけどメチャクチャ弱いのでキノコ狩りからはじめました。

篠崎笙

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キノコマスター、悩む。

急転直下

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隣国との壁を良く見てみたら、結界やらなにやら、複雑な術が何重にも重なっているのがわかった。
相当頑丈に組まれてる結界だ。


魔法を使うようになって、魔法で形成されてるものが見えるようになったから。そのすごさが理解できた。
こんなすごい壁を、国の端から端という長距離に渡って巡らせるなんて。

やっぱりバルって、とんでもない魔術師なんだ。
魔法だけじゃなく、剣の腕もとんでもなく強い上、不老不死だし。

そりゃ、魔王って呼ばれるのもわかるよ。
魔法の王様だもんな。


じゃあ、ちょっとセントロ王国の国内を見て回ろうかな。

くるっと方向を変えて、上空へ上がってみる。
昨日見た地図と全く同じ地形だ。

あの地図は、バルもこうして魔法の”鳥”を飛ばして、自分で書いたのかも。

上から見ても、隣の国はぼんやりとさえぎられてて見えない。これも、魔法の防御壁の効果だろう。壁からバルの住んでる城もわりと近いし、防犯上かな?


王城の周辺は、広大な森で覆われている。
霧でぼやけていて、まるで城を隠しているようだ。

他の領地は、農地とか牧草地が見える。
馬や羊がいっぱいいる。

池や湖もある。
山や森、自然に囲まれた豊かな国だ。


遠くに、都市っぽい建物群も見えるけど。
住宅街かな?


*****


あ、海だ。


海に向かって急降下してみる。
透き通ってて、綺麗な海水だ。ずいぶん深いところまで見えるな。

魚が泳いでる。
イルカっぽいのも見える。

この”鳥”は人間には見えないけど、動物には見えているようだ。
好奇心旺盛なイルカが、こっちを見てる。

さっきも、飛んでる鳥を驚かしちゃった。
鳩の形はしてるけど、羽ばたいたりしないからかな?


……あれ? 海岸に、人がいる。

薄墨色の、足元まであるマント。フードを頭から被っていて。宝石が付いた杖を持ってる。
忘れもしない。あれは。旅の魔法使い。

俺を召喚した、あの魔法使いだ!


近寄ってみたら。
魔法使いは、


「おや、君は……様じゃないか。もう”鳥”を飛ばす魔法を使えるようになったんだね。レベル上げは順調なようで何よりだ」
微笑んでる。


おお、”鳥”もなってる俺のこと、わかるんだ?
魔術師ならわかるんだっけ?

「そりゃわかるよ。言っただろう? 君は魔王の力を抑えるを持って生まれた、稀少な存在なのだからね」
魔法使いは、頭から被っていたフードを下ろした。

浅黒い肌で。長い銀の髪がさらりと流れた。紫の瞳は、宝石みたいにきらきらしている。

フードの下に隠されていた顔は、けっこうな美形だった。
バルといい、魔法を使う人は美形が多いのかな?


あ。
”魔王”はもう、倒さなくても良くなったんだって話しておくべきかな?

「ここまで、我流で勉強したのは偉いけど。に備えて、きちんとした師を得たほうがいい。偉大なる魔術師バルタサール=ウルタードの協力を仰ぐべきだ。村のすぐ近く、森の中の城にいるから訪れてみるといい。偏屈な男だけど。あれで、この世界で一番の魔術師だ。頼りになる」
魔法使いは、にっこりと笑って言った。


……はい!?
きたるべき、魔王との戦い?

魔王って、バルのことだったんじゃないの?
偏屈? 誰が?

バルが!? 最初っからめっちゃフレンドリーだったぞ!?


「そうそう、僕の名は、ウィルフレド=トルタハーダ。フレッドの紹介だと言えば、話が通るはずだよ。もうじ、魔王が現れると伝えて欲しい。……これ以上は危ない。早く自分の身体に帰った方がいい」
魔法使いがパチン、と指を鳴らすと。


視界が、図書室の、自分のものに戻った。


*****


「……っは、はぁっ、はっ、」


汗が、机に落ちた。
物凄く、疲労している。

魔力を消費しすぎたのかな?


「優輝!? どうしたんだ。具合が悪いのか?」
心配そうな様子のバルが、図書室に飛び込んできた。

「……バル、」
「エリアスから聞いた。異世界から来たばかりで、チャンピニョンのことを知らなかったのだと。……考えてみれば当たり前だった」

抱き寄せられて。
疲労が引いて、楽になってく。

回復魔法をかけてくれてるのかな?

魔法の中でも回復魔法が使える人はほとんどいないって聞いた。その上やたら難しいんだって。
それを呪文の詠唱もなく使えるなんて。さすが最強の魔術師だ。


「優輝、ひと目見た時から運命を感じた。私は君が好きだ。何よりも、誰よりも愛している。必ず幸せにすると約束する。……私と、結婚して欲しい」


「え!?」
思わず見上げたら。

バルの顔は、真っ赤に染まっていた。耳まで赤い。
色が白いから、わかりやすい。

こっちの人にとって、直接そういう告白の言葉を口に出すのは、とんでもなく恥ずかしいことなんだって、エリアスが言ってたのに。
俺が、エリアスに教えたから? 異世界の告白の仕方を。


だから。
話を聞いて、俺の世界の方法で、やり直してくれたんだ。

嬉しいけど。

「あの、どうして、俺なんかのことを……、」
俺、ただのおバカな男子高校生なのに。


「私の想い人を悪く言うのはやめたまえ」
叱られてしまった。

こっちの方が照れくさいんだけど!
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